ウェスタンガール さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
自己言及のパラドックス
AIが人類を滅ぼす。
ために、AIであるVivy自身が学習し、シンギュラリティポイントを越え、それを阻止しようとする物語である。
9話までの展開、その余りにも冗長なストーリーに嫌気が差していたのである。
そして、第10話である。
{netabare}まさに“2001年宇宙の旅”で暴走したHAL9000を思い起こさせる設定だ。
クラークは、二律背反な命令により、乗組員を排除しようとするAI、その極めて“人間的”な姿を、不気味の谷を越えた、その先にあるかもしれない悲劇を描いたのである。
情報システムは本来、バックアップを置くことでシステムの暴走を防ぐ。
いわゆる冗長化プロトコルであり、ロボット工学で言えば、アシモフが唱えた三原則であろう。
しかし、人工知能として完璧を目指すチャレンジャー博士が創り出したHALは、まさに発見的(Heuristic)アルゴリズム(ALgorithmic)、成長する子供の心であり、パラドックスの中で苦しむのである。
哲学的な2001年も、もちろん大好きだが、創造主のチャレンジャー博士と、その子であるHALの物語、存在を越えた愛があふれる2010年から得られる感動も格別であった。
Vivyにおいては、使命に忠実な下位互換、冗長化された存在のディーヴァがバックアップであり、ヴィヴィがHAL的存在として描かれているようだ。
2001年、ボーマン船長により知能モジュールを引き抜かれてゆくHALが歌う“デイジー・ベル”、その悲しい響きと重なるVivyのエンディングテーマ、そして10話のエンディングである。{/netabare}
希望的観測である。
彼女が歌うであろう“その歌”によって、フローライトの力そのままに、パラドックスが調整され、「歌で人を幸せにする」という真の目的が遂げられんことを願うばかりだ。
そして…、
{netabare}壮大な予定調和、その締めくくりに述べられる感謝の言葉と大量虐殺がもたらす当然の帰結。
A.I.の新たなる旅立ち、そこには、もしかすると宗教的なもの、言い換えれば不確実性を“凌ぐ力”が備わったはずであり、ヴィヴィの歌声を待ち望む聴衆の首のははきっとあの点滅が…。
ラララ~ラララ、ラララ、ラララ~♪
A.I.たちの讃美歌が響き渡る。{/netabare}
┐(´∀`)┌ヤレヤレ
「貴方は今まで、一体何を見てきたのですか」
マツモトの嘆息が聞こえてきそうなので、ここは伏せずに平文で。
これは、発展的アルゴリズム(HAL)を持つ、スタンドアローン型A.I.であるVIVYが、彼女のシスターズそれぞれの想いをシンギュラリティポイントに、心を獲得してゆく100年の旅路なのだ。