nyaro さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
キャラ萌えシリーズなのに、1作目ではキャラに萌えられない原作の欠点が…
「すべてがFになる」は理系ミステリと呼ばれ、原作は実際に名古屋大学の助教授が描いた推理小説でした。
理系っぽい感覚、会話・言葉遊びと、密室の謎に理系的要素が入り込んでいるのが特徴です。
その一方で、キャラ萌え要素が強く、大金持ちの女子大生の西之園の活躍と、探偵役犀川の解決が原作の人気の秘密でしょう。また、真賀田四季という天才も後々まで活躍し、スピンオフもありました。
さて、アニメ化されてみて。なるほどと思いました。殺人そのものは派手だし、女子大生がヒロインなのでビジュアル的にも見栄えがします。夏の孤島の研究所というシチュエーションとスケールの大きなトリックもなかなか映像向きです。
ただ結果的にこのアニメは失敗だったなあ、と思います。
このすべてがFになる、は新しい感覚の推理としては面白いのですが、さて、人物が描き切れているでしょうか。これは原作でも同じですが、西之園がわがままで感情的に描かれていていて、キャラとしての奥深さをあまり感じません。
実は西之園は原作では2作目以降では印象が違います。もう少し落ち着いて思慮深さが感じられます。
キャラ萌えシリーズなのに、キャラに萌えられない1作目のみをアニメ化したというのは、戦略的には失敗な気がします。
また、本来このシリーズは本当の天才ってどういう人だろうか、というテーマがあったように思います。原作3作目でいわゆる天才っぽい老人が出てくる話がありますが、犀川は彼と会ってがっかりします。それは天才だと思っていた人が、以外に想像の範囲内だった、という内容でした。それは真賀田四季の対比なわけです。
真賀田は本作の最後、自分を理解できる可能性をもった犀川にわざわざ合いに来るわけですが、ここが原作では本題というかクライマックスなのに、アニメでは尺伸ばしに見えなくもありません。実は原作でもそこは舌ったらずのところなのですが、アニメにして余計に目立ちました。
なので、原作ファンとして若干甘目につけても、アニメとしての出来は普通以上のものではないでしょう。続編も期待できないですかね。