Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「俺の、音――」
この作品の原作は未読です。
津軽三味線をテーマにするこの作品にまたしても心を奪われてしまいました。
私の日常やこれまでの歴史の中に津軽三味線など和楽器の入り込む余地はありませんでした。
それなのに、つい先日はお箏の音色に魅了され、今度は津軽三味線…
どれだけ身近にあるモノじゃなくても、楽器の音色は心に響くし揺さぶられることを改めて実感した気がします。
伝統的な腕を持つ、津軽三味線の奏者・澤村松吾郎。
彼を祖父に持つ少年・澤村 雪は、祖父の死をきっかけに、
車線を弾けなくなった…
なくなってしまった"好きな音"を探すため、
アテもなく上京する雪。
キャバクラで働く女性「立樹ユナ」に助けられた雪は、
ライブの前座として津軽三味線の演奏を披露することになる。
雪は、様々な出会いを、想いを三味線の音色にのせて弾く。
自分の音を、自分の想いを探し続けて――
公式HPのあらすじを引用させて頂きました。
これまで三味線に触れる機会が殆ど無かったので、私は三味線のことを殆ど何も知りません。
三味線は猫の皮を使うとばかり思っていましたが、津軽三味線には犬の皮が用いられるそうです。
そして楽器は一生モノというイメージがありましたが、三味線は消耗品なんだそうです(wikiより)。
数十万円もする楽器が消耗品だなんて…
買い換えるモノであるのが津軽三味線の常識とwikiには記載されていましたが、物語に登場した松吾郎の若かりし頃、三味線を消耗品と位置付けられるほど裕福ではありませんでした。
諸国を渡り歩き、今日の雨風を凌げる場所と僅かな食事のために三味線を弾き続けてきましたが、この現代ではきっとその音を再現することは出来ないと思いました。
全てが変わってしまったから…
現代の三味線奏者は、決して諸国を渡り歩きはしないでしょうし、三味線だって消耗品…
皮が破れていたり、切れた弦を結んでいたり、きっと今では三味線とは言えない代物なのかもしれませんが、それでも奏者の傍らに在り続けた三味線の音色には、きっと「人生」や「生命」といった奏者そのものが感じられたのかもしれません。
こうして松吾郎が紡ぎあげてきた音色が一つの完成形だとすると、雪が本当に何を目指すべきなのかで気持ちが揺れ動くのは痛いほど分かりました。
この作品の根幹でもあり主題でもある「目指すべき音」が定まっていないんです。
「求められている音」と「求めたい音」は違うと思いますが、本当に違うのかと問われると正直良く分かりません。
というか、最後の着地点は同じような気がしてならないんです。
「自分らしさ」を追求する…
「戦いでの勝利」を渇望する…
そして、なぜ悔しさを感じるのでしょう…
どうして「上手くなりたい」と思うのでしょう。
上手くなったその先に本当に答えはあるんでしょうか。
きっと悔しさの示す真意に気付かなければ、答えには辿り着けない様な気がしてなりません。
そして現時点の雪に気付きがあるかも正直分かりませんでした。
何故ならその前で物語が終幕してしまったから…
だから、今物凄くモヤモヤしています。
続編制作前提ならまだしも、現時点では何の音沙汰もありませんので。
ここで終わったら単なる原作の販促作品になってしまいますよ。
オープニングテーマは、BURNOUT SYNDROMESさんによる「BLIZZARD」と「銀世界」
エンディングテーマは、加藤ミリヤさんによる「この夢が醒めるまでfeat.吉田兄弟」
個人的にはエンディングが大のお気に入りでした。
1クール全12話の物語でした。
決着を付けなければならないのは雪だけじゃありません。
梅園学園の津軽三味線愛好会にだって、「やるべきこと」が明確になりました。
だから、これじゃ絶対に終われませんよね。
続編制作の発表を楽しみに待っています。