101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
4月 27日 火曜日 能力者たちは心を込めて生き始める
唯一、能力の存在が許された街・咲良田(能力があるという記憶も含む)
記憶の完全保持能力を持った主人公少年らが、
能力を巡る事件を解決していく内に、街と能力の根幹に関わっていく、
同名ライトノベル(未読)の2クールアニメ化作品。
【物語 4.5点】
能力と言っても、各人の願望等が発現した、
単体では世界にさほど影響を及ぼさない地味な物がほとんど。
ヒロイン・春埼(はるき)美空……最大3日前まで世界を“巻き戻す”「リセット」
(但し戻す前の出来事は彼女自身も忘却)
+主人公・浅井ケイ……起こった事を全て思い出せる。
(「リセット」等の能力干渉も乗り越えて記憶)
=過去をやり直して悲劇を防ぐ可能性。
など組み合わせが重要で、そこに頭脳戦の要素も。
「リセット」も絡み時系列は頻繁に前後。
辻褄を合わせるため、脚本はシリーズ構成・高山 カツヒコ氏が一人で担当。
各事件を通じた伏線、ケーススタディの蓄積も良好で、
終盤にはそれらが収束するカタルシスが得られる。
会話劇がメインになるが、SF要素も交えた駆け引きだけでなく、
感情をストレートに表現しない少年少女及び、
なまじ能力を獲得してしまったばかりに青春を締めくくれない大人たち。
彼らの心情の探求、青春劇にこそ、会話は威力を発揮する。
皮肉やセンスが溢れる比喩も膨大。
さらには{netabare}哲学的ゾンビ、世界五分前仮説、カルネアデスの板{/netabare}などの思考実験も会話に投入され、
掛け合いは高尚に。
やや難解だが、乗り越えれば、
言語や哲学が人間を疎外する凶器ではなく、
顔に出せない心を活写できる利器と知る喜びが得られる。
【作画 3.5点】
アニメーション制作・david production
人物作画ではアンドロイドか?って位の無表情が並ぶが、
これは表情以外の方法で心情を描くという
監督方針によりセーブされた結果。
その他エフェクトも最小限な能力描写など、
背景、作画の寄与は目立たないが、
夕暮れ、朝焼けの背景や天候描写等で漏出する想いを表現。
{netabare}幸せを大さじ2杯加えた笑顔{/netabare}など、
ここぞの場面では堅実に仕事をする。
【キャラ 4.5点】
もう一人のヒロイン・相麻菫(そうますみれ)
彼女の秘めた大きな能力と、ケイ、美空との三角関係が基軸。
合理性のために心を殺しても殺しきれないヒロインは何度見ても切ないです。
主人公のケイ。
当初の美空がロボットみたいな無感情で、
「リセット」前の記憶が消去されることを良い事に、
彼はある罪を犯してしまう。
だがこのラノベ主人公は、己のズルさをちゃんと悔いる。
終盤、{netabare}ケイは美空にこれまでの記憶を全て伝達{/netabare}するが、
あんな潔い行動は並の主人公には出来ません。
何よりケイは、価値観の違う、責任を負った大人のボスキャラに対しても、
粘り強く交渉を試みるし、自らも背負う決意が出来る主人公です。
無責任な少年主人公を、純心、自由と履き違えて、
責任者のラスボスをアヒャヒャと発狂、退場させ、
既存の秩序をぶっ壊して、無限の可能性とか言っちゃう
凡百の中二病シナリオに辟易しているそこのあなた。
咲良田に行きましょう。
一人一能力故、多彩な人脈も蓄積される本作。
私のお気に入りのサブは、猫と意識を共有できる野ノ尾さん。
何と言っても{netabare}美空のともだち{/netabare}ですから。
【声優 4.5点】
こちらも露骨な感情表現を抑制し、
長台詞の中で心情を滲ませる難儀な演技。
ケイ役の石川 界人さん。美空役の花澤 香菜さん。菫役の悠木 碧さん。
この三者ならこなします。
特に悠木 碧さんの声色には年齢不詳感もスパイスされ引き込まれます。
そんな彼らを相手にするボスキャラ役が
{netabare}浦地正宗役の櫻井 孝宏さん{/netabare}という重厚さ。
その他、“魔女”役の大原 さやかさん、
佐々野 宏幸役の中 博史さんと脇も渋くてグッド。
【音楽 5.0点】
劇伴担当はRayons。
繊細なピアノと管弦楽による心情曲もまた、
登場人物が表に出さない心理をフォローし、青春劇を補強。
私のお気に入りは、軽快だが何処か物悲しいピアノが牽引する「サクラダリセット」と、
掻き毟るようなストリングスで心情の盛り上がりに貢献した「ねたみ・執着・執念」
主題歌は村瀬陽香役も務めた牧野 由依さんが、
前期OP「リセット」で美空の、
後期ED「Colors of Happiness」で菫の心象世界を表現。
THE ORAL CIGARETTESによる前期ED「トナリアウ」にしても
WEAVERによる後期OP「だから僕は僕を手放す」にしても
シナリオを反映した歌詞世界が、回が進むにつれ、心に染み込んで来る。
構成に独特な面もあり、賛否は分かれるでしょうが、
私にとっては、音楽が物語や登場人物を下支えする
劇伴、主題歌はこうあって欲しいという理想形なので満点評価とします。
【余談】
本日、4月27日 火曜日はリアルと本作初回の月日、曜日が一致する記念すべき?一日。
曜日まわりをシンクロさせて本作に没入してみるのも、また一興かもしれません。