「魔法少女まどか☆マギカ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.9
感想・評価
10595
棚に入れた
37490
ランキング
45
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

交わした約束忘れないよ

視聴したのはリアルタイムですが、私の陳腐な言葉ではなかなかこの作品の魅力を語り切れないため感想の投稿は保留していました。
しかし、衝撃を受けた作品であり、是非とも紹介したいので投稿に至りました。
なかなかうまく語れなくて不甲斐ないのですが、アニメ好きなら必ず見るべき作品だと断言します。

一度視聴してその卓越した世界観に引き込まれ、二度視聴してその独創的な芸術性の高さに感服し、三度視聴してそのシナリオの緻密さに言葉を失う。
平成が終わり新しい時代となったため、このアニメこそが平成アニメの最高傑作だと私は思う。

大事なことは、まどか☆マギカは最高のアニメだということ。ただそれだけです。


以下、考察やら感想やらを好き勝手語っています。

長いので畳んでおきました。お時間が許すのでしたらどうぞ(個人的な見解です、間違っているかもしれません)
{netabare}
シナリオ、作画、キャラクター、声優、音楽どれをとっても完璧としか言いようがなく、まどか☆マギカに満点をつけないのなら何になら満点をつけられるのかと思うくらい完璧な作品です。

魔女や使い魔のデザインの芸術性が凄まじい。私は芸術には詳しくないのでそのすごさを表現するのに適切な言葉を持ち合わせていないが、数々のアニメやゲームを見てきて、ここまでデザインに衝撃を受けたキャラクターはいない。
ただデザインが独創的なだけじゃなくて、魔女になったキャラクターの心がそのデザインに表れていて、どうしてこういうデザインをしているのか、作者は何を表現しようとしているのか、この動作は何を表しているのか、自分なりに想像しながら見ていくのがとても面白かった。
各話で魔女が登場するたびに一時停止してそのデザインを細部まで観察したが、この表現力の高さは誰にもマネできないでしょうね。


それから背景に描かれたちょっとした模様や小物もよく見るとかなりこだわって描かれていることがわかる。
エンドカードに何か楽譜が描かれていたので、調べてみたら実は作中で流れている曲であることがわかるなど、細かい部分にこだわりを感じる。
また音と映像でキャラクターの心に触れさせてくる表現がさりげなく、物語への没入感を高めている。

これだけでもこの作品が他と違うことがわかる。

主人公のまどかの声は悠木碧さん、他の作品の感想でも私は度々絶賛しているが、キャラクターの背景をちゃんと把握した上で微妙な感情の変化を声だけで表現できる抜群の演技力は他の追随を許さない。実力の高い彼女が評価されるのは自明の理ではあるが、まどか☆マギカは彼女の名前を世に知らしめるとともに、人気と評価を不動のものにした作品とみていいだろう。

主題歌のコネクト。あまりに有名な曲ですが、ClariSは当時まだ中学生で、この曲で一気に知名度が高くなりました。
OPアニメは、やたら夢や希望に満ちたファンタジーなアニメーションで、よくある魔法少女アニメと思いきや、
3話で夢も希望もない残酷な展開になり、え? 嘘だろ??ってなり、OPアニメは一体なんなのかって思うんですが
その疑問も意識しなくなって頭の片隅に追いやられた頃、10話でOPがなくいきなり始まったかと思うと、
10話でほむらが何度ループを繰り返してもまどかを助けると強く決意した後にEDテーマ代わりにコネクトが流れ、
これが実はほむらの強い決意が歌われた曲であることがわかります。そして、タイトル「コネクト」の意味がここで判明するわけです。

さらに最終話まで見て最後に聞くと、ほむらだけではなく、実は二人の想いが込められた歌であることがわかる。
ほむらとまどかの強い絆、ほむらへの感謝、まどかへの感謝、強い想いが込められた歌だということに気づき、感動で心が震えるのを感じる。
だから「コネクト」なんですよ。一人の想いが込められた歌じゃなかったのです。二人のお互いを思う気持ちが正に繋がった瞬間だった。

この歌は一度目は単純に明るい魔法少女ソングとして、二度目はOP詐欺というネタとして(誤解だが)、三度目はほむらの決意が表れた名曲として、四度目は二人の絆の強さを丁寧に歌った神曲として。
アニメの視聴段階に合わせて3度評価が変わり、違った楽しみ方ができる名曲中の名曲である。
さすがに10話と最終話後に聴いたコネクトは鳥肌が立ちましたね。これで感動しない人なんているんでしょうか?
アニメやゲームのことを「作品」と呼ぶが、これほどその単語に相応しいものはないなと感じた。
ここまで緻密な作品に触れられたことを幸運と呼ばずして何とするのだろうか?

キャラクターソングである「また あした」
「それじゃまたねって言葉でまた会えるってウソをついて、いつも通りの笑顔で言うよ、またあした」
これ、最終話まで視聴してからフル聴くとやばいです。
さやかに対する気持ちなんでしょうか?それとも、ほむらに対する気持ちなんでしょうか?
「また、あした」とても気軽な言葉だけど、それは二人にとって大事な「約束」。当たり前のように約束が守られているうちはなにげない言葉なのに、守られなくなった途端に何よりも強く心にのしかかる言葉。
またあした。 その約束が守られることを信じて。
これはホントにだめなやつ。イントロだけで泣きそうになるから、人前では聴けない。

シナリオとキャラクター。
これについては魅力を十分に語りつくすのは難しいのですが、3話ごとに掘り下げるキャラクターが変わっており、しっかりとキャラクターの心情を描写して魅力を十分に伝えている。
また、伏線の張り方と回収の仕方が実にスマートで緻密。普通に見ていると気づかないくらいさりげなく伏線が張り巡らされており、気づいた時のカタルシスは筆舌に尽くしがたいものがある。

例えば、まどかがほむらのソウルジェムを回復する際に、一個だけとっておいたんだと言って取り出すシーン。
はじめて見た時になんでだろうと疑問に思ったため、よく柄を見てみると、たぶんこれはさやかのものだと思った。
要するに、さやかの形見なわけですよね。その親友であるさやかの形見を、自分ではなくほむらを助けるために使った。
この行動そのものも泣けるが、その時のループ世界でさやかが魔女にならなかったらほむらは助からなかったわけで、
ほむらはまどかを助けるために孤独な戦いを続けているけど、まどかによってちゃんと支えられていることがわかる。
また、一見するとさやかが魔女になった時点で、このループは終わったようにも見えたが、無駄なことなんかじゃなくて
このことも含めてすべてが次につながっているということなんですよね。

それから例えば2話で壁に描かれているドイツ語のような文字。かすれている上に陰になっていて一部しか読み取れないのですが、
なんか意味があるのかと思って気になって画面を止めて読んでみるとしたのように書いてあります。

「・・・・・sh? zer・・・!
・・・Halbgott hat sie zerschlagen!
・・・ tragen. Die Trümmern ins Nichts hinüber,
Und klagen.
Über die verlorne Schöne」
「Mach??gr
Der Erdensohne.
Prachtiger
Baue sie Wieder.
In deinem Busen baus sie aut
Neuen Lebens lauf
Beginne.
M?? hellem Sinne,
Und neue Lieder
T?nem daraus!」
読めない部分は?や・・・で表しています。
単語が想像はできるものもありますが勝手に入れると意味がかわるかもしれませんのであえて?にしています。

これはドイツ語ですが、日本語に直してもなんかよくわからない文章になるんですよ。
とりあえずなんかポエムのような印象を受けたので検索してみると
ゲーテの「ファウスト」という非常に有名な戯曲からの引用であることがわかりました。
※ちなみに、今ではこの一節で検索するとまどか☆マギカのwikiがたぶんトップに出てきます。

これ、世界史の授業で習って名前だけは知っていたけど、どんな話かは知らなかったんですよね。
調べてみると、ファウスト博士が、メフィストフェレスという悪魔と契約し、
自分の欲望を叶える代わりに悪魔に魂を売り渡すという話だそうです。
なるほど、つまり2話の時点でキュゥベエと魔法少女の関係を暗示していたんですね
そしてこのファウストから着想を得ているということがわかりました。
シナリオを書いているのは、とても教養のあるかたですね。

あとはほむらの能力。ほむらが移動している際に、一瞬背景の水の流れが止まる演出があり、
彼女は素早く動いているのではなく、時間を止める能力があるんじゃないかと気づいて、視聴者に考察する余地を与えており
こういった緻密な部分が本当に素晴らしいと思った

キュゥベエ、外見は可愛らしいマスコットのようだが、要するに究極の目的のためには、
それ以外のすべてを犠牲にしてもかまわない、むしろ何がいけないのか理解できないという超現実主義なキャラクターで、
少女の願いを叶え、魔女と戦わせ、絶望させた時のエネルギーを回収するのが目的で、
願いを餌に魔法少女にさせて魔女と戦わせ、絶望して魔女化させることで発生するエネルギーを収集しているとんでもない詐欺師。
少女が絶望して壊れようが、魔女が星を滅ぼそうが、
自らの宇宙を救うという究極にして壮大な目的の前では塵も同然で無価値という強烈なキャラクターである。
だからこそ、悩むまどか達に対し「わけがわからないよ」という彼を象徴するセリフが出てくる。
彼にとってまどか達の命や悩みなど、エネルギーを生み出す原料としか思っていないのだ。
どうあがいても好きにはなれないキャラですが、この作品のテーマそのものと言っていいと思う。

まどか、ほむら、さやか、マミ、杏子といった主要キャラクターの人間関係が結構重要で、ほむらがまどかを救うために何度かやり直すことになるが、
この微妙な人間関係がほむらの行動を思い通りにいかなくしており、ほむらのジレンマ、焦りが感じられた。

また、魔女と戦うためには魔法少女としての力が必要。
だが、自らが魔女になってしまうジレンマに苦しむまどかやほむら。
そういったジレンマにどうこたえを出すのかと思っていたら、最終話の展開には驚かされた。
これは、願いと呼んでいいのだろうか?これほど究極の自己犠牲が他にあっただろうか?

まどかを救うために何度もループを繰り返すことで、最強の魔女を作り出してしまったことをキュゥべえに指摘されて
絶望するほむらにたいし、まどかはこたえをだした。
「すべての魔女を生まれる前に消し去りたい、すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女をこの手で」
つまり、この願いを叶えるということは、過去と未来、すべての場所で魔法少女が願いを叶えるたびにまどかが現れ、
魔法少女が魔女になるのを防ぎ続けるということ。すべての少女の絶望を引き受けるという事。
それは、永遠に孤独な闘いを続けるということだった。
それを知り、絶望するほむらに、まどかは答えた。
ほむらが何度も何度も私を救うために時間を撒き戻して傷ついて、泣いてくれたことを気づかなくてごめんね
こういう存在になったからそのことに気づけた、私の最高の友達だって
そう言って、二人の絆の証としてリボンを渡す。

世界のすべての人々が、あのキュゥべえでさえもまどかのことは忘れてしまった。
でもほむらだけはまどかのことを忘れない。
いつだって二人は強い絆でつながっているのだから。

「交わした約束、忘れないよ」

最終話で永遠に続く究極の孤独と苦しみを味わうことも厭わず、
大事なものを救いたい、誰も悲しまない過去と未来を創るという壮大な慈悲深い願いのために自分を犠牲にするまどか
そしてそんなまどかを何が何でも救いたいというほむらの強くて純粋で綺麗な心。

こんなん見せられたら泣くしかないでしょ。

単なるハッピーエンドではなく、ラストを二人の強固な絆で結ばれた物語に多くの視聴者が心を動かされる。完璧な作品だった。

これはアニメ史に残る傑作である。

{/netabare}

投稿 : 2021/09/08
閲覧 : 362
サンキュー:

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