「さよならの朝に約束の花をかざろう(アニメ映画)」

総合得点
89.1
感想・評価
675
棚に入れた
3553
ランキング
92
★★★★★ 4.2 (675)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

よ! さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

演出が卑怯。

エンディングのウィアートルという曲をYouTubeで聴き、これ良い曲だねと興味を持ったのがこの作品を見たいと思ったきっかけです。なので、見る前から音楽の評価は星5です(笑)
鑑賞前から感動ものと知らされた上での鑑賞です。
ということで、絶対にどこかでお涙頂戴シーンが来るねと身構えながら観ました。
観終わった感想としては、設定は少し変わっているけど、割とどこにでもありそうな王道的ストーリー。
はっきり言って、公開されている設定から、展開も結末も読めました。
展開が読めるから見る価値が無いのかといえば、そうではない。寧ろこの感動ストーリーは多くの人に観て頂きたい。
物語が進む度に、こんな設定ならこうなるよね、まあこう来たらこうなるよね、まあ思った通りだね、割と普通かなぁ、こんなのどこで感動するんだろうと、我ながら嫌になるほど下衆な分析をしながら観てました。
なのに、物語が終わる頃には何故か涙が溢れる。
歳をとって、涙腺が緩くなってるのは否めないが、終盤の演出がズルい。あれは卑怯。
だが恐らく、そのシーンだけをいきなり見せられても何の感動も無いと思います。
割とありがちでありながら、この物語に説得力をつける上で欠かせない話の数々を記憶に紡いだ上で、この物語の締めとなるあの場面を見ると、もうダメ。
結局こうなるよねと、分かっていても涙が止まらない。
監督さんの演出が良いんでしょうね。監督さんの表現力に私は負けました。完敗です。
そんなお涙頂戴な演出になど負けない人も世の中には大勢居るでしょうが、私は言いたい。
俺は負けて良かったと。寧ろこんな演出に負ける人間であり続けたいと。


この先は、この作品を鑑賞済みの方向けのネタバレです。
{netabare}この作品は、ラストでエリアルが亡くなるシーンに全てが集約されていると思います。
物語の主人公であるマキアが長命種という設定であるから、人間であるエリアルが先に逝ってしまうのは最初から分かりきっています。それは物語の冒頭から呪われた種族という表現で伝えられています。
長命であるが故に、人と関われば親しくなった数だけ悲しみを経験してしまう。
心無い人々は彼らを化け物と呼ぶが、長命の種族である彼らには心があるからこそ、自分が常に残される側に立たされ、幾度となく悲しい思いをさせられる人生は呪われていると感じている。
それを理解出来ない者こそ化け物なのではないのか、という皮肉が込められています。

子育てには良い時もあれば悪い時もある。
可愛い盛りの頃などは特に、生きる為の糧を与えている側である親の方が、子供から多くの力を受け取っている。自分の生きる意味は子供の存在が全てと断言する人も居る。
良いお年頃な時には衝突もあれば分かりあえない時もある。この作品はファンタジーでありながら、人の感性や感覚、あらゆる感情が現実に沿っている。そういった部分から日常に重なる部分が多くあり、展開が読めてしまう。
この作品の凄いところは、そんなふうに物語がベタでバレバレな展開でも、エリアルの逝く場面では見る者の多くが心を強く大きく揺さぶられる所。思い出の数々が激流のように迫るあのシーン。どうにも他人事とは思えない。
マキアは当然堪えきれずに泣く。いつか約束をした、もう泣かないなんて決意など、その約束を結んだ本人であるエリアルを失った瞬間、花びらのように風に吹き飛ばされ、悲しみに覆われる。
この時、マキアの心情を痛いほど知る者が近くに一人居る。
そう、この物語を見てきたあなたです。
彼女がエリアルと積み重ねてきた思い出を知る身としては、もう他人事じゃない。
人の親となった人。
親や兄弟、又は友人や恋人を失ったことのある人。
日々生きる忙しさから、頭からほんの少し離れていたあなた自身の思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんだかもしれない。
私は色々と浮かびました。

これは良作。
と、レビューを書いた後に知ったのですが、これを創ったの[あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない]の脚本家さんなんですね。なんだか妙に納得しました。この監督さんは俺の涙腺の天敵やな。
{/netabare}

投稿 : 2021/06/24
閲覧 : 253
サンキュー:

6

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