ナルユキ さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
出だしにして前作越えの片鱗が見えた!
「結城友奈は勇者である」の前日憚ということで、その良さがしっかりと継承されている。全3章でも1章につきアニメ2話分の尺しかなく、どうしても満足感に欠けてしまうのかなと懸念していたがそんなことはなかった。
それだけかの幼き勇者3人の物語は燃えるように熱く、花のように可憐なのである。
【変わらない魅力:日常と非日常のコントラスト】
何気無い小学校の登校・始業風景に割って入る樹海化現象。迫り来る巨大な怪物に、たった数人の少女が変身して立ち向かう──概ねその世界観は「結城友奈は勇者である-結城友奈の章-」の2年前ということで変わりはない。ファンにとっては期待通りの描写だ。ただ2年前だからこその設定や、2年後とは違うパターンで襲来するバーテックスとの激闘が第1章となる本作の主な見どころと言えるだろう。変身前に祝詞を唱えるというアイデンティティーはもっと推して欲しいけど、尺がないか……。
もちろん、勇者に選ばれた娘たちの日常描写も大事な要素だ。フードコートでジェラートを食べたり、合宿で一緒に入る温泉や就寝前の恋バナなど、バーテックスとの戦いを制するための“連携を高める”という名目で3人の女子小学生が常に共におり、笑顔が絶えない。変身ヒロインだけでなく日常・青春モノの雰囲気が好きな人には堪らないシーンがつめられていた。
【ココが面白い:1期より厳しい激闘】
{netabare}アバンで瞬殺されていたカプリコーンに、合体の素材になっただけのアクエリアスとリブラ……1期では大した敵に見えなかった3体のバーテックスが意外な強さで鷲尾須美らを苦しめる。とくにアクエリアス、まさか水圧レーザーまで発射できるとは……
勝利は勇者が常に収めるものの、どれも辛勝ばかりである。幼い勇者3人の生傷は絶えず、とくに前衛の三ノ輪銀は頭や肩から決して少なくない出血をするシーンもあった。
結城友奈たちには勇者を守る精霊が憑くことで殆ど無傷のまま戦いを終えられていた。しかし須美らの代ではまだ精霊が勇者システムに組み込まれていない。大型バーテックスの一撃を須美や乃木園子は受けない前提の立ち回り、銀は武器の斧で受け止めるor受け流す等の高度な戦闘技術が求められている。
代償がある代わりに大きな力を使えていた2年後よりも厳しい戦闘描写の数々に、勝つと解っていても息を呑まずにはいられないだろう。{/netabare}
【キャラクター評価】
鷲尾須美
真面目な委員長タイプの彼女が短い時間でのんびり屋の乃木園子や快活な三ノ輪銀と『ともだち』になる。これが第1章の副題の所以。最後のやり取りを見ればもう親友と言ってもいいが。{netabare}
園子がリーダーに選ばれた際、理由をつけつつも納得していないような心理描写が面白い。これがどう尾を引きずるのかとハラハラしたが、全く衝突を描かず須美の成長として昇華したのには感心した。頭の良い娘は他人の振る舞いを見るだけで自分の考えが驕りだと理解する。優しいシナリオと共にその純真さが描けていたと評する。
{/netabare}
乃木園子
前作より明るい。まあ当たり前っちゃ当たり前か(笑)
マイペースで不思議ちゃんで人にあだ名をつけまくって──でもリーダーとしてやるときはやる。そんなキャラクターに命を吹き込むのは可愛い声に凛としたものもある花澤香菜の演技が欠かせないだろう。
三ノ輪銀
日常では学校や訓練に遅れる場面が多々あり、活発な性格故のだらしない一面があるなと思いきや──無茶苦茶良い娘だった( ;∀;)
とは言え何度も面倒事に捲き込まれるトラブルメーカー体質。なんとか日常だけに留まってくれればいいが……
【総評:出だしにして前作越えの片鱗が見えた!】
全3章の内の1番最初ということで導入的な部分も多かったが、それ故の丁寧な描写がシリーズファンを満足させて初見にも優しい作りになっていた。
最初こそ仲が良くも悪くもなかった3人が激闘と日常を往復することで急速に仲を深めていく。そこに違和感が出ないのも小学生というポジションの賜物かも知れない。3人がフードコートでジェラートや軽食を食べるシーンを観ていると、まるで自分が遠くから見守る父親になったかのような錯覚すら覚える。{netabare}
父性を感じた手前、彼女らの戦いは前作以上に心配を感じた。日常を蝕む過剰な力であった“満開”は要らないが、せめて怪我は負わせないように“精霊”だけ実装することは出来ないのかよと大赦を睨みたい気分──でもそうしないってことは飽くまでもセットなんだろうな満開と精霊は( ´Д`)
本作全3戦は全て勝利し残りは9体。前作との繋がりを考えれば約束された勝利ではあるのだが、不確定要素として三ノ輪銀の安否がある。2年後の結城友奈の章で姿を現さなかったということは──いや、これ以上書くのは止めておこう。それを確かめるために次章がある。{/netabare}
前作に勝るとも劣らない日常シーンと非日常シーンが既に沢山描かれており、次章にも大きく期待が持てる作品。アクションシーンに一部3DCGが使われていてそれが浮いてしまってたものの、全体的には映画館で先行上映したものでもあって作画も向上してる傾向にある。次章も維持できれば映像面としても素晴らしいシリーズになるだろう。