nyaro さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
攻殻・エヴァからまどマギのテーマまで網羅したSFアニメ
歴史的な名作として時を超えて見られるだけはあります。日本的サイバーSFの頂点ともいえます。
人がネットワーク的に繋がった世界で無意識が統合されて生まれた存在とは?がテーマとなります。つまり、ユング心理学でいう集合的無意識の話となります(作中で明言しています)。
加えて、人の記憶、時間の繰り返し。虚構の家族や社会、自分とは何かを問われる恐怖、また、存在の不確実性、神とは何かなど様々な要素がでてきます。
そういったものが、多少暗示的だったり、言葉を飾ったり、物語に載せるために謎かけ的ではありますが、明快にストーリーで解説されています。
ヒロインのレインは、かなりおとなしい子でちょっと奥手な女の子として描かれていますが、ある日自分と似たような子がどこか別の場所に現れた、ということから話が動き出します。
このレイン自身が自分というものが誰なのか、何なのかを探ってゆく話になります。
結論としては、レインという存在は人々の太古の聖母のような、いわゆる元型です(作中では悪にもなります)。元型とは世界中の言語や種族を問わず共通して持つ普遍的なイメージを指します。この集合的無意識や元型が攻殻機動隊の人形使いや、オリジナル無き模倣犯などのテーマです。
エヴァの人類補完計画もこの発想でしょう。サイコパスもこの要素ありましたね。社会全体ではないですが。 {netabare} また、自分の暴走で世間を不幸にした落とし前として、人類の記憶を巻き戻し、自分という存在を消してしまうところなどはまどマギです。{/netabare}その他さまざまなSFアニメの要素を見ることができます。
別にどれがオリジナルと考える必要はありません。優秀なアニメのクリエーターというのはこういう勉強をしていて、必ず考察すべきテーマを入れてきますので、かなりの割合で主題やプロットは重複します。どれが真似とかいうのは不毛だと思います。
この作品の凄いところは、難解で説明不足な作品を作って、ほら、名作でしょ?考えるでしょ?というところがなく、それを1クール13話でかなり明確に問題を整理し、考えるべきポイントが分かりやすいのでストレスがなく見られることです。
むしろ、この物語で分かりずらいのは、作中のネットワーク空間とは、今のVRMMOやSNSではないことです。時代的にはウィンドウズ95的なインターネットという言葉が出始めで、チャットの進化版のようなイメージ。その世界に入るには、ハードウエアの知識やスペック、ネットワーク技術などが必要で、アナログの音声信号をモデムを経由してデジタル変換して回線をつなぐような時代の話です。
サイバーパンクというか電脳空間というか、漠然とした電子的情報的つながりに初めて人々が触れたころの分からない故の不安と恐怖の話です。
あの液体ゴボゴボのコンピュータも液体炭素の冷却システムといってました(87クロッカーズ的なもの?)。始めは扇風機で冷やしてましたが、これは今でもやります。
アニメ的にいっても、その不安や恐怖を画像でうまく表現し、なんといいますか90年代のバブル後のJC・JKが性的で淫靡な存在になったころの雰囲気を出しています。今みると中学生が大人すぎるだろう、という感じですが、当時はこんな感じだったようです。
キャラのデザイン、特にレインは素晴らしく、可愛いのはもちろんですが、表情の変化や服装の変化を楽しめます。目の表情が特に素晴らしいです。
音楽も無駄に使っていないので、アニメに集中しやすいです。
モブ声優の素人臭いところも、虚構めいて、いい味をだしています。
アニメを見る時の基礎知識として、この集合的無意識は結構いろんな人が使ってくるので、簡単でいいのでユングを勉強しておくと、ニヤリとしながらドヤ顔ができます。私は攻殻機動隊のときに調べました。