二足歩行したくない さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
『夜明け告げるルーのうた』 がおもしろかったよ、というはなし
湯浅政明監督のオリジナルアニメ作品。
次回作の "きみと、波にのれたら" もそうなのですが、湯浅監督の一般認知度っていまいち低い気がします。
デザインがアニメファン好きしそうにないおしゃれな感じなためか、かといってまるっきり子供向けにしているわけでもないためか、作品のターゲットはおそらく高校生から20代前半だと思うのですが、彼らがデートで映画館に行くとして本作を選ぶかというと微妙なところで、そういったところによるものなのかなと思います。
本作も、あまり表情を表に出さないがDTMで曲を打ち込むのが趣味の男の子が主人公で、バンドに加わって町のために音楽を奏でる展開があり、同じ表情変化に乏しくても、打ち込むのがアニメな我々とは雲泥の差なので、感情移入が難しいところがあります。
メインキャラはお約束どおり本職のアニメ声優ではなく、俳優さんが演じていて、国際なんとか賞を多数受賞しているのもお約束ですね。
扇情的なキャラデザインでもなく、美術がすごいわけでもないです。
結果、視聴前の方へセールスポイントを述べるとしたら、千鳥の二人が声優に挑戦しているのと、国際なんとか賞を受賞しているという決め手に欠ける内容となってしまうことは否めないです。
そういったわけで、"きみと、波にのれたら" や "夜は短し歩けよ乙女" を視聴していたので、ハズレではないだろうというくらいの感覚で視聴を始めたのですが、これがすごい良かったです。
ある漁業がメインの街「日無町」が舞台です。
主人公の「足元カイ」はそこで、父と祖父と3人で暮らしています。
カイは打ち込み音楽が趣味なのですが、ネットにアップした彼の作品に気づいた同級生の「海老名遊歩」、「国夫」から、バンド『セイレーン』のメンバーに誘われます。
その街では人魚の伝説があり、人魚が出るという人魚島まで練習に訪れた三人だったが、カイはそこで不思議な歌声を耳にする。
その後も不思議な現象が起こり、自宅の離れで父が昔作った音楽のテープを聞いていると、そこに海が塊で迫り上がり、カイは海水に押し倒される形になる。
海水の中には「ルー」と名乗る人魚がいて、ルーはカイの音楽を聞くととても嬉しくなる様子です。
ルーは音楽イベントのときなんかに現れ、不思議な力でその場にいるメンバーをノリノリにするのですが、それがとにかく楽しくて、見ているだけで嬉しくなりました。
展開は王道で、ルーの正体がバレてしまい → 街の人は町おこしに利用しようとするが → 結果虐待のような扱いになってしまい → 海の神が怒って人の街に制裁を加えようとする → ルーは危険な人魚として捕らえられ → カイはルーのために『歌うたいのバラッド』を熱唱するという、最後だけよくわからない感じですが、そんな内容です。
前述の通り、アニメファン好きするデザインでもなく、メインキャラは本職のアニメ声優でもない、美術がすごいわけでもない、セールスポイントといえば国際なんとか賞くらいなのですが、ひたすら胸を打つ内容でした。
月次なことしか言えない語彙力がもどかしく感じるくらい、とっても良い作品です。
もし見ていなければぜひぜひぜひ。