TaXSe33187 さんの感想・評価
2.8
物語 : 3.0
作画 : 2.0
声優 : 3.5
音楽 : 2.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
輪郭のクッキリした怪談の難しさ
原作未読、最終話まで一気に視聴
序盤はかなり退屈だったけど中盤から盛り上がりが見えてきて、だけど膨らみきる前に終わった感じ
女の子二人が危険な目にあいながら裏世界を探索するっていう大筋は割と好き
ただ、消えた友人を探すっていう目的意識が半端にあるせいで裏世界に行く説得力が逆に薄れた印象がある
(少なくとも表面上は)六面体を拾って金稼ぎとか裏世界そのものを楽しむ空気感が序盤から大きすぎる
そのため「サツキはきっと生きてるから早く見つけないと!」という表での言動はあまり噛み合ってない
逆に「友人は探すけど、それはそれとして裏世界を探検したい!」な雰囲気の沖縄以降の振る舞いの方が説得力があった
きさらぎ駅以降メインになる「表で過ごしていたらいつの間にか裏側(ないし中間)に来てしまう」というのは面白かった
日常が不意に非日常へと切り替わる恐怖はネットロアに限らず怪談モノの得意分野だよなと
ここに消えた友人の影が加わることでこの作品自体の軸がきちんとハマった印象
正直アニメで描かれた範囲だけだと表題の「裏世界ピクニック」している場面よりもこちらのベーシックな怪談のが楽しめた
ただ、気になる点も割と目立つ作品だった
{netabare}まずは脚本
水着で遊んで地元に帰って、思い出したから米軍救出作戦という謎の流れは意味がわからなかった
あの辺はアニメのために水着を救出作戦より優先させたらしい
その割に前後の話で整合性を取ろうとせず、
「武器を持たずに裏世界に行ってしまったのに、沖縄に行ったら鞄に入らないサイズのライフルを装備してる」
という誰がどう見てもツッコミどころにしかならない展開が描かれてしまっている
そしてもう1つ、音楽
OP曲の雰囲気を友情だの百合だのに振り切ったのは個人的に好きじゃない
裏世界でドタバタコメディをやるならそれもアリだけど、基本は怪異から逃げるだの倒すだのなわけで…
等身大の高校生が等身大の謎を解決して人間関係に踏み込む「氷菓」のような形式ならともかく、
ベースはポップでも非日常に焦点を当てたテーマの物語にはあまり合っていない
そういう「二人の友情」を音楽にするならEDだけで良かったんじゃね?という印象
ただ、そういう主観を抜きに酷いと感じたのがきさらぎ駅のBGM
なぜ囃子が流れる場面でBGMそのままにしたのか…
急に踏切の音が聞こえてきて囃子のような音楽が流れてきて…という「空気の切り替わり」が恐怖を煽る場面だろうと
緊張感を煽る汎用BGMを何も考えず被せているせいで音による恐怖演出はむしろ減退している
恐怖を煽りたいならSEにこだわって、BGMはアクションシーンだけに絞っていい
この場面に限らずBGMの主張が全体的に激しく緩急にかけるシーンが多い
曲自体はきちんと内容を掴んだものになっているだけに残念
そして最後は演出面
これは単純な作画の甘さとかではなくて、怪談との相性の悪さの話
クネクネとか巨頭オなどの恐怖は文字情報から姿を想像する部分こそが肝になっている
「よく分からないけど怖い」「見たら正気を失う姿」という未知の部分で恐怖を煽る話のため、アニメにすると恐怖は8割減と言っていい
これがゲームなら体験による恐怖を味わえるので視覚化のデメリットを補える
ただ、アニメの場合腰を据えて眺めるため「正体不明のなにか(という体のイラスト)」という見方になってしまう
これの拍子抜け感を補うために、怪異を化け物らしさに溢れるビジュアルにしている
ここまでならいいんだけど、この作品の場合「銃による解決」がちょいちょい描かれる
この2つが悪い意味で相乗効果を生んでしまって、ネット怪談のB級感ではなくクリーチャーパニックのそれになっている
加えて「見ることで存在を確定する」「見すぎると精神に影響を与える」というのがアニメではちょっと微妙
相手が枯尾花なのは分かるのに、その花がなんなのかは分からないまま破壊することになる
言ってしまうとお化け屋敷の最中にタネだけ確認してびっくりポイントをスタッフ通路で回避するような展開
ビジュアル的に分かりやすい化け物を、機械仕掛けの玩具だと認識して、物理的に破壊して解決し、でも原因は放置
文字媒体で恐怖や想像を煽るためのギミックが、視覚に訴えるアニメではとことん逆効果という印象
{/netabare}
アニメとしては問題の多い作品ではあったけど、話自体は割と楽しめた
2期3期とやってほしいわけではないけどやるなら見るかな?ってのが総評