ウェスタンガール さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
幼年期は終わらず
童話とは良いものだ。
それは民間伝承の語り部であり、人と人、人と社会の関係を、世代を超えて伝える方舟の役割を果し続けてきたものだ。
人間の持つ根源的な感情に訴えかけ、無意識のうちに、その人の言動を律する力、共感の源となるのである。
ダーリン・イン・ザ・フランキス
それは、“硬派”で鳴らす TRIGGER 流展開はそのままに、A-1 Pictures からスピンオフした CloverWorks が持つ、いわゆる“軟派”なテイストを加味したラブストーリー、愛すべき“おとぎ話”である。
我々はそこに、先達が残した数多くの作品へのオマージュを感じるはずだ。
筆頭に挙げるべきは、児童文学の金字塔である浜田廣介の『泣いた赤鬼』である。人と仲良くなりたい赤鬼とそれを助ける青鬼の物語は、多くの人の心に残っているはずだ。
或いは、題名そのままに、『フランケンシュタインの花嫁』であろうか。
ティム・バートンの作品を紐解くまでもなく、この作品の持つテーマ、異なるものへの恐れが引き起こす悲劇は洋の東西を問わない。
また、世界観や舞台設定や道具立てにも、それらは見て取れる。
海外のSF作品から多くの影響を受けた手塚治虫の『火の鳥』、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』、近くは、怪獣大好きのギレルモ・デル・トロ、『パシフィック・リム』へのリスペクトが感じられる。
しかし、そこには決定的な違いがある。
並列のイェーガー、直列のフランクスなのだ(^^。
心ときめく素晴らしい造形に乾杯である。
目の表情が印象的であったガドガードの鉄鋼人やトップをねらえ2のバスターマシンとはまた別の魅力がフランクスにはある。
鉄腕アトムの直系ともいうべき“やわらかさ”が、そして搭乗者の表情が映し出された姿が何ともチャーミングなのだ。
しかし、ロボットバトルは付け足しに過ぎない。
メインは“第13部隊”、思春期を迎えた10名の少年少女がくり広げる“愛”の形、命のゆらぎを感じ取る作品なのである。
それは生きることの意味。
サブヒロインである“イチゴ”の言葉を借りるなら、面倒くささの積み重ね。苦しみや悲しみをさらけ出し、泣いたり笑ったり、そして誰かを好きになること。
さらには、性スペクトラム、連続する表現型としての雌雄の問題や、延長された子供である大人の問題までもが扱われておりテーマ性も抜群だ。
そして、だからこそ、一人として必要のないキャラは存在しないのである。これこそがこの作品の最も評価されるべき点かもしれない。
誤解を恐れずに言うならば、かつて煮詰まり、鍋の底に張り付いてしまったガイナックスの亡霊への答えがここにあると言っても良いのではないだろうか。
そう、地球幼年期は終わらず。