退会済のユーザー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
『今ここ』を生きるということ
勘違いコメディofドルヲタ。楽しい作品でした。
ファイルーズ劇場。彼女がいないと成立しない。
えりぴよからすればまさに『Thunderstruck!』でした。
『ビビビときました』ってヤツ。
地下アイドルに目覚めドルヲタと化したえりぴよを中心に繰り広げるドルヲタ達の悲哀と歓喜の日々と、彼らに向き合う地下アイドルたちの物語。コメディなのでリアリティ重視の方はNG。アイドルビジネスに疑問を呈するものでもなく、拙者たちはこういう感じでやってるんでござるよ、みたいな感じ。
搾取ビジネスに騙されてるキモいオタクは完全に生き方間違ってるとか言うつもりも毛頭なくて、と言うかそんな感想になるならそもそも完走出来てない。
えりぴよのバックボーンを語らずにあえて切り取った部分しか描かなかった潔さがいい。いきなり目覚めていきなりジャージの超展開。一人の人間が他人には理解できない常軌を逸したレベルで何かに依存していく様子を丁寧にやったところで笑えないしつまらない。第一そこを見せたら絶対に矛盾点が出てくるので、あり得ないほどすっ飛ばすと同時にリアリティラインもグッと引き下げる。これは完全にコメディですよってアピールし、その直後にこの作品がやりたいことをすぐに見せて掴んでくれた初回の構成は本当に素晴らしい。
今は『趣味が偏った消費者』でもオタクの範疇だが、こういう『買い支える』っていう態度こそがオタクのプライドだったと思う。なんでもかんでもタダで効率よく欲しいものだけ都合よく摂取しようとするフリーライダーよりも、こういう方々の方がある意味健全と言えるかも。キャバクラや風俗と一緒でガチ恋になっちゃう人はどこかで冷静になる必要はあるとは思うけど。
他人から見れば狂気レベルでのハマりようを見て、心配したり哀れに思ったりするのは何もアイドルに限ったことではなくて、同じく衣食を犠牲にしながら無謀な目標に向かって勉強や技術習得に打ち込む人だっている。対象が何であれ、そこまで没頭できるものに出会えたことは幸せだと思う。もちろん何年も努力した結果、貢いだ結果、思った結果にならないことの方が多いでしょうが、何かに自覚して打ち込んだ経験ってのは絶対無駄にはならない。何も考えずにただのめり込んで時間を無駄に過ごすってのはアレだけど。いつかはアイドルだって歳をとって引退するし、えりぴよだっていつまでもこんな綱渡り生活が続けられる訳が無い。そんなものは両者ともわかってる。
お金を使うってのはそれ自体が楽しいことなんですよね。対象は何でもよくて。自分で決めたものにお金を使う。自分で決めるっていう意思決定の行動自体そのもの。自分が何を求めているかを知っていて、そのために自ら行動すること。ハートドリヴン。
ダメな依存ってのは『○○が好きな自分』をアイデンティティにしてしまうこと。だから『○○を買わなければいけない』『○○について誰よりも知ってなければいけない』になっちゃってマウントパワハラマンになってしまう。『自分は○○のおかげで自分らしくあることができている』ということを自覚した向き合い方であれば、これは無駄な時間などではなく経験として血肉になりえるものだと思う。えりぴよがどちらかであるかについては自分も完走出来たし、作品自体の評価も好感触のものばかりなので後者よりではないかと思う。彼女の真っ直ぐさはただ無為に時間を浪費するものでもなく『今ここ』にきちんとフォーカスした生き方のように見える。いつかえりぴよがアイドルを卒業するにしろしないにしろ、劇中で過ごしたこの時間はきっと彼女の人生の柱の一つになるはずです。
異常とも言える趣味への向き合い方に関して、周囲から理解されない苦悩や葛藤なんかはあえて切り捨てた見せ方ではあるが、えりぴよ自身はそれらを軽々と跳ね除ける強さでもって対処しているであろうことは容易に想像できる。えりぴよの描写が悪く言えば薄っぺらいにも関わらず、いつもの『掘り下げがッ』が湧かないのはやはりファイルーズあいの怪演が成せる技でしょう。
明日の不安も昨日の後悔もなく全力で『今ここ』に生きると言う極意。
アニメとしてデフォルメしてはいるが、彼女の生き様には学ぶべきものがあるように思う。