2010sw さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:今観てる
カブ愛に溢れてゐる
昔オートバイ乗りだった。古いのばかり何台も所有。キャブレターという部品がついていた時代。だから細かい構造はよくわかる。そしてこの作品はとてもよく描けている。車輪の針金はスポークといって、本数はもちろん組み方がある。それも正確。モブと言える駐輪場の自転車さえも同じく。背景も素晴らしい。
人の脳は、普段視覚情報に95%の情報処理能力を使うという。集中するときに机の上を片付けるのも脳の負担を軽くすることで効果が上がる。で、この細かいところまでの描写は、それがわからなくても脳に刺激を与え世界観を構築していると思う。きっといつかオートバイに乗ったときに、観た事あると思い出すような・・オートバイや自転車は線が一杯あって描くのが難しい。3Dモデルだからというのもあるがそのモデルも作るのは大変だ。
そこまで要求されてるのか?ってことは関係ない。ただあるのはカブ愛だ。カブ愛はマシンそのものだけでなく、乗る人も、周りの人もみんな含めてのカブ愛。おそらくは工数も予算も厳しいと思うが愛の力で作られているのだと思う。キャラを描くまなざしの心地よさ。観てて気持ちがいい。
カブなんて馬力ないし、配達のバイクじゃんとバカにする人もいるだろう。でも全世界で一億台も売れたことには意味がある。昔、福島県の多々石林道をMTBで越えた事がある。極悪路・・って既に道とは言えないところだ。角のとがったポリタンくらいある岩石がゴロゴロしていてまともに走れない。そこをサポート部隊のスーパーカブが走破した。途中最新のオフロードバイクをぶち抜いてきたという。カブって悪路に強いんだぜとライダー氏。多々石林道は今はYoutubeなどで動画があがってるので観るとどんなトコか判る。
カブのその強さは何処からくるかと言うと・・自分はそのカブを作っている会社の別部門で働いてたんだが、こんな話がある。新人の設計屋にテストライダーが文句を言いに来た。スクーターが70度傾くとエンジンが止まる。貴様が設計したのか?治せ!と。新人はそんなバカな乗り方するやつは居ないからコレでいいと突き放す。しかし、じゃあ来いとテストコースに連れて行かれ・・テストライダー全員で70度のウィリーをやって見せられたという。コレが出来なきゃウチの伝統は守れないんだと。もちろん仕様書にもそんな要求は無い。しかし山で岩石に阻まれてバイクが突っ立ってしまってもエンジンが止まれなければ押して乗り越える事が出来るわけだ。こうして世界の極悪路でも無類の強さを誇るマシンが設計される。新人君・・スイマセンでした・・と・・判ればいい。頼むよとテストライダーは去っていったという・・
ハンドウォーマーの件。ハンドルに付ける袋。自分もあれだけは・・
と思っていた。しかし、あるときホムセンで980円の安売り品を見つけ・・付けてみたら・・2度と戻れなくなってしまった。それは一部が透明になっていてウィンカースィッチとか目視確認できるようになっている。防水仕様でもあった・・ペダルを漕ぐ事の無いオートバイは冬は冷える。特に指が死ぬ。どんな手袋を付けてもダメだったのがハンドウォーマーひとつで快適空間に早代わりだった。手袋も薄くていいのでレバーの操作性も良かったのだ。しかし付けたのはカブではなくスポーツバイク。いわゆるセパハンにハンドウォーマー・・レーシーなイメージが台無しのしかし快適すぎる悪魔のアイテムであった。もうン十年も前のそんな話を、まったり思い出した。
ほんとホッコリするよ。スタッフのみなさん、ありがとう!!