nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ある種の異世界転生もの。面白いが主人公とヒロインに物足りなさがあります。
今、異世界ものがアニメ界を席巻していますが、これもある種の「異世界もの」です。日本の大企業。日々、上司と取引先に頭を下げて、働いていれば命の危険もなく、給料をもらって暮らしている世界です。そして、日本人の常識では安全は法律と警察が守ってくれます。契約は書面があれば履行されるものだと思っています。
その日本のサラリーマンにとっては 当たり前の価値基準がある世界から、銃を持ち、人を疑い、欲望を飯のタネにしなければ生きて行けない異世界に転生してしまった主人公。人の命は地球より重いという価値観はここでは全く通用しません。
話の舞台は、おそらくちょっと昔のフィリピンのマニラあたりでしょうか。一応設定はタイということみたいですが。まあ、そんな東南アジアの犯罪都市ロアナプラです。
ただ、そこには、過酷な裏社会だからこそ、ルールがあり信義があります。ルールがあるから、金を稼ぐ手段もあれば、人との交流もあるし、喜びも楽しみもあります。単なるサラリーマンの主人公にも生きる道があります。
逆にそのルールから逸脱すれば、微妙なバランスの上にたった秩序が崩壊してしまいます。それゆえに、彼らは裏切りや異分子に対してはとことん苛烈になります。
全く違う価値観を持つ世界に適応しつつも、サラリーマンの根性を見せる主人公。異世界の住人に愛され、一目置かれる存在へと成長してゆきます。
ガンアクションや、かなりぶっ飛んだキャラクター達などが、時に痛快な、時に陰惨な事件を起こしながらも、すぐに日常に戻ってゆきます。
陽気であっけらかん、とも言えるし、虚無的で刹那的ともいえます。
ストーリーとしては、まあそういう感じでエピソードがいくつかあって、どれも面白く仕上がっています。
最後の日本にくる話。これが、日本的なヤクザ・チンピラと今まで見てきた舞台ロアナプラの対比が印象的です。伝統とか家とか、暗くて陰険、JKをネチネチいたぶるところなど、ロアナブラとは真逆です。最後、{netabare} ある意味では美しく散ってゆく時代から取り残された正統ヤクザの最期{/netabare}が、滑稽にも見えてきます。ロアナブラなら命が助かったなら大笑いして、すぐに日常に戻ることでしょう。なかなか面白い構成でした。
さて、欠点です。主人公の成長はいいんですけど、実は内面があまりみえません。いろいろ語ってはくれるんですけど、不思議と人物が見えてきません。レビィというヒロイン?もさらに性格も内面もほとんど見えないことで、少し感情移入がしづらく、深みが足りないという欠点があります。
そこがこの話がエンターテイメントとしては一流でも、アニメとしての完成度に物足りなさが残る原因になっています。
むしろバラライカの方が、人物造形ははっきりしていました。