ウェスタンガール さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
記憶のランドスケープ
我々は五感の全てを駆使して記憶を獲得する。
特に経験値の乏しい幼児期におけるそれは、喜怒哀楽に直結したものであり、正にその人の人格を形成する基礎、すなわち根源的な記憶となるのである。
カイバ、この物語が映す世界、その存在の在処を問うことには、大した意味は無いのだろう。
はるか未来の、朽ち果てた地球の姿かもしれないし、「はたらく細胞」よろしく、脳内を擬人化した寓話かもしれない。
ただ一つ言えることは、人間の記憶という存在は、個の中に内包された全体であり、一つの生命が役目を終えたなら、全体の中に吸収されていくという“連理的なもの”に違いないということだ。
さらに、種が持つ世代を超えた記憶が広がるその先には、宇宙を満たし、その存在を担保する生命の記憶ともいうべきものを思い描くのである。
手塚治虫の“火の鳥”の世界、コスモゾーンという訳だ。
人という存在が、感情の中枢である偏桃体を司令塔に、短期記憶と長期記憶を振り分ける海馬の機能を辺縁にして、大脳皮質という人格を形成しているとするなら、その機能不全である心の病やサバン症候群と言った、人格のゆらぎとでもいうべき、心の神秘に仮託されたキャラたちに共感を覚えることは自然で、この物語が、善悪といった単純な問題を扱っているわけではないことは確かなはずだ。
若干チープなお話は脇に置き、その映像スタイルは、海馬の形状そのままにバンド・デシネ、“描かれた帯”そのものである。
伊東伸高氏が描き出す個性的なキャラクターは、まさに流れるように、そして世界を俯瞰しながらクライマックスへ導かれてゆくのである。
OPとEDを歌う加賀美セイラさん。
とても良い声をされた方だ。
調べてみたら、結婚情報誌ゼ〇シィのCM、パパパパ~ン♪のモデルさんでありました。