nyaro さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
君の名は。ジ・オリジン
新海監督のSF設定というのは、特殊な状況に置かれた少年少女の心の動きを表現するための装置であって、SFを描きたいのではないだろうな、と思います。したがってSF設定を考察する楽しみもありますが、先にまず登場人物たちの心情に入り込みましょう。
本作のストーリーは、夢に捕らわれた少女(ヒロイン)と心が繋がる少年(主人公)の話です。2人は現実世界のほのかな恋心から始まり、理不尽な別れの後、2人の置かれた状況は違いますが孤独な世界で3年間過ごすことになります。が、お互い夢で相手と会っている時間だけが唯一の救いとなります。
主人公がヒロインが入院していた場所に行くと、夢が繋がりお互い話をします。この場面、「君の名は。」のカルデラの上の邂逅とほとんど同じです。そこに気がつけば、舞台は違いますがほとんど「君の名は。」と同じテーマだ、ということがわかります。
主人公とヒロインが中学生の頃、手作りの飛行機に乗せて、遠く離れた巨大な塔まで連れて行ってあげる約束をしていました。この約束を果たせばきっとヒロインは目覚める、と主人公は確信します。
主人公は寝たきりのヒロインを連れ、最後は塔にたどり着きます。ヒロインは目覚めますが、記憶を失います。でも、主人公が大切だという気持ちだけは残っていました。(訂正 約束の場所を壊しちゃったので、残っていなかった…ですね。残念。ただ、喪失感だけはあったようです)
他に主人公とヒロインの共通な友人など重要な役割ですが、やっぱりダブル主人公ではなくサブですね。
というわけで、これが恐らく「君の名は。」の原型なんだろうな、というのが分かります。好みがわかれるかもしれません。どちらも素晴らしいので甲乙つけがたいです。
逆にいえば、「君の名は。」と同じくらい面白いです。
SF設定が苦手な人は「君の名は。」でしょうか。壮大だし、演出や映像などはやはり「君の名は。」が上でしょうね。
でも、多元宇宙とかのSF設定や、戦闘や人の悪意みたいな部分が苦手でない人は、こっちのほうが少年少女の気持ちがよりピュアで、より詩的で、心情的に感情移入しやすいです。
この物語に出てくる高い塔ですが、これが非常にいい雰囲気で、少年のころに夢見る何かわからないけど近づきたくなるような憧れの象徴になっています。また、登場人物それぞれが立場によってこの塔を見てどう感じるかが表現されていています。
今回は電車や廃駅など、鉄道にかかわる描写がものすごいので、アニメ的にはそこを味わってみてください。