nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
眺めているのが良い映画もある。不思議な気分になります。
夏になると見たくなる映画の1つです。世間の評判は悪いのは知っていますし、その理由もドラマとの差とか、声優とか、歌とか、意味不明とかそれぞれの意見は分かります。
が、私すっごい好きなんですよね。この作品。不思議な感覚になって何となくトリップします。下のレビューはちょっと否定派に反論の意味で考察したりしましたけど今はどうでもいい感じです。好きな人は好きだし、嫌いな人は嫌いなのが(中間も無関心も含めて)アニメ作品なので、少なくとも私は大好きな映画の一つです。もちろんEDの「打上花火」は素晴らしいですし。
でまあ、レビューです。
エロい女子中学生が桜色のツヤツヤお肌を思いっきり出して、しかもスク水で寝そべったり、安定のシャフト感でしたね。ナズナは化物語シリーズに出てきても全然違和感はありません。
さて、本作はタイムリープものなんでしょう…か?なぜ疑問形かというと話の後半、要するに花火が平らの世界になったところから、架空の世界と見る事ができるからです。実際平らな花火は文字などの特殊技術の花火ではあるみたいですが、尺玉は普通は球形に広がります。
そうなると、1回目にナズナが母親に捕まってガラス玉を投げてリープが起きた次の段階でもうユウスケは花火は平だ、と言っているし、映像も平らな花火になっていました。
駅名が茂下と書いて「もしも」ですからね。駅そのものも架空かもしれません。
最後の方でガラス玉を打ち上げるシーンがありましたが、あそこはもう完全にファンタジー世界に入っていました。つまり、現実とファンタジーのシームレスな連続性に幻惑されるところにこの映画の面白さがあるんだと思います。
冒頭のワンシーン。スク水のナズナとノリミチのカットがあります。ここはその後の話には出てきません。そして最後のナズナの「次会えるのどんな世界かなあ」というセリフとあわせると何度も幻想の世界を、行き来しているのでしょうか。
本作、始めて見たとき、ナズナがユウスケを誘うシーンがあることで、どっちつかずか?と思いました。ですが、ホースで水をかけるシーンのナズナの表情がユウスケとノリミチで全然違いますね。さすがの演出力で本作はそういう細かいところに仕掛けがあって、十分計算されているんだろうなあと思います。
で、ナズナがユウスケを選んだ回は、自分の選択を運にまかせて、その結果に従って進んだんでしょう。だからユウスケに対する「好き」という言葉が軽くでてきたんだと思います。
最後、ナズナの名前がないのは、存在しないからではなく転校したんでしょう。ノリミチがいないのは東京に合いに行ったとも取れます。ナズナが咲いているので春なんでしょうか。
というのは、巨大なガラス玉が砕け、それぞれのIFが降り注いだ時、ノリミチだけがナズナとお台場みたいなところでキスしているシーンをつかみ取っていました。つまり、実現するのはそのイメージで東京まで会いに行ったということかなあ、と取れます。
が、ナズナの父親が溺死していたとき、ガラス玉持ってましたね。駆け落ちの結果死んでしまうというのは、ノリミチにとって悪い暗示の気もしました。が、どうなんでしょう?ナズナの母と共通の一族の浮気性の呪いだったりして。
父親からナズナへのギフトだととることもできます。夏の海の不思議ともとることができます。
あるいは松田聖子さんの歌をなぜ歌うか?です。もちろん歌詞に灯台のイメージがあるし、ガラスの海という本作に近いイメージがあるからだとは思いますが、聖子さんは恋多い女で、しかもお母さんが歌っている…ですからね。ちょっと不穏な感じもあります。
まあ、考察しようと思えばいくらでもできるんですけど、本作ってそういう非現実感の中、中学生という思春期の初めの幼い恋物語を感じ取れればいいんだと思います。
美しい海の風景と花火の情景、幻想的な電車の映像が非常に感傷的な気分にさせてくれました。そして最後のガラスと灯台ですね。まあ、それでいいでしょう。ハッピーエンドでもなく、バッドエンドでもなく、想像にお任せします、ということで。
ちなみにナズナの花言葉は「あなたに私のすべてを捧げます」だそうです。
21年6月に書いたレビューを23年7月に書き換えています。以前ハッピーエンドだろうという考察をしましたが、今回改めてじっくり見ているうちにどうでもよくなりました。「眺めているのがいい」という映画があってもいいかなあと思います。
繰り返し視聴している映画なので、5にします。世間の評判は悲しいですが、映画は嗜好品なので仕方ありません。