遊微々 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
やりがい・評価・報酬
去年結構話題になってた印象の本作、ようやく目を通してみましたが、いやはやこれは面白い。
女子高生3人組が中心となってアニメの自主製作に勤しむ内容なんですが、主要キャラ3人それぞれに現実とリンクさせた役割を担わせているのが特に良かったですね。
まずは主人公の浅草。世界観の設定に異常な拘りを持つ姿が描かれていたように、彼女には表現者、クリエイターとしての側面を強く持たせていましたね。
特に構図や演出に拘るところや、現実と虚構の境界線で悩みぬく様子が印象的でしたが、これは作品を見ている我々のような視聴者でも似たような感覚ありますよね。彼女も多くの作品を見てきて、様々なインスピレーションを得てきたのでしょう。そのうえで、参考にしつつも自分ならもっとこうする!という欲求に駆り立てられているのだと思われます。
しかし実際表現するとなるとそうもいかない。納期や予算の都合でどうしても全てを描き切れないだとか、仮に自分の描きたいものを描いたとしても、大多数の人には理解されなかったりと、妥協点や客観性が問われる場面が多々あります。その中でもがく姿は実にそれらしかったですね。
2人目は水崎。浅草と同様クリエイターとしての側面も持っていましたが、同時に看板としての立場も担っていました。
アニメ映画などではありがちな有名俳優、女優、アイドルのキャスティング。それから人気コミックの実写化。漫画・アニメファンからは冷ややかな反応がされがちですが、作中で金森も言ってたようにまずは見てもらわないことからは始まりません。そのためにはそもそもアニメーションに興味がない人にも関心を向けてもらわないといけないので、こういった看板は必要になってきますよね。
ただ水崎が口にしていたように「作品を評価して欲しい」というのが当然制作側の本音で、こうした看板はあくまでも作品に目を通してもらうためのファクターでなければならず、作品の評価とは分けなければいけなというのが難しいところ。彼女も結構悩んだだろうなーと思います。
3人目は金森。上2人と違ってクリエイターとして作品に介入することはありませんでしたが、周囲への根回しやスケジュール調整等はほとんど彼女がやってくれていました。多分一番多忙だったと予想。彼女はマネジメントとしての役割でしたね。
特に金銭、というか報酬についてシビアな考え方を持っていたのが特徴的です。
今やジャパニメーションは、日本の映像産業において邦画やドラマを上回り世界で通用する分野であることは周知の事実。だというのに、日本におけるアニメーターの地位や労働環境はいまだ十分とは言えないくらい低いのが現状。
作中でも映像研の金銭授受に関してとやかく言われてましたが、それに対して意見を主張する彼女の姿は、今のアニメーション界に対する警鐘のようにも聞こえましたね。
アニメーション制作を題材にした作品だけあって、本作の作画やアニメーション演出も随所に拘りが見れて実に素晴らしかったです。原作は未読なんですが、多分普通に作ったら凡作にしかなりえないと思うんですよ今作。それをここまでの作品に昇華させてるのはやはり優秀なスタッフ、特に湯浅監督のセンスが大きいんでしょうね。四畳半とかもそうでしたが、湯浅監督の映像表現はやはり秀逸ですね。
非常に見ごたえある良作でした。