「白い砂のアクアトープ(TVアニメ動画)」

総合得点
75.9
感想・評価
445
棚に入れた
1360
ランキング
760
★★★★☆ 3.6 (445)
物語
3.4
作画
4.0
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

RFC さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

水族館の在り方を問う作品

絵の美しさに惹かれて視聴開始。

【作品概要】
 沖縄の水族館「がまがま」。
 がまがま水族館の館長の孫「くくる」が主人公。
 くくるは水生動物が大好きで、
 高校生でありながら魚の飼育に関しては熟練者。
 閉館が迫るがまがまを救うため、奔走します。

【作品に対する感想】
 ロケーションが沖縄ですか。
 結構珍しいですかね?
 
 いい作品に出会えたと思います。
 PAさんのいわゆる「お仕事シリーズ」ですが、
 私的にはSHIROBAKOに次ぐ2位にランクインでした。
 特に2クール目の話で評価が伸びました。

 リアリティとしては
 「実際はもっと厳しいよ」とか「上手くいきすぎ」って
 ところもあるとは思うんですよ。
 でも、水族館の存在意義を遠近色んな視点で
 描いてくれたところは良かったと思います。

 本人目線、上司目線
 どちらでも感じるところがあるんじゃないでしょうか。
 綺麗な終わり方でした。
 ただ、ほんのちょっとでいいから
 風花の2年の研鑽の結果が見たかったかな。

1)物語
 若くして夢が壊れた風花。
 夢を壊さないために頑張るくくる。
 過去と現在進行の対比で始まった
 二人の関係の変遷が面白いです。 

 ➀1クール目
  経営難の水族館を存続させようと奔走するくくる。
  「彼女の記憶を留める場所だから」という個人的な想い。

  序盤で感じたのは{netabare}
  そこで一生懸命働いている方、頑張ってる方の想いが
  尊いのは百も承知の上での話なんですけど…。

  ぼくたちのリメイクの言葉を借りるなら、
  「水族園の仕事もまた人が生きるのに
   直接必要がないものであり、
   余裕の中に生まれる価値」
  だと思います。
  ならば、経営が困難になる≒人々に必要とされていない
  ことを延命することに意味があるのか。

  学術的な研究という側面もあるんでしょうから、
  そういう意味では必要なんでしょうけどね。

  もちろんニーズの変化でリバイバルする
  可能性もあるのは否定できないんですけど…。

  一方で気持ちの問題。
  がまがまに愛着を持ち、救われている人も確かにいる。

  そういった公益を維持する役割って
  行政の仕事と思うんですけど、
  緩衝材として出来ることも限界がありますし。
  本編と関係ない所で私をグサグサ刺してきます。 
{/netabare}  

 ➁2クール目
  キャラ紹介の下地ができたところで、
  お仕事シリーズ本領発揮です。

  1クール目のくくるの言動が
  ブーメランになってるのが面白い。
  風花や夏凛の方が俯瞰できてて、
  くくるが足引っ張ってる感じです。
  1話で風花に辛辣な言葉浴びせたこと、
  南風原さんに子供心丸出しで意地悪したことが
  全部返ってくる羽目に。
  まあ、因果応報なんでしょうがないです。

  くくるはもっと暴走するのかと思いきや、
  抑えるところは抑えているのが意外でした。

  たった1年で視野を広げたくくるの物語は
  ものすごく濃密で意義のあるものだったと思います。
  また一水族館にとどまらず、環境問題など
  広い世界の視点まで広げて描いてくれたのも、
  素晴らしかったと思います。
  

2)作画
 沖縄・海・水族館…昼、夜、雨の日、晴れの日
 無茶苦茶綺麗の一言に尽きます。
 OP/EDどれも美しいです。
 ごはんが無茶苦茶美味しそうです。

 ただ!
 一点気になって仕方ないのが、
 2クール目のEDの最後のワンカット。
 くくると風花が巨人に見えます。
 背景とキャラの遠近法の消失点が合ってないから?
 のように思えますが、分かる方ご教授ください。orz

3)声優
 沖縄弁大変だったと思います!
 特に年配の方の声を当てられてた方ほど。


4)音楽
 後半OPとめどない潮騒にぼくたちは何を歌うだろうか
 中毒性がありますね。
 こういった前向きな歌好きです。


5)キャラ
 ➀海咲野くくる
  1クール目は視野が狭いものの、意識が高い娘という印象。
  割と暴走娘です。

  2クール目は得意分野から外れて、苦労しまくり。
  スーツのくくる、可愛いです。
  でも意外と客観視できているところもあったりで、
  1クール目の時は子供って印象が強かったですが、
  2クール目からは意外と大人になってて印象深いです。  
  猪突猛進かと思いきや、退くとこは退くし、
  空気読むところは読むし、
  資料のまとめ方も新人とは思えません。
  こんな人、部下に欲しいです。育て甲斐ありそうです。

 ➁宮沢風花
  1クール目と2クール目で立ち位置が逆転する娘。
  ダイビングの免許取ったり、2年の研修に行ったりと
  かなり頑張ってますよね。

  風花は芸能界に首突っ込んでただけに、
  大人な気配りができる娘ですね。
  後半になるにつれて、
  どんどん懐深くなって天使になります。

 ➂おじい
  この人の見守る感、すごいなあと思います。
  伝説の飼育員と呼ばれてますが、
  移り行く時代を俯瞰しながら、どっしりと構え、
  これからの人材を見守っている。
  こういうひとにわたしはなりたひ(笑

 ➃副館長(諏訪哲司)
  多分視聴者からは非難囂々そうですね。
  新人くくる相手に無茶な仕事の振り方とか、
  (もっと早く言っとけよってことが多すぎ)
  無駄に人をコケにする高圧さとか。
  まあこのご時世にこんなことやったら下手したら
  訴えられそうな感じです。
  
  ただ人当たりは別として
  仕事における目は結構確かかなと感じました。
  採用した案件はヒットしてるし、
  イベント規模も間髪入れずに的確に指示出してます。
  目的意識もはっきりしてブレないですしね。
  くくるを「中途半端な知識は邪魔だ」と
  ばっさり切り捨てたのも、
  営業業務に早く全集中させるためと感じました。
  結果的にくくるの動きが中途半端にならなかったですしね。

  この人欠点もあるんですけど、
  私はそこまで酷いとは感じませんでした。
  もっとムチャクチャな老害はいくらでもいますので。

  どっちかと言うとギャランドゥ部長の
  いい加減さにイライラ来ることが多かったです(笑

 ➄うどんちゃん
  女子なら絶対嫌がりそうなあだ名ですが、
  あっけらかんと受け入れてるあたりが
  人柄なのか土地柄なのか。
  かき氷すげえです。

 ➅南風原知夢
  物語的には嫌な人役みたいな立ち位置でしたが、
  意識高くて私は好きでした。
  超絶努力家ですしね。

 ⑦比嘉瑛士(院卒メガネ)
  ええキャラしてます。
  独特の風味を持つ癖のあるキャラで、好きです。
  最後のプレゼン、私は一番好きでした。


6)印象深いシーン
{netabare}
 ➀風花、沖縄逃亡
  風花を励ます会を想像していやなのはわかるんですけど、
  思い付きで沖縄に飛ぶあたりがぶっ飛んでます。
  「励ますと銘打って全然本人を励ましてない会」を
  是とする昭和世代と、非とする平成世代の感覚のずれを
  表現してていいですね。
  私もどっちかというと「ほっといてくれ」という感覚なので、
  風花に共感して観てました。
  オッサンになって「昭和の気遣いの仕方」
  という理解をした上で、頭ごなしに否定することは
  今はないですけどね。

 ➁くくる、風花を頭ごなしに叱責する
  ちょっと辛辣かなと思いました。
  くくるは確かにがまがま水族館とずっと接してきていて
  魚や命に対する心構えや覚悟は見上げたものだと思います。
  ただ、それに携わったことがない人に対して、
  あの物言いはあんまりすぎるかなと思います。
  まあ余裕がないときって視野が狭くなりますし、
  若いですしね。
  風花が安易に水族館のスタッフに志願したのも
  問題だとは思うんですけど。

 ➂風花おかん、呑まれる
  おばあ梅酒 最強説。
  なんつーか、おっさんになると周りの人たちの
  ああいう無償の優しさが凄く温かく見えます。
  何でこう擦れてもたかなーって
  ちょっと自虐的になりますね。
  なんでも先読み、先回りして考える癖がついてしまって、
  ああいう「目の前に集中」って考え方が出来なくなってて
  懐かしくもあり、うらやましくもあり…って感じですね。

 ➃くくる 南風原戦争 1
  くくるの大人気なさにワロタ。
  実際まだ子供ですけど。
  仕事とお仕事ごっこ。
  言い方はきついけど
  南風原さんの方に一理あるかなと感じます。

 ➄風花 映画出演依頼
  風花は悪いタイミングで
  いい話が転がってきましたね。
  くくるにとっては「どっちが大事?」って
  問いただしたくなる気持ちでしょうけど、
  当然ドラマの方が大事でしょう。風花にとっては。
  その辺分かってるから何も言えない。
  いい描写でした。

  この辺では、2クール目は芸能界で頑張る風花と
  ティンガーラで頑張るくくるの話になるのかと
  思ってました。

 ➅くくる ご乱心の籠城
  くくるの暴走と言えばそうなんですけど、
  気持ちはすごく解るんですよね。
  くくるに現実を突きつける形で、
  閉館を受け入れざるを得なくなりました。
  でもそれでよかったかなと思います。
  おじい、おばあ、見守るスタンス凄いですね。
  やりかたは違えど生き物を守りたい思いは同じ。
  ちゃんと伝わったようです。

  若い頃って見えてる世界も狭いし、
  そこがすべてって思っちゃいますよね。
  後から思えば
  そうでなかったこともいっぱいあるんですけど。

 ⑦配属ガチャ
  いきなり絶望のくくる。
  でも私は長期的にはいい配属かと思いました。
  現場を知ってる営業・企画って強いと思うんですよね。
  生き物のお世話が、水族館という巨大な仕事の一部
  であることを認識して、俯瞰するいいきっかけに
  なるんじゃないかと。
  慣れない仕事だから相当苦労すると思うんですけど、
  乗り越えたら相当強いくくるになりそうです。
  櫂、ええ事言うわ。

 ⑧プランクトン!
  くくるとしては大変でしょうけど、
  乗り越えないといけない壁だと思います。
  もっとムチャクチャな人いくらでもいますからね。
  みんなが助けてくれる優しい世界はもう終わりです。

 ⑨南風原さんの裏側
  そういうことやったんやね。
  確かに仕事にプライベートもちこむとか、
  抵抗ある人もいるんやろうけど、
  子供に関してまで縛り上げたら回り回って
  社会の衰退に繋がっていくと思うんですよね。
  てぃんがーらは理解ある人が多くて良かったです。
  くくるも言い過ぎたことをちゃんと反省して
  理解しようとしているのがいい娘だなと思います。
  やり方は唖然でしたが(笑

 ⑩ウェディング企画
  副館長、やっぱりくくるにかなり期待してますね。
  くくるの発言をかなり重要視してるように見えます。
  ただ、いきなり新エリアの責任者はきつくない?
  責任は副館長が持つってのを
  宣言してるのはいいですけど。

  副館長何か焦ってるように見えます。
  時間が限られてる?
  企画の仕事って自分で考えて
  切り開いていかないといけないから
  手取り足取り教えてどうこう
  なるもんじゃないんですけど
  新卒相手に言葉足らずが過ぎるかな。

  色々な経験させようと小さな企画から
  徐々にハードル上げてるのもわかります。
  結婚式の企画書も、失敗を経験させるためにあえて
  くくるの提案通りやらせたのも解ります。
  相手の立場、望んでることを解って提案しないと
  ただの自己満足ですからね。
  魚ファーストのくくるの世界観を広げるには、
  「限界まで煮詰めたものが届かなかった」という
  経験が必要なのはわかります。
  チャンスもピンチもこっちの都合なんて
  考えてくれないのもわかります。

  後はくくるが殻を破っていけるかですね。
  くくるが望む「飼育の仕事」も水族館あっての
  仕事であって、水族館を存続させていかないと、
  仕事自体がなくなりますからね。
{/netabare}

投稿 : 2022/04/05
閲覧 : 313
サンキュー:

25

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