HAL9000 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:今観てる
独特の不思議な世界観とテーマ、静かに楽しめるSF
まだ視聴終了してないのに、いろいろと考えが沸き上がるので徒然レビューしたくなりました。現在11話。
一話導入から独特の語り口調と設定、静かな世界観に引き込まれる。あでやかさやきらびやかさ、スピーディーな戦闘で売るな作りでなく、地味で堅実な描写が本格小説的でじっくり楽しめる。老人と子供をしっかりと描き分けられる画力も、安心して観られることの基礎になっていて、ここが個人的に高評価。
(→カウボーイビバップが良作である要素に、老人の描写、多民族/人種描写がとてもうまいことがあると思っている。老人と子供を正しく描けるということは、若い時点の経験だけに頼ることなく人生を通じて特徴を抽出でき、テーマを見つけられるということ。それだけでとても深みが出る。少なくともかわいこちゃんキャラにほうれい線入れただけで「ママ」キャラと判別しなければならない、とか、顔が全く同じなのに髪色だけで登場キャラを判別しなければならない苦行は強いられない。アニメで本当にいそうな爺さん婆さんを見るとそれだけでとてもハッピー。おそ松さんは六つ子なのにすべて一目で判別つくのでさすが>余談ばかりに・・)
この作品でまず引き込まれるのが、宇多田ヒカルのPVそのままのような独特なオープニング。巨大な熊と木、仮面の少年、白い狼、そして登場する様々な人たちのフラッシュバックが自分の感情の機微に同調する。不思議な光景は宇多田ヒカルの音楽ととてもよくマッチ。じわじわきて、中盤すぎる頃には脳に焼き付く。
各話それぞれ好きな要素が少しずつ。そして静かに余韻が残る。
生とはなにか。無機物や有機物の概念を超越した生命体。その"モノ"が主人公。モノはカタチを得てゆくが、関与するヒト達の「生」はそれと対比されるかのようにとてもはかなく、すぐに死んでしまう存在。
死。若者が、子供が、大人や老人より長生きすると決まっているわけではない。死は突然やってきて、永遠に連れ去ってしまう。神聖視された大熊の
出会い。出会った人達との関係性は、これからずっと続いていくような気がした瞬間、唐突にあっけなく終わってしまう。そして過ぎ去った日々がまるで一瞬のようだと錯覚する。
{netabare}
形。植物に似た敵はカタチを奪う。グーグーは他人の命を救うのと引き換えに自信の顔の形を失った。形とは生物にとって、社会的な外見ということを度外視すると、根源的な意味は何だろう。
カタチはアイデンティティで自分の内面がそのまま現実化したものなのか。女性の同一視は度々そうなのだろう。精神と肉体が同一のもの、カタチが奪われると自分ではなくなる、これらは間違っているに違いない。
面白いテーマ、そして理解不能である敵のイメージは強烈で、しかも「木」だ。しかし主人公である"モノ"も同種のもの。
境遇。グーグーは泣いてわめいて暴れたら「突然自分の境遇に興味がなくなった。」お嬢様育ちで数センチの擦り傷に悩み、顔まで失ってしまったグーグーに嘆くリーン。
生贄にされようとしていた少女が母親がわり。民族衣装。
弟を捨て金を持ち逃げした兄が、後悔と贖罪に現れる。他者の痛みをわかり手を差し伸べられることのできる農場主と、理解できずに見た目の悪いものを迫害してしまう息子。どのエピソードも何かしら余韻が残る。
主人公の衣服はどうなってるんだろうと思っていたら、ちゃんと補足描写があった。「張り付いたようになってる。」 服ごとコピーして変身。
では、カタチを変えるときの質量や体積は?という疑問は、大熊変身や果物の物質創造で答え。つまり無から物質生成できるようだ。{/netabare}
次回は最終話かな? 11話はなかなか引きが強かったので期待。たぶん裏切られることはないだろう。今期はvivyとスーパーカブと不滅のあなたへ、でした。皆さんのレビューも見てみよう。
※追記 訂正。他の方のレビューでまだまだ続くことがわかりました。よかった。ありがとうです。原作知らないので誤り。
そうそう、やっぱり火の鳥連想と、全年齢型対象作品的な安定感がNHK。NHK枠では獣の奏者エリンも連想。(報道は全メディア同じく×)