栞織 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
西遊記を下敷きにした異世界ものの成長譚
テレビ放映では間に合わず、dアニで視聴。
エンディングのクレジットで参考文献にメルヴィルの「白鯨」とともに、中島敦氏の「悟浄出世」という短編小説が挙げられていました。私も持っている「山月記・李陵」に収録されているらしいです。また探して読んでみたいですが、見たところはっきりと「西遊記」が下敷きになっている異世界ものです。それプラス「封神演義」でしょうか。熊徹と敵対する「ようぜん」というキャラの名前は「封神演義」に出てくる仙人の名前です。熊徹の仲間の豚と猿のキャラは、「西遊記」っぽいです。彼らを指導しているウサギの仙人も、「封神演義」に出てくる元始天尊っぽいですから。従って見たところ、クレジットにはまったく出てこないですが、中国資本の後押しで作られた作品ではないかと思います。異世界の風俗や設定が、あまりにも中国ぽいからです。おそらく向こうの子供たちにも見せるために作られていると思われます。そのためか、日本国内では、この作品はあまり宣伝されていなかったように思います。少なくとも今年夏の「竜とそばかすの姫」ほどの宣伝活動は行われていなかったと思います。2015年ですから、もうだいぶ昔になりますが、確かそうだったと思います。
しかしそうは言っても話としては、主人公のドロップアウトした少年のきちんとした成長譚になっていたと思います。ラストまで複雑なストーリーをよくまとめられていたと思います。そのあたり、さすが細田監督作品だと思いました。派手な作画技術はないですが、地に足のついた作品作りをしていると思います。ホームドラマとして、よく考えられていたと思います。エフェクトなども目立たないところにCGがうまく使われていたと思います。ラストの鯨はうまく演出されていたと思いました。また熊徹のキャラクターが、ひと昔前のアニメっぽく、また父子ものでしたから、お父さんたちの中には懐かしく感じた人もいたのではないかと思います。全体として、ニートになってしまった子供の内面の話のようにも見える作品で、今の社会問題にも通じているものだと感じました。蓮のように強く生きれない子供にも、見たあとで何かが残ればいいなと見ていて思いました。