7でもない さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
小熊さんの灰色な世界
・小熊さんの世界
・漫画っぽい主線
・カブの丁寧な描写
・ざらざらした感じ
・ツーリングの果て
・小熊さんの世界
小熊さんから見た世界は灰色だ。何も面白くないし、楽しくない。自分と関係ない。静寂で停滞した世界。とても静か。そもそも彼女は自分の事すらどうでも良いと思っていそうだ。最低限の服装、最低限の食事。昼ご飯はレトルトをご飯にかけるだけ。眠たそうな目(たれ目)、諦めたような表情で時間が経つのを待っているだけの日々。そんな中、彼女は原付を手に入れ、クラスメートにつき纏わられる。うるさいなあ。めんどくさいなあ。そう思ったのに違いない。でもスーパーカブを手に入れて仲間を得て彼女の行動半径は飛躍的に広がり、彼女の興味も広がる。交友関係が増え、アルバイトを始め、行った事無いお店、入った事無いカフェ(と無料コーヒー)。行った事無い学校、行った事ない県、見た事ない景色をみて巡る。もちろんカブは良い事だけじゃない。めんどくさい事も一杯。装備とかで悩む事も山盛り、転んで痛い、めんどくさいカブオタクが横にいる。でもそれが楽しい。
・漫画っぽい主線
GONZO系列のスタジオ楷は小熊さん、礼子、椎ちゃんの世界がゆっくり広がり色づき花咲くのを丁寧に描いている。丁寧な綺麗さだけではなく、主線が若干ざらっとした漫画っぽさ、手作り感をエミュレートしていてかなり好ましい。動画工房が「イエスタデイをうたって」で使った表現に近い物を感じる。その後の動画工房作品で似たような表現は見ないので、やはり非常に手間がかかってめんど…大変な作業なのだろう。アリガトウゴザイマス。アリガトウゴザイマス。
・カブの丁寧な描写
この作品で丁寧に描写されているのはキャラの外見や背景だけじゃなく、カブの整備シーンなども凝っている。きっとカブオタクでも楽しめる内容になっていると思う。またpvや最初の方のエピソードでは坂の上の団地からママチャリで駆け下り、交差点をブレーキかけずに右折しているのが、カブに乗りだしてからは交差点の所で一時停止しているのを気づいただろうか。雪山の回で滑って転ぶ時のタイヤや車体のふらふらする挙動がリアルすぎて思わず足を突っ張ってしまいたくなるような妙な没入感を覚えた。そして11話では椎ちゃんをレスキューしてその後礼子と一緒にカレーを食べ、その後Bパートで居た堪れなくなってキッチン・シンクで洗い物をする小熊さんに後ろから抱き着く椎ちゃん。そこのドラマみたいな間接的な描写・演出は素敵だなと思った。
・ざらざらした感じ
このアニメは細かい描写があるのと同時に、原2免許取得みたいに時にばっさり切り捨てたり、彼女達の走りを大胆に描いている。宝物を手に入れて調子に乗る彼女達は悪い意味でざらざらして受け付け難いかもしれない。二人乗りしたり、足元がわからない雪山の野原をモトクロスしたり、光の無い夜中の山道を強力なライトもつけずオンロードタイヤで走ったり、救急車や警察を呼ばなかったりやんちゃするけど、フォクションなので今回は、ヨシ!と思っている。ただもしかしたら万人向けの作品ではないのかもしれない。富士山をハンターカブで登る回はえーと。ちょっと分からない。否定したい気もあるし、同時に実際にカブで登山したと聞くと簡単に否定もできなく感じる。ヤマノボリのジレンマ。
・ツーリングの果て
最初の方では小熊さんはほとんど笑わない。でも彼女はちょっとずつちょっとずつ礼子達相手に(超たれ目をハの字にたらして)純真に、または調子に乗って白い歯をむいていたずらっぽく笑うようになる、頻繁ではないけど。スーパーカブオタク小熊さんの笑顔は決して安くはないのだ。彼女の笑顔はパターン化された判子絵ではなく、一つ一つ丁寧に描かれている。普段つまらなそうにしているからこそ笑顔も眩く輝く、その笑み値30万ギルダン也。そしてそんな彼女達の青春は始まったばかり。スーパーカブさえあればどこへでも行ける。時に調子に乗って危うく見える小熊さん(小熊=cub=カブ)のツーリングを見守っていきたい。
追記
おかっぱ頭の小熊さんは、ヘルメット被っている時も、脱いでいる時もヘルメット被っているように見えると思った。
初見202104