nyaro さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
エンタメとしては最高。だが、何を考察しましょうか?
攻殻機動隊SACは、当初の超ハードオタクSF原作や劇場版から脱却して未来警察エンタメものとして、本当に面白かったですね。ただ、AIの個性のような話はあったものの、ネット社会の集合的無意識という問題をかなり薄めました。
本作は、さらにその傾向を強め、管理社会とかネット社会とかの設定と、サイバーパンク風な演出、ドーミネターというギミック、緻密なストーリーでエンターテイメントとして最高に面白い作品に仕上げています。
さて、本作の最大の不満です。正当なやり方で色相が濁らない常森VSチートで色相に変化がない槙島。この2人のWHYが提示されません。
なぜ、このテーマが浮き彫りにならないか。
{netabare} それは免罪体質者がシビュラシステムを構成する理由の説明がありません。「深淵な人間の本質を示す犯罪係数の特定するためには、より高度な思考力と判断力が必要」「善悪という相対的価値観の排斥」「普遍的価値基準」という理由ですが、これ、理由になってません。
犯罪係数とは何か?計算ロジックも統計的な裏付けもないなら、どうやって係数の定義をしたの?定義できるならAIのほうがこういうのは得意ですよね。じゃあ、絶対的価値基準は何でできているの?感覚?恣意?
また、逆にシビュラで定義できない免罪体質を選ぶ理由って何?絶対的価値基準をもっているのがシビュラなんでしょ?ここ、トートロジーになってません?説明している振りをして、雰囲気だけじゃありませんか、と思ってしまいます。だから、シビュラシステムの存在に説得力がまったくないと感じます。{/netabare}
だから、常森というキャラの内面に迫れません。社会の本当の問題が提起できません。なぜ常森は健全かが説明できない理由。それは犯罪係数やシビュラシステムとは何かがちゃんと説明できていないからです。
単に今後到来するAI社会における管理の問題、自分で判断できなきゃだめだよ、みたいなところが落としどころだとしたら、最重要な「犯罪係数とは」という話は不要です。かといって、足きり基準による管理社会の、異端者の天才性、有用性の切り捨て、みたいなテーマもあまり感じられません。
要は未来的なギミックで演出した刑事もの=ヒューマンドラマなんだと思います。
常森は可愛いです。