まつはや さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
歌に始まり歌で終わる歌を魅せるためのアニメ
【6話時点での所感】
歌唱用AIディーヴァことvivyと未来からやって来たAIマツモトが、100年後の戦争回避を目指すSFアクション。
vivyは数年毎に現れるマツモトの指示で未来の分岐点となる事件に介入し、歴史の改変を目指します。
一つのエピソードは2話完結でほどよく纏まっていますしビジュアル面もリッチで全体的な満足度は高いのですが、個人的にはシナリオが感動路線に振れすぎていて若干鼻につくといったところです。
まず本作の中心に据えられているのはAIと人間の情感溢れるドラマなのですが、それらを描くため物語のリアリティは若干おなざりになってしまっています。6話が顕著でしたが、 {netabare} 看護専門のロボットが単独でロボット製造工場のコアになる{/netabare}というのはいささか飛躍しすぎではないでしょうか?
また昨今まで擦りに擦られてきた「AIにも心はあるのか?」というテーマについて、本作は「あるのだ」方向に持っていきたいようですが、それにしてはAIを元から人間的に描きすぎているとも感じます。
例えば {netabare} 「可愛さ」や「おもてなし」といった定量的ではなく感覚的な話題を提示しvivyにわざわざ「私には分からない」と言わせる {/netabare}あたりは、最終的にそれをひっくり返すんだろうなという制作側のあざとさが透けて見えるのです。
厳し目の意見を連ねましたが、それでも視聴継続するに足る魅力が存在することもまた確か。
情緒に振り切ったシナリオであるからこそSFでありがちな子難しい世界設定や専門用語等はほぼ無し。若干の突っかかりもWITスタジオ渾身のよく動くアクション作画や神前暁氏の壮大な劇伴に押し流され、視聴後はなんだかんだ次週も見ようかな、と思えるのです。
本作にとってAIや近未来といった設定はあくまで手段であり、本当に描きたいものは感動ドラマなのでしょう。
そう割り切って視聴すると中々楽しめる良作です。
何より種崎敦美さん演じるvivyちゃんが動くと思った以上に可愛いのです。甲鉄城のカバネリでも散見された、女性キャラの顔アップ時に特殊効果を重ねる演出がいい味出してます。
【総括】
結論から言うとかなり良かったです。
6話時点ではやや酷評しましたが、7話以降の主人公を一旦引っ込める展開が新鮮で、以降物語の楽しみ方のようなものを理解し最終回まで楽しく視聴できました。
この作品の肝は結局「歌」なのです。
AIや近未来といった設定はあくまで手段だと前述しましたが、最終回の展開を経て感じたのは「歌を歌うVIVYの姿を魅せること」こそが本作の骨だったということです。
歌を歌うことで敵が止まるという少々強引な展開も「ボロボロになりつつ自らの命を失う覚悟で歌を紡ぐVIVY」の姿を描きたかったが故なのでしょう。
個人的には、序盤で少々鼻についていた「AIにも心はあるのだ」と言う路線を深く掘り下げず、あくまでVIVY個人の物語として幕を閉じたた点を評価したいですかね。世界観や話のスケールが大きい故ワンクールで収める為に描くべき焦点を絞った判断はナイスでした。
視聴者を退屈させまいと常に畳み掛けてくる映像のリッチさ、展開の盛り上がりに否応なく楽しくなってしまう、力強い作品です。