二足歩行したくない さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
そして、「Fate/stay night」につながる物語
虚淵玄の小説「Fate/Zero」の後半ワンクール。
同じufotableですが、サーバントの真名については軽く触れる程度だった「Fate/stay night」のUBW編、HF編に比較すると、英霊たちの正体、元となった逸話にスポットのあたった内容となっています。
英霊が限界し、万能の器を求めて争ったらこうなるのではという、サーバント分存在する神話の続編を読むような面白さがあります。
正直、魔術師とサーバントのバトルロワイヤル的な要素が全面に出た「Fate/stay night」のアニメ版よりも、Fateらしい作品と感じました。
前半ワンクールの直接の続編です。
キャスターが巨大な海魔を召喚し、隠密にことを済ますことが常の聖杯戦争において重大な問題として、教会が各陣営へキャスター討伐を命じる。
それに馳せ参じたセイバーとランサー、ライダーは海魔に挑みかかり、一方で物見遊山を決めているアーチャーにはバーサーカーが斬りかかるという展開です。
この時点で敗退したのはアサシンのみ、次のワンクールでサーバントが次々リタイアしていくのですが、各サーバントとも散り際見事で、見ごたえがありました。
アーチャーvsバーサーカーの空中戦は場面が激しく切り替わって息をつかせない展開をし、セイバーvsランサー戦では激しい怒りと慟哭を感じました。
セイバーvsバーサーカー戦は戦闘もすごかったですが、過去の因縁に起因する戦闘中に入り交じる感情が悲しみを誘いました。
アーチャーvsライダー戦はちょっとあっさりしすぎる幕切れな気がしましたが、宝具の"王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)"は猛々しく、迫力を感じます。
基本的に戦闘シーンの印象が強く、劇場版でもいいレベルのド迫力の戦闘シーンが繰り返されるワンクールでした。
原作を読んだのがずいぶん前なのでうろ覚えなところもあるのですが、原作準拠だったように思います。
原作は小説なので、アニメにすることでキャラクターの動きや状況がわかりやすい部分があります。
小説は小説の利点として、その部分を想像力で保管してストーリーの広がりを楽しめるところがあるため一長一短なところもありますが、バーサーカーの不気味さ、キャスターの残酷で非道な趣味などがアニメだとビジュアルで伝わるため、とても丁寧に作られたアニメだと感じました。
最初から最後まで中だるみなく、一話の無駄もなく詰め込まれているため、終始夢中で見ることができました。
サーバントが個性的で、英霊であることが前面に出ているので、「Fate/stay night」よりも娯楽性が高いですが、元が18禁エロゲーの「Fate/stay night」よりもラブコメ度は低いです。
主人公の衛宮切嗣からして、大勢を救うため少数を殺すことを厭わない男なので、切嗣の周囲に女性キャラは結構いるのですが、そういう展開は皆無と言っていいと思います。
「Fate/stay night」では正ヒロインのセイバーに至っては、自分のサーバントにも関わらず最後までシカトに近い扱いをします。
ラストはセイバーにとっては、なんのために召喚され、なんのために戦ったのか、答えの出ない問いかけの中に放り込まれて終わるような形になってしまったのが悲劇的でした。
本作は「Fate/stay night」につながる物語のため、「Fate/stay night」を知っている方はご存知の通り、良い結果で終わりません。
衛宮切嗣は、過去にある少女を殺せなかったことで、多くの人を死なせてしまったという過去を持っています。
そんな彼が最後に、取りうる最良の選択を行ったはずが、思わず大変な悲劇を起こしてしまい、そんな中で"衛宮士郎"という一縷の希望を探し当てます。
終盤まで、主人公であるはずの衛宮切嗣は本性が見えないのですが、確かに、本作は衛宮切嗣の物語なんだなと思いました。
そして、衛宮切嗣から、衛宮士郎へと物語の主役"正義の見方"であろうとする志をバトンタッチすることで物語が終幕する、そういった意味で、"Zero"に到達する物語であると思いました。
「Fate/stay night」を知っているかた、また、これから「Fate/stay night」をプレイする、あるいは視聴する方には是非見て欲しい作品です。