nyaro さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
面白いですが、ルパンじゃないですよね。深さもないし。
エンターテイメントを目指した映画としては、かなり面白いと思います。
ただ、あまりに分かりやすい勧善懲悪で、敵キャラが類型的な悪の権化、ヒロインが白い衣装を着た聖女という構造でした。ラストシーンはあまりに有名ですが、あれはルパンの中で出てきて良いセリフだったのか。
キャラクターが毒抜きされすぎて、やっぱり子供向け感がすごかったですね。不二子の「悪」も味付け程度に薄まって結局はいい人でした。
子供向けといえば話も適当で、カジノも騙し、世界中を席捲したニセ札をルパンは一発で見破ったのはいいとして、なんでカリオストロ公国に行ったのでしょう。動機の説明ってありましたっけ?
不二子と一緒で原版を狙いにいったんでしょうか? でも、せっかく奪ったお札を捨ててますよね。何がしたいの?つぶしに行ったの?大泥棒が?それになんでルパンと同じ時期に不二子がいたんでしょうか。
で、偶然逃げているクラリスを見つけて意味もなく味方して。さも、因縁がありそうな思い出エピソードがありますけど、結構行き当たりばったりですよね。
そもそもカリオストロ伯爵も宝が欲しいだけなら、結婚なんて待たないで指輪を取り上げればいいじゃないか、とも思うし、クラリスもそんなに大事な指輪なら失くすなよ、って思います。指輪の使い方も誰も知らないし。そもそもあんな物が出てくる仕掛けの伝承としては不自然ですよね。
まあ、エンタメなのである程度のご都合主義は仕方ないですが、大人が真剣に考察する映画ではなく、頭を空にしてエンタメアニメとして楽しむ、というレベルかなあ、と思います。そういう種類の映画としては相当上位なんでしょうけど。
クラリスというキャラが当時のオタクたちには鮮烈だったのかもしれません。ものすごい人気だったみたいですね。ハイジのクララが成長したようなイメージですかね。確かにいいんですけど、今見るとちょっと類型的だしロリ好きの処女厨大好きな造形で、古さは隠せませんでした。
ルパン三世は本来アダルト向けで、不二子の裏切りや女の部分や五右衛門のつかず離れずの関係、何より正義とは無縁の大泥棒としてのルパンの活躍がなく、看板に偽りありになっています。ルパン三世ではないですよね。宮崎駿が作りたいアニメを好き勝手に作っただけの気がします。
後のビューティフルドリーマーやパトレイバー2で押井守がやらかしましたが、原作者の創造したキャラクターを勝手に改変してしまうのは、どうなのかなあ、という気はしました。
かなり古い作品なので当時としての評価がものすごい高いのはわかります。でも、今見たときにそんなに高いレベルのアニメだとは思えません。
まあ、あまりに評価が高いので、アンチテーゼ的に少し辛辣に書きましたが、実際ルパン三世としての出来は、さらに前のマモーの方が格段に上な気がします。