ウェスタンガール さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ディアスポラ
“離散”を意味するギリシア語である。
バビロン捕囚後にユダヤ人が異邦人の土地へと離散したという聖書の記述に由来する。
もちろん、グレッグ・イーガンの其れをイメージした訳ではあるが、この作品は、もっと内的な、生命の根源である“魂”の“離散”がテーマであるように思われる。
それは、破滅の後に生まれた、地上、海、月、3つの世界の物語である。
宝石たちにとっては、自らに課せられた役割に準じることが全てであり、存在の永遠性を規律するものなのだ。
この世界の管理者である“先生”、彼への献身こそが“宝石たちの”存在そのものなのである。
物語では、この世界に生まれたばかり(とはいえ数百年の時を経ているわけだが)の主人公、フォスフォフィライトという“光”とシンシャという“影”の存在が生み出す“ゆらぎ”とでも言うべき心情の数々が紡がれてゆく。
しかし、12話の中で明らかとなるのは、大まかな世界の成り立ちと“謎”のみであり、そこに在るのは、欠損(忘却)と成長(補完)を通じて内省を深める“フォス”の姿からしか窺い知ることが出来ない心象風景のみである。
無機的でありながら、足らざる魂の宿る、温かく愛おしさに満ちた「宝石の国」の住人達の想いである。
フォスは思う、
{netabare}「根拠なく明るい予感に甘えられていたのが不思議で、あの頃の自分が羨ましい」{/netabare}
、と。
そして独り言ちるのである。
{netabare}「だから、冷静に、慎重に」{/netabare}