ゲリオ さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
販促アニメだったけど上出来なり
「生き人形」のエミリコと、顔のない一族「シャドー」のケイトをダブル主人公とする物語。
一見ホラー物に見えるが、内容としてはファンタジーでもあり、ミステリーでもあり、萌えも哲学も友情もあり、ジャンル分けが非常に難しい独特な作品。
世界観が異質すぎて今期の中でも興味を引く作品だった。
高水準な作画クオリティを終始保持して楽しませてもらったが、原作連載中の作品のためストーリーがアニメ内で完結することはなかった。
最終回も本格的なお話はこれからという形で終わったのは、やや残念だった。
13話通して見せたのはあくまでプロローグであり、「続きを見たい人は原作で」という販促目的としてのアニメ化だったと考えれば上出来。
生き人形やシャドーの存在の謎は朧気ながらアニメで判明し、エミリコたちの今後の展開が気になるところで、自分も是非原作本を手に取りたいと思った。
未読の自分は存じないが、アニメ終盤はかなり原作と内容が異なるとの噂をSNS等で見た。
原作改変というとファンの怒りの声が聞こえそうだが、原作と同じにして完全に中途半端な終わり方をしてしまうよりかは、多少強引にでも区切りよく締めた方が良い。
しかも今回は原作者が介入してのアニオリ展開ということで、そういうことならファンも納得せざるを得ないのではないか。
アニメと原作の違いを比較するのも楽しそうだ。
キャラクターの評価は大変良い。
ゴスロリチックな服装が大変可愛らしく、全体的にホラーチックな雰囲気の中、エミリコの底抜けの明るさと優しさは癒しを与えてくれた。
エミリコ役の篠原さんという声優さんは知らない人だったが、過去の出演作で唯一知っていたのは"放課後ていぼう日誌"の部長なんだけど「えっ、全然違う声だったような?!」って思った。
もうひとりの主人公ケイト役は、逆に人気声優の鬼頭さんを起用。
どちらも適材適所で良いキャスティングだった。
シャドーと対となる生き人形について。ケイト&エミリコ以外は同一の声優さんが演じていたのも興味深く、一人二役という難しい役どころをそれぞれ器用にこなしていたのは流石。
ジョン&ショーンという似てないコンビも魅力的なキャラだったが、最初は嫌味なキャラとして登場したパトリック&リッキーがエミリコと関わることで素直なキャラに成長したことも良かった。
ジョンと違って、アニメでは見せ場を作れなかったパトリックも、今後原作で活躍の場が与えられそうで楽しみ。
主のシャドーから虐待されてる描写があったミアへの言及も気になる。
先に書いた通り作画の崩れは全くなく、最近のヤンジャン作品は本当にしっかりとしたアニメに仕上がって大いに感心できる。
オープニングは歌のないBGM形式(同じヤンジャンの極黒のブリュンヒルデを彷彿する)だったが、これはこれですごく雰囲気が出て良いんだけど、アニメOP好きとしてはやっぱり歌詞は欲しいかもと思った。
代わりにエンディングが名曲で毎週最後まで聞き終えて余韻に浸れた。
ゴシック調スリラーの旋律を感じさせる作中BGMも抜群で、顔のないシャドー一族が幅を利かす不気味な洋館のイメージに最適。まさしく音響演出に優れた作品だった。
まとめとしては、作画&演出総じて丁寧でハイクオリティな良作だった。
内容もなかなか面白かったが、まあ、本当にプロローグという感じだったので、できれば続きもアニメで制作してもらいたい。ただ、円盤はあまり売れなさそうなので厳しいか。
私を含めて原作を読んででも続きが見たいという人は大勢いたと思うが…
終盤の駆け足気味だったアニオリ展開については、やや批判的な原作ファンの感想も聞こえたが、未読の身としてはそこまでの違和感は感じず、それなりに切りよく終わらせたように見受けられた。その辺りは、原作を読んでから改めて考えた方がよさそうだ。
とにかくアニメーションの出来としては優秀だったので、制作に関わった方々には心から敬意を示すとともに、またしても良作を排出してくれたヤングジャンプにも感謝したい所存だ。