「NEEDLESS ニードレス(TVアニメ動画)」

総合得点
62.0
感想・評価
232
棚に入れた
1639
ランキング
5115
★★★★☆ 3.5 (232)
物語
3.4
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

品はないけど根は真面目。意外と正統派な異能力バトル

「ONE PIECE」や「ジョジョの奇妙な冒険」などが人気を博す能力バトル漫画。かの作品らを前にして、同ジャンルが各々オリジナリティーを出すことは当時もかなり難しかった筈だ。
先ず主人公にどんな能力を1つだけ持たせるのか。その能力に物語の完結まで使い続けられるような発展性があるのか。もちろん他作品と被らない斬新さも必要だ……禿げ上がる程に悩んだ挙げ句に筆を置いた作家もいるだろう中、このアニメの原作者は主人公に反則級の能力を与えて10年間連載していた。

【ココが面白い:ラスボスのような主人公、CVは子安武人!】
主人公の能力は『ZERO』と言う。文字通り物語の一番最初は無能力者だが、なんと相手の能力を覚えて永続的に自分の物にしてしまうという“ぼくのかんがえたさいきょうののうりょくしゃ”を体現したかのような能力だ。この能力で、バトル物では強者の部類に入ることが多い『斬糸』使いを第1話で撃破している。
まるで小学生が考えたような能力設定だが、理にかなっている部分として主人公が難なくバトルのインフレについていけるテンポの良さや勢いがある。なんたって覚えた能力は消えることなくどんどん増えていき、相手が使った強力な技をそっくりそのまま打ち出せる他、違う能力を組み合わせて新しい技を生み出すのだから修行パートなんて入れる必要が無い。雑に能力者と戦うだけでその相手の能力というデカい経験値を得て2・3段飛ばしに強くなっていく。
かといって常に「相手の能力を奪って撃破」という単純なものばかりを描いてはいない。
{netabare}例えば『香』の能力者は相手の神経を操る芳香の種類を無限に作り出すことができるので、その香りだけを1つ2つ覚えても対応しきれない。『第四波動』は見かけ上は炎と氷を両方操る能力にしか見えず、そのメカニズムを理解できてない劇中は使うことができなかった。{/netabare}
チート級な『ZERO』にも使うプロセスや弱点があり、そこを突かれたピンチシーンなども押さえたプロの漫画家の匠も確かに感じ取ることができる。
敵の能力を奪うというジャイアニズム溢るる能力に引っ張られてか、主人公であるアダム・ブレイドは無茶苦茶をやる乱暴者。そしてロリコン。その声を普段は悪役やマッドサイエンティストを演じる子安武人が担当するのだから、主人公という役割とは裏腹にラスボス感とその傍若無人ぶり、そして変態度が増々である。
「子安武人が主人公声優です」という触れ込みだけで吹き出してしまう人もいるのではないだろうか(笑) 色々な意味でズルいキャラクターに仕上がっている。

【でもココがつまらない?:ありきたりな設定、厚みのないストーリー】
主人公・ブレイドは色々と特別なのだが、他の能力者が敵味方ひっくるめてまあベタな能力ばかりだ。
『第四波動』や『黒の引力』など本作で初めて聞くのもあるにはあるが、大抵は炎(上位互換に電子レンジ)に重力、磁力、高速移動、バカ力といった異能力モノのド定番を何の捻りも加えずにレギュラーキャラとしてドンドン起用している。特に『炎』で拳と言ったら知名度的に「ONE PIECE」の火拳のエースが頭をよぎるし『変身』で身体を自在に変化させるヒロインで名前がイヴ──とくれば「BLACK CAT」に同じ名前・能力・役割のキャラクターがいるという始末である。パクり疑惑をかけたいわけではなく、要は誰かと被ってしまうくらいにはキャラクターの練りこみに時間をかけてはいない、ということだ。
その上で「ONE PIECE」の海洋冒険ロマンや「僕のヒーローアカデミア」のヒーロースピリッツを育む学園モノといった副次的なテーマを持たず、専ら能力者によるバトルアクションに終始しているのは流石に単純さが過ぎる。
{netabare}
9話で敵勢力のアジトに主人公らがかちこみ、巨大な子供部屋を模したシェルターで連戦が行われるのだが、このバトルフィールドがまさか19話までの長いお付き合いになるとは初見では絶対思わないだろう(笑) 変わり映えしない背景に嫌気が差す人も出てしまうのではないだろうか。{/netabare}

【でもココが面白い!:シリアスはギャグの前触れ、敵も味方もおパンツ要員!?】
まあ流石に「バトルしてるだけ」と言うのは語弊がある。本作はバトル中でもシリアスな雰囲気でも遠慮なくねじ込まれる“ギャグ”と“パンチラ”も他作品との差別化点と言ってもいい。
とくに作中で対峙する少女部隊のスカートは「我々は本来、鉄壁と呼ばれる代物ではないのだよ」と主張しているかのようによく捲れるし、ブレイドの相棒であるイヴは只でさえ露出度が高い服が敵の攻撃で破かれて裸同然の姿にもなる──と結構、扇情的。あまり乱発されると次第に股間には来なくなるが、それでもギャグとして成立させているので楽しめる人は最後まで楽しめてしまう。
ギャグは抱腹絶倒とまでは中々いかないが、「銀魂」のような攻めたパロディを使わず言葉もじりや言い間違いで笑いを取りにいく姿勢は評価できる。それ故に「右の頬を殴られたら左の頬にパイルドライバー」などシュールなものも出てくるが……(汗

【他キャラ評】
クルス・シルト
典型的な弱者で守られる存在である一方、頭脳面で活躍するもう一人の主人公的な描かれ方をしている。パッと見ではわからないミッシングリンク級の能力も看破するのでディスクの『分析』こそ不必要な感じがしてしまう(笑)
故にクルスの活躍時はブレイドの不在が多く、割と普通の能力者バトルにグレードダウンしてしまうことが残念でもある。
{netabare}最終話は強引な妙案であるものの、原作と違って最後まで無能力者の頭脳サポーターとしての位置を崩さず決め手の立役者となったことに好感が持てた。原作では『女神の盾』の能力者になってしまったからね、終盤の終盤とはいえ、アレは割と台無し感もご都合感もすごい{/netabare}

照山、セト、ソルヴァ
ぶっちゃけ只の戦闘員。左から『炎』『重力』『特殊磁界(鉄じゃなくても吸い寄せる磁力)』の能力者であり、その能力をブレイドに覚えさせるためだけに登場したようなもの。
恐らくこの3枠は能力やキャラそのものが別になってもバトルの細部が変わるだけで話の本筋には影響が及ばないだろう。例えば照山が電気の能力者ならブレイドは斬糸と電気で戦うキャラに変わるだけで誰かを倒せなくなるみたいな話の支障は出ないんじゃないかと思う。炎の能力は四天王から覚えられるしな(笑)

セツナ、梔、未央
原作者もアニメスタッフもこの3人好きすぎるだろ! 作画も出番もかなり優遇されていて、なんと言っても前期エンディングで強烈なインパクトを毎話与えてくる。題材は普遍なのに人を選ぶ作品になってしまってるのは間違いなく彼女らのせいだ!
でも確かにずっと観てると敵側なのに少女部隊の面々は好きになってくる。梔のスケッチブックに何が書かれてるか気になってしまう。無口のカンペ芸はアニメーションと相性が悪いがその分動きが面白くなるので嫌いじゃない。

左天
{netabare}原作とアニメで正体が変わってしまったキャラだが、自分はアニメ版の方が整合性が取れていていいと思う。「ブレイドとアークライトの同士討ちを狙っていたから劣勢のブレイドたちを陰ながら味方した」。非常にシンプルにまとまっている。
原作ファンなら改変自体が言語道断な人も多数いるだろうが、本作に限っては正体をまさかの神無月鏡司に変え香澄への恋慕を足してあげることでファンを驚かしつつ、本来はたどり着けなかった筈の原作終盤にも寄せてきたのは原作者の「悪い所はどんどん直してくれ」というメッセージに応えた証であることには間違いない。{/netabare}

【総評:品はないけど根は真面目。意外と正統派な異能力バトル】
一言で言ってしまえば“低俗”。女の子と変態、ボケとツッコミを足してカオスに仕上げた笑いあり涙なしのハイテンションバトルアニメでしかなく、重厚なテーマやメッセージは一切、感じられない。
だがそれが従来のマンガやアニメの親しみやすさを感じてどこか惹かれる。
能力設定だけみればある種「ONE PIECE」の悪魔の実や「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドよりも正統的であり、掲載誌さえ違えば上記2作品のようなメジャーなマンガにもなり得たと思う。後手に回ってしまったことでその殆どに“ありきたり”という烙印を押さざるを得ないが、技と能力を覚える主人公だけはこの作品のオリジナルだ。
異能力バトルは主人公含む1人につき1つの能力に縛ってしまうことでいつかは無理が祟り、新しくご都合な追加能力を与えがちである。そんなジャンルの中で敢えて最初からズルい能力を与えることで、クリエイティブな中学生の理想のマンガをプロが実現させたかのような自由奔放さと中々に高いクオリティを感じる一作となっている。
そんなマンガのアニメ化であるが、アニメーションの出来としては可もなく不可もない。良さも悪さも原作が持ち得る強み弱みであってそこをカバーしてるのはシナリオとしての整合性くらい。普通にそこそこ作画崩壊も起こすし、およそ単行本3巻となる少女部隊~シメオン四天王との連戦を巧くカットしてくれた訳でもない。誉めるべきは原作漫画1~7巻の範囲だけでなくスピンオフである『NEEDLESS ZERO』と『NEEDLESS ZERO TWO』の話も組み込んで原作ファン垂涎物の2クールとなったこと、主要なキャラクターはアニオタなら1度は演技を耳にする豪華声優陣で固めていることの2点が挙げられるだろう。
「なら名作アニメには遠く及ばないでしょ?」だって?
バカめ!!人は名作アニメのみに生きるにあらず!!例えば!彼女とか!お姉さまとか!!あァと特に妹が出る作品とかァァァ!!!

投稿 : 2021/06/02
閲覧 : 395
サンキュー:

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