Dave さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
スーパーカブ、翼を授ける
1.日本の産業イコン、翼を授ける
友だちもいない、両親もいない、という恵まれない環境にいた一人の女子高生が、スーパーカブを手に入れたことで新しい世界にこぎ出す物語。派手なドラマはないけれど、少しづつ、しかし確実に少女の世界を広げていく堅実さが、スーパーカブらしいところ。まるで翼を得たように世界に飛び出していくその姿は、ホンダのロゴマークである翼を体現しているよう。私はバイク乗りでもないし、スーパーカブに思い入れもないけれど、素晴らしい作品だと思います。
2.ストーリーの良さ
何かに出会って、少女が輝いていくというのはアニメの王道ストーリー。そこに今回は女子高生とはかけ離れた存在である「スーパーカブ」を持ってきたところにまず意外性がある。バイクモノなら他にもあったし、レースとかなら絵としての派手さも演出しやすいけれど、飽くまでも等身大の少女と実用バイクに徹しているところがいい。見た目の派手さや度肝を抜く仕様ではなく、堅実に日々を積み重ねていくというのが、実にスーパーカブらしくて。このバイクが半世紀経っても愛されるように、この作品はこの先もずっと輝いていてほしいです。
3.画の良さ
本田技研工業の全面協力とあるし、制作陣もいい加減なものは作れない、という気合が伝わってきます。マシンに対する愛とも言うべき情熱が作画から感じられました。正直、人物画はもう少し頑張れたかなと思わないでもないけれど、水の描写を含めた背景画像、リアルな街並み、そのまま山梨の観光PRにできそうなほど。すごく真面目な仕事っぷりに好感が持てますね。
4.つっこみ
修学旅行でのイロイロはまあ物語だし、ありえない話も出もないので(ちょっと驚いたけれど)、私にとっては許容範囲。むしろ椎を救う件(主人公が明らかに間違った判断をしている)はさすがに生命にかかわることだし、正しい行動をさせるべきだったかと。あれだと、友達が死んで終わりという最悪のエンディングを迎えるところでした。ストーリーとして少しはドラマを挟みたかった気持ちもわかるけれど、ちょっと減点せざるを得ない。これまで非常にリアルに、等身大の少女帯の姿を描いてきただけに、ここは残念。
5.総括
そういうわけで非の打ち所がない、とまでは言えなくなってしまったけれど、総じて完成度の高い作品であることに異論はないと思います。原作は大学編もあるみたいだし、続編に大いに期待ですね。
亡き本田宗一郎氏も喜んでくれるかな。