二足歩行したくない さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
覚えている限りヒビオルは続いているから
岡田麿里監督作品。
人里離れて暮らす不老の種族・イオルフの少女「マキア」を主人公にしたファンタジーです。
異世界を舞台にした完全オリジナルで、舞台設定など綿密に構築されています。
エンデやトールキンの、児童文学のような世界観でありながら、強く心に刺さる内容で、エグイ描写もあるため高校生以上向けの作品と思います。
2時間の尺でファンタジーの世界に解説無しで突入するため、はじめはとっつきにくいと感じましたが、ストーリーはシンプルでわかりやすく、登場人物もそれほど多くないです。
イオルフという種族が、自分勝手な人間によって踏み荒らされ、そんな中で生まれたある母子の物語となっています。
イオルフは10代で成長が止まり、そのまま数百年以上生き続ける種族です。
その生命を取り込んで国家を長く存続させようと企むメザーテ国が、ある日、イオルフの里に攻めてきます。
争いごとを好まないイオルフの里は難なく侵略を許してしまうが、その中で少女・マキナは偶然遠くの森に飛ばされて助かる。
一方で、マキナの親友「レイリア」は、メザーテ国に捕らえられて連れて行かれてしまう。
故郷も何もかもを唐突に失ってしまったマキナは、盗賊によって破壊されてしまった街に流れ着くが、そこで母の死体にくるまった赤ん坊を見つけ育てる決意をする。
エリアルと名付けられた赤ん坊はやがて成長するが、全く変わらない母と生きることに疑問を抱き始める、というストーリーです。
ファンタジー作品ですが、例えば剣と魔法の冒険が始まったり、悪がはびこっておりそれに抗う存在するなどはないです。
マキアとエリアルという、ひょんなことから母子になってしまった二人にスポットがあったストーリーで、ギャグも少なく、コメディリーフ的な存在もほぼなしです。
エロも萌えも燃えもない、暗めのアニメ映画なので、まずはそういう内容だと理解して見始める必要があり、合わないと感じる方もいると思います。
とても悲しい物語のはずなのですが、不思議に悲しいだけで終わったようには感じられませんでした。
ひとつの物語が終わって、さらに未来へ続いていることが感じられる、前向きな作品で、取り返しのつかないようなことが何度も起きて、それでなお未来へと顔を上げる強さを感じます。
ただ、それでも、最後のシーンはとても泣けました。
人間から見ると永遠に等しい時を生きるものに育てられた赤ん坊とその母に待ち受ける運命、そんな最初からわかっていたラストに、それでも切なさを感じます。
出会ってよかったと思える、とてもいい作品でした。