ももも さんの感想・評価
3.4
物語 : 1.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
とにかく脚本が残念。
スーパーファミコンソフト「ドラゴンクエストⅤ」をベースとしたCGアニメ。
ネタバレ設定で書きます。
■ストーリー、脚本
まず、ドラクエ5を知っていることが前提です。
作品上の理由はあるのですが序盤のストーリーはダイジェスト状態で、原作を知らないと置いてきぼりになると思います。
この時点で、単体の作品として「ストーリー」はマイナスです。
一般的とは言えない予備知識が必要です。ファン向けです。
もちろんファン向けゆえ、「作品を知っている前提」で評価できることもあります。
ドット絵が含む想像の余地というのも素晴らしいのですが、本作で演出されるビアンカを選ぶシーンや(原作とはシチュエーションが全く違うのですが)子供時代の自分との邂逅は、自分がプレイした当時の記憶込みで非常に沁みる物がありました。
「映像の力」って素晴らしいと思えました。
しかしこの作品の破壊力は後半で真価(?)を発揮します。
散々語り尽くされていると思いますが、根幹が捻くれて曲がっています。
途中までは良かったのに、、つくづく、なぜ素直に作ってくれなかったのか…(´・ω・`)
クライマックスでゲマを倒した後、超展開が始まります。
本作における「超美麗3Dグラフィックのドラクエ」は「近未来でリメイクされたVRゲーム」であり、本来ゲマの後に控えているラスボス「ミルドラース」はウイルスに成り代わられていたのです。
ウイルスの作者は「ゲームに逃避するプレイヤー」を嫌っており、主人公たるプレイヤー(≒視聴者)に「大人になれ」と言い放ちます。
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視聴者の反応は、恐らく二分されると思います。
一つはドラクエファンではなかったけどこの映画を見てしまった人。
展開が飛び飛びなので、恐らく最初からここまで意味のわからん映画になっていると思います。
トドメの超展開で、たぶんポカーン状態です。
他方は、ドラクエファンで、ここまで楽しんでみていた人。
超展開で混乱する中、ここで冷水を浴びせられた気分になると思います。
誰も得をしません。
噂で聞いてはいましたが、それでもうわー…と思ってしまいましたw
最終的にはウイルスを倒してハッピーエンドっぽく終わるんですが、ファン的には「大人になれ」の衝撃が強すぎて、ドラクエのファンタジーな世界観はすべて吹っ飛び、ラストで駆け寄ってくるビアンカはもはや白々しいAIにしか見えません。
監督は視聴者の気持ちをどこに着地させたかったんだろう…?
映画としての作り、脚本が完全に知識のあるファン向けであるにも関わらず、最後にわざわざ集めたファンの夢を壊して終わる映画。
悪意すら感じます。マジで本当に心からひどいw
見ている途中は「全然悪くないじゃん。最後が酷いらしいけど、要は正解するカド状態なんでしょ?」と思っていたんですが、まさかファンを集めた上で意図的にぶん殴って来るとは思っていませんでした。。
■作画
鳥山絵じゃないので心配に思ってましたが、CGは素晴らしかったです。
統一感があり、「ユアストーリーの世界」とでも言うべきか、映画の作品世界が十分成立していると思いました。
また特徴的なモンスターデザインはCGになっても死んでおらず、恐らく何も知らない状態で見てもドラクエだと認識することが出来ます。
アクションや芝居も違和感なく、むしろ所々で「今の動きかっこいいなぁ」と思えるシーンもあり。
ドラクエファンとして少し残念な点を挙げるとすると、メラゾーマやバギクロスといった高位呪文の描写に特別感が無かったことでしょうか。単に派手な炎とか強い風というか。
作画に関しては特に腐す点無し。
■声優
「本業声優じゃないなぁ」という演技ですが、そこまでの違和感は無し。
特にゲマはフラットな評価として、個人的には良かったと思います。
他は声優がやってたらどうだったんだろう?
■音楽
DQ5の作品なのにDQ5以外のドラクエの音楽が多数使われていました。
戦闘は戦闘、ダンジョンはダンジョンなので単体の音楽として違和感は無かったですが、オリジナルならまだしも別のドラクエの曲なので、ファンとしては違和感がありました。
■総評
総じて、とにかくシナリオがヤバいです。
当時すんごい騒がれてるのをやや引いた目で見てましたが、納得しました。
単にドラクエがフレーバーで、「少年時代の夢が壊される」という主旨のホラー的な作品だったら納得なんですが…。
この作品、全体の8割くらいがどう見てもファン向けなんです。
その点がとてつもなくヤバい。
引っ張って引っ張って、ファンが集まった所で叩き潰す所業。
ヤバさが「ドラクエのファン」にしかわからないというのもまたヤバい。
語彙力を失うヤバさ。びっくりでした。