nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
奇跡のバランスが生み出した「やさしい世界」
ジャパリパークという空間、フレンズとは何か。セルリアンとは?
ジャパリパークでは、自分たちの役割をそれぞれが自覚して演じている。
基本的に役割は重複しない。(ペンギンは一応種類が違う)
他人に対して、悪意がない。傷つけない。
サーバルちゃんが「すごーい」と言ってくれる。
フレンズ=仲間しかいない空間である。親もいないし、階級も上下もありません。
ここ(会社・学校・家庭・世間)ではないどこか、である。ただし、日本の可能性はある。つまり、海外ではない、日本にあるどこかの場所。
「セルリアン」は明確な姿でなく、漠然とした不安や悪意である。
訳の分からない悪意「セルリアン」はあるけど、それを協力して排除するという強い意思あるいはルールが「フレンズ」で共有されている。
ライオンとか若干争いがあったりするが、それは、決められた役割を果たすロールプレイングで、結局は勝負をつけようとしない。
つまり、例えば学校、会社、グループ、家族の中で、何か自分というものを見失っている、誰かからの悪意に対してストレスを感じている人たち、学生から中年までさまざまな「疲れている人」が、「やさしい世界」をこのアニメで経験していたのだと思います。
冒頭の子供番組的なOPが我々を現実世界から切り離し、この世界に毎週連れて行ってくれてたのでしょう。
作画があの安っぽいCGだったのも良かったかもしれません。美醜の問題が相対化されています。
そういった我々が切望する「やさしさ」が、奇跡のようなバランスで偶然生み出されたアニメだったのだろうと思います。
だけど、結局それはユートピアであって現実ではありません。結末は寂しかったですが、我々の夢を覚ますには必要な最後だったのでしょう。
{netabare} かばんちゃんは自分が人であることを知り、手が黒くなっていました。人間であるかばんちゃんが人間であること=社会に暮らさないといけないことを自覚し、手が黒くなる=悪意に染まってしまったら、フレンズの世界にはいられません。{/netabare}
このアニメのもう1つの楽しみ方として、ディストピア的な考察も面白いですが、それはこの不思議なアニメを深掘りしようとしたときに入り込む、考察のワナみたいなものだと思います。
このアニメの2期はいろいろ大人の事情があったようですが、私は、結局、この「奇跡のバランス」を再現できる人はおらず、誰がやっても失敗したと思います。