101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
挫折すらドラマとして蓄積し末脚を爆発させた感動作
【物語 5.0点】
題材はトウカイテイオーの競走生活。
伝説多数の好素材だが、
度重なる怪我、長い休養、リハビリ期間による、
退屈、暗鬱をどう乗り越えて脚本するのか?
しかも海外馬の使用許諾を得ていない『ウマ娘』じゃ
{netabare}ジャパンカップでの"一度目の奇跡”{/netabare}など再現不可能なシーンもある。
不安もあった視聴前でしたが、
いざゲートが開いたら、故障で頓挫した夢への向き合い方など、
ウマ娘模様を、レースに匹敵するドラマに仕立てる、
抜群の手応えで第1コーナーを回って来る。
その後の葛藤シーンでも、小物を使った心情演出等がグッド。
私にとって、本作は{netabare}ストップウォッチ{/netabare}を見る度に思い出す作品になりそうです。
史実に基き、未来方向へのifも展開した1期に対して、
2期は、歴史の裏に、こんなウマ娘関係があれば熱いかも
という絡みのifを充実させることでドラマ性を強化。
{netabare}オールカマーでのツインターボ、一世一代の大逃げを、
主人公が三度立ち上がるためのカンフル剤に使うとは。{/netabare}
あれには見事にヤラレました(泣)
リハビリをも長所に好転させる盤石のシナリオの上ならば、
中盤のライスシャワーや、BNWといったテイオーの次の世代の回も、
苦し紛れの脱線ではなく、物語を分厚くする補強になる。
競馬にハマっている時というのは、
例え古馬戦線で思うようなマッチアップが実現しなくても、
次のクラシック世代が同時並行で続々台頭して来て、
古馬との対戦という新たな楽しみにワクワクして……。
本作の中盤には、その時の無限ループ感も思い出す心地良さがありました。
そして、日本競馬史上屈指の名レースを再現した最終回。
史実に依存するだけでなく、
良質なドラマとして再構築された伝説に酔い痴れましょう♪
【作画 4.0点】
アニメーション制作・スタジオKAI(1期・P.A.WORKSは各話制作協力に回る)
ソース総量は標準レベル。
が、走りにかける入れ込み具合は風を切るエフェクト等含めて半端じゃなく、
本作でも個性出しのため、複数のフォームパターンを用意。
その上で、テイオーについては、"テイオーステップ”に基づいた、
しなやかな走りをさらに追求し、躍動感溢れるレースシーンを構築。
因みに私のお気に入りは腰高なメジロパーマーの爆逃げフォーム。
今回はウイニングライブ設定は控え目で競走に集中するのか?
それはそれで良い傾向……と油断していたら、
クライマックスのライブシーンは、近年の二次元アイドルの中でも屈指の出来映え♪
それにしても……{netabare}あのウインク、投げキッス。ナイスネイチャさんトップアイドル過ぎます♪{/netabare}
【キャラ 4.5点】
主役トウカイテイオーとライバルを超えたカップリングを形成したメジロマックイーン。
名門メジロ家設定が今は無きスタミナ王国・メジロ軍団の栄光も想起させる華やかさ。
レースで目立ったのは逃げ馬娘たちの潔さ。
玉砕覚悟のターボエンジン全開で爆逃げするツインターボ。
共倒れリスクも厭わずダイタクヘリオスと一緒に爆逃げして乱ペースを演出するメジロパーマー。
個性的な逃げがレース展開の明確化に寄与。"逃げ切りシスターズ”候補生の層は厚いです♪
モブ関連では、あのウマ娘はもう終わった。偉業達成に水を差したヒールだ。
当時を美化するだけでなく、嫌なゴジップ、空気感の再現にまで踏み込んだのも〇。
影は濃いほど、感動は際立ちます。
本作でも隅々まで多彩な競馬ネタが詰まっておりニヤリと出来ます。
エアグルーヴのフラッシュに対するリアクションを目撃した皆さん。
パドックではフラッシュ撮影はしないよう重ねてお願い申し上げます。
【声優 4.0点】
トウカイテイオー役のMachicoさん。
朗らかなボクっ娘ボイスを不調時も崩さない。
キャラに合わせた脚本・演出による所も大きいが、
明るさの中の切なさを表現できている。
キャラを崩さずに心情描写するという点では、
ライバル・メジロマックイーン役の大西 沙織さんのお嬢様ボイスも同様。
終盤の{netabare}泣き演技{/netabare}も力が入っていました。
実況・赤坂美聡役の明坂 聡美さん。
ゲストの細江 純子さんの解説も交えた、明瞭なアナウンスが、
今回も史実にあった名フレーズを回収してレースを盛り上げる。
{netabare}「トウカイテイオーが来た!?」{/netabare}
の実況も、驚きが入り混じった異様さを良く再現できていたと思います。
【音楽 4.0点】
劇伴は明快な打ち込みサウンドやファンファーレで、レースや日常を彩る堅実な仕事ぶり。
主題歌、挿入歌はウマ娘たちによるキャラソンで、OPはチームスピカの面々による「ユメヲカケル!」
EDはテイオー&マックイーンによるバラード「木漏れ日のエール」
いずれも再起を賭けるテイオーの物語ともマッチした良曲。
個々のキャラを意識したパート分けも良好で、
12話では{netabare}EDの挫折を噛み締める歌詞をテイオーからマックイーンにパートチェンジする{/netabare}など、芸が細かい。
【付記】
ギャンブルでもある競馬は、余程のアイドルホースでもいない限り、
テレビのスポーツコーナー等でも隅に追いやられる。
肩身が狭い競馬ファンは必然ネット、SNSでは
毎週トレンド入りする勢いで発散することになるが、
『ウマ娘』2期&アプリリリース以降は、新たなファンも巻き込んで、
G1レース週ともなれば、Lynnさんがウマ娘で演じた
マルゼンスキーの血統を持つ馬を含む万馬券をゲットしたことが話題になるなど
盛り上がりの熱量が一層、凄いことになっています♪
私もコンテンツ立ち上げ当初、何でも女体化しやがって
と白眼視していたので言えた口でもありませんが、
これ程、競馬界の発展にも貢献しているのですから、
『ウマ娘』認めていないと噂されている馬主さんも、
そろそろ持ち馬の使用許諾して頂けないでしょうか?
3期があるとしたら無難に、権利関係の制約が少ない
スピンオフコミック『~シンデレラグレイ』(オグリキャップ)のアニメ化辺りでしょうが、
私はウオッカVSダイワスカーレットやキタサンブラックVSサトノダイヤモンドも、
脇役含めて当たり前にアニメ化再現できる状況を切望致します。