kurosuke40 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
私を見る人
吉田と沙優の(疑似的な親子関係のような)関係と言う、作者の描きたいことは描けており、個人的に好みでした。
ですが、社会的に重い導入に関わらず、社会の厳しさが出てこない。愛を語るのに社会の視線を気にしないといけない葛藤の話はなく、おとぎ話のような印象は拭えません。題材に対してそこらへん肩透かしを食らった方もいてもおかしくないですね。
でも、おとぎ話がイイんだよなー現実は見たくないわーというものあり、これはこれで好きです。
吉田と沙優の関係について。
人は自分を見る誰かの視点に立って、自分を愛することができるようになるものです。通常まずその誰かは「親」が担うことが多いのですが、沙優はそのような視点に恵まれませんでした。
吉田に出逢う前、家出中の沙優に与えられた眼差しは『女』です。
見かねた「吉田」が、最終的に沙優を見守るという形になり、沙優はその視点から自身を愛せるようになり、自立していく。
それと同時に吉田の方も、見る立場になるということは同時に「沙優」から見返される立場になるということ。「ひげを剃る」行為は吉田がその立場を弁えるという象徴的な行為であり、吉田も「沙優」から見て(保護者的な)自身を自覚していく。
特に印象に残っているのが夏祭りで吉田が「俺が買ってあげたいんだ」と言い直したところでした。
離婚時に判断能力のない幼い子供に母親と父親のどっちについて行くかと子供に聞くような話がありますが、その内実は選択の責任を子供に押し付けているとも言えます。その責任を引き受ける覚悟を吉田が自覚したのだと思います。
これは沙優の母親との対比でもあり、彼女は『母』という眼差しを拒絶していました(おそらく一度否定されたことで受け入れられなくなっているように見えます)。「(沙優の)母親は私しかいない」という言葉が彼女に響くのは、受け入れざるを得ないという諦念から、かもしれませんね。
蛇足
いっそのことこの世界では吉田の行為は犯罪かどうかは一切言及しない形の方が賢明だったかもしれませんね。
社会の視点が混じると一気に複雑になるので、大事なところの見通しがつけやすい利点はあります。おとぎ話の特権ですね。
お兄ちゃんは違う父親っぽい。
ぶっちゃけ「吉田」のこの立場に一度なってしまったら欲情できんよな。