まつはや さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ジェームズボンドとジャックザリッパーが共闘するやりたい放題っぷり
主人公ウィリアムとその仲間が犯罪を以って英国を変革せんとするダークヒーローもの2クール目。
1クール目の復讐代行、推理ものの要素は薄れ政治、スパイ、偉人アクションものとしての側面が強くなった上、シャーロックホームズに関係の無い映画や史実の要素も次々挿入されますが、別路線に入っても安定の面白さでした。
特に大英帝国の醜聞編はオチの粋さ含め完成度が高かった一幕だったように思います。
1クール目少々物足りなかったウィリアム陣営の活躍も追加メンバーと共に盛られていましたが、その分シャーロックは先手を打たれがち、ウィリアム陣営に振り回されがちな印象でしたね。
追加メンバーは皆キャラが濃くフィクションに寄った便利道具も続々登場するので、1クール目が少数精鋭の仕事人チームなら2クール目は最早秘密結社といった風です。
このアニメを一言で表すなら「堅実」もしくは「安定」でしょう。所謂「神作画」と話題になるような目立ったアクションシーンや展開はないものの、画作りや話運び、台詞回しに到るまでとにかく一つ一つの要素が丁寧で高水準なのです。
本作は(一部例外はあれど)基本武力ではなく交渉や立ち回りで物事を解決していく展開がメイン。
ともすれば台詞だらけで退屈になりがちな部分を演出やセリフの選定を吟味し上手く繋げているなといった印象です。時代を反映した展開も多いですが、19世紀英国に疎い自分でも難解さを感じず楽しめました。
また、連載中の漫画原作にも関わらず「俺たちの戦いはこれからだ!」とならずここで完結としてもいいほど話が収まっている点も評価したいです。
強いて言うなら終盤は少々駆け足だったので、もう少し尺を取り展開に説得感を出して欲しかったですかね。主人公一味の成そうとしていることのスケールに尺が追いついていない印象を受けました。最終回の{netabare}バケツリレーは付け焼き刃の放火で無理やり起こった事象ですし、シャーロックが女王に取り付けた約束を含めても、この描写だけで階級制度を打ち壊すに至るには正直少々弱い {/netabare}のではないでしょうか。
主人公らは世間を相手にしているわけですから、主人公たちの行為に対する世間の反応やそれらが変わっていく様ももう少し見せて欲しかったように思います。
【以下終盤のネタバレ】
1クール目視聴時に「もう少しウィリアムの信念や心の内を見せて欲しい」と書きましたがそれは長きに渡る伏線として意図的に隠されていたのでした。
1話では余裕の表れとして描かれていたタバコを脆さの象徴に一転させた演出が見事でしたね。
ウィリアムVSシャーロックと見せかけてシャーロックがウィリアムを救うという展開なわけですが、謎第一で他人にあまり興味がないように見えるシャーロックが(ずっと追ってきた犯罪卿とはいえ)他人にそこまで干渉するか?と少々唐突さを感じたのでやはり尺があればと言う話に戻ってきてしまいます。
少々惜しい部分はありつつ物語は収まるところに収まったので高評価です。