「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス](TVアニメ動画)」

総合得点
92.1
感想・評価
5060
棚に入れた
21546
ランキング
25
★★★★★ 4.3 (5060)
物語
4.4
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.3

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ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

最高に面白い。深さに関しては過大評価ですかね。田中敦子さんのご逝去について追記

24年8月20日。少佐役の唯一無二の声優田中敦子さんがお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

 また、声優さんの訃報が届きました。私としては田中敦子さんと言えば本作になりますのでこの場で追悼の意を表したいと思います。草薙素子…少佐の迫力がありながら女を表現した演技は本当に素晴らしく、少佐の唯一無二の声だと思います。
 最近では「葬送のフリーレン」のフランメ、「治療魔法の間違った使い方」のローズなど師匠キャラを演じておられ、貫禄なある役柄で活躍されていました。




最高に面白い。深さに関しては過大評価ですかね。ちょっと追記です。

 もともとの映画版のように、電脳社会における集合的無意識みたいな話ではありません。難解な映画版に対して、未来刑事ものとしてうまくストーリ-化されて、エンターテイメント性が格段に増しています。演出、セリフ、映像、メカデザイン・設定等々がかなりカッコよく「魅せる」ためにデザインされていて、本当に面白い作品に仕上げています。

 本作は、私が勝手に分類すると4種類のストーリーで構成されています。4つとは、笑い男事件、AIの個性の獲得、戦争の傷跡、個別のエピソードです。
 この構成の中に、エンターテイメント性だけでなくテーマも内包されていて決して浅いわけではありません。が、テーマのためのテーマのような、テーマそのものがギミックになっているような気もします。
 劇場版とくらべて物足りなく感じる人がいるのは、クリエーターが表現せざるを得ないような熱くて深い何か、つまり「作家性」を本作のテーマに感じないせいではないでしょうか。
 
 さて、4つのストーリーです。

{netabare} 笑い男事件は、丸山ワクチン+グリコ森永を題材にしたさらにその裏にある疑獄事件の話です。テーマは、オリジナルの無い模倣です。このオリジナルの無い模倣というのは、社会の意見と自分の意見が区別がつかなくなる、大量の情報によって個性が無くなって行く。どこかの誰かが言った意見が自分の意見になり、やがて誰もオリジナルの意見を持てなくなるというイメージなんでしょう。

 AIの個性の話。これはタチコマを中心に展開される話で、情報の並列化をしているのに、好奇心が個性を生み出してゆくという話です。テーマとしてはAIものの定番ではありますが、タチコマの個性の獲得の部分が、キャラの魅力もあって新鮮で面白かったです。

 戦争の傷跡。これはベトナム戦争の帰還兵みたいな話やその後のテロリズムの犠牲者みたいな話です。少しこのパートが浮いていたかもしれません。バトーの内面をここで表現していたのでしょうか。ハリウッド映画に類型は沢山ありますし、マンガならパイナップルアーミーみたいな感じです。雰囲気だけ、という感じであまり面白い話が無かったかもしれません。

 個別のエピソード。これはまあ未来電脳社会刑事ものです。ですが、電脳社会の問題点やSF設定などが語られています。荒巻課長の話が多かったですかね。金の問題もあの四角いロボットの社長とか暗殺者のところで少しクローズアップされていました。

 そして、全体として最後、草薙素子は、オリジナルの無い模倣者の解決方法として、タチコマの獲得した個性に着目。好奇心に可能性を見出していきます。 {/netabare}

 映画版で何だこりゃだったのが、本当に面白くなっています。映像も演出もハリウッドにマネされるくらい凄い出来でした。面白いのは最高に面白いですが、深さ、に関して言えば、本作はちょっと過大評価ですかね。

 なお、一番可愛いのが、モブのオペレータのアンドロイドたちと、お金を使った暗殺者でした。


追記 肝心なことを書き忘れました。
 シミュラークルというものがあります。オリジナルと模倣の因果関係が、オリジナルと模倣が等価になり、さらに、模倣と模倣の繰り返しによって、やがて観念的な記号として「シミュラークル」というものが生まれるそうです。
 ちょっと観念的なので私が理解しきれているかわかりませんが、この過程に必要なのが近代化の過程およびシミュレーションということになります。

 本作オリジナルなき模倣者は、おそらくこの考えをうまくストーリーに取り込んだのでしょう。網目状に広がるネット社会で概念が相互参照を繰り返すうちに、オリジナルから乖離してやがて誰も提唱したことが無い思想が生まれた…ということでしょうか。

投稿 : 2024/08/20
閲覧 : 615
サンキュー:

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