ももも さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
人生に再挑戦するという夢物語
なろう系の異世界転生モノ。
正直舐めてるを通り越して、タイトルだけで幻滅してスルーしてました。
しかし1クール遅れで本作を視聴し、見終わった今、久々に良作に出会った満足感があります。
本作はラノベ投稿サイト「小説家になろう」で2013年から5年に渡って人気ランキング一位を維持し続けたそうで、この設定の先駆者的作品であるとされており、その後現在までうんざりするほど生まれまくっている同ジャンルの元凶とも言える作品。らしいです。
■本作の魅力(を書こうとしてみた)
私が勝手に思う異世界転生系の本質は「異世界で生きるという夢物語」なのではないかと思ってます。
元祖だから当然?なのかもしれませんが、本作はそこに「人生をやり直す」という要素を加え、その本旨をシンプルに楽しめることが魅力だと思います。
よく出来た王道の作品、骨太な物語…というと持ち上げすぎかもしれませんがw、褒める方向的にはそんな感じです。
変にひねくれた展開とか、異物を一つだけ持ち込めたりとかの飛び道具は一切ありません。
主人公の前世の記憶が無ければ、完全に王道のファンタジーになると思います。
ただ一点のスパイスとして転生要素があり、それによって物語がガラッと変わっています。
突っ込んだ内容。
主人公の前世(リアル世界)でのあり方は、救いようもないほどに腐りきっています。
知っている方は「NHKにようこそ!」を想像してみてください。あれから友人とギャグ要素と色恋と夢を抜き、そのまま歳を重ねて取り返しがつかなくなってしまったのが、本作の主人公です。
きっかけのいじめの描写はあれど、長年引きこもって鬱積した「俺はどうせ屑だからよー」みたいな開き直りもありません。悪い意味で達観してしまった、何もない屑です。
前世の名前すら設定されなかったのは、前世に「失敗した」以上の意味がないからだと思います。
元冒険者夫婦の赤子として生まれた主人公は、前世の無念を取り返そうとしません。(そもそも本当に夢も希望もなく、無念として書かれていません)
多少のフラッシュバックはありますが、基本的には「子供が子供らしからぬことを考えながら輝ける人生を生きていく」というのが、この作品のシンプルな骨子なんだと思います。
大人の知識と努力の上に成り立つオレツエーは前提です。その上で、演出として割と生々しいエロ描写やヒロインたちが登場します。
原作を読んでいないのですが、少なくとも一期時点ではハーレムはありません。
あくまで転生した主人公「ルーデウス」の人生を書く上で、節目節目に登場するヒロインたちという印象です。
エロもしかり。中身はおっさんであるルーデウスの生々しい欲求として描かれています。
「異世界転生モノ」である本作の良さを書こうとするとどうしても他の異世界転生モノとの比較になってしまうのですが、要は要素としての「エロ」「ヒロイン」「オレツエー」はあれど、それが目的でもサービスでもないんです。(いやサービスではあるかも…)
ちゃんと主人公の物語になっていると思いました。
■恵まれすぎているアニメ化
全く期待せずに見て、一話から引き込まれました。
他の方も書いていますがスタッフがこの作品のために立ち上げたスタジオなんだそうで、ただ作画が綺麗ということではなく、演出の隅々まで素晴らしいです。
一期後半、掲示板に目を近づけた魔法使いの帽子がひしゃげるカットがあります。秒に満たないシーンですが、ここまで来てもクオリティの維持、手間のかかるカットを選択する意思がすげーなと感心してしまいました。
声優も「キャリアを積まれ、場数を踏んでいる声優さんばかり」とのことで、安定しています。
一番の若手でシャミ子の小原好美さんあたりでしょうか。
ルーデウスは発声する子供の声と内心の声(モノローグ)が別、二人で一役を担当しており、モノローグは杉田智和さんが演じられています。
杉田氏は声優としてそこまで注目してなかったんですが、この作品での演技は素晴らしいと思いました。
インタビューによると監督はこの作品を「大河」と捉えているんだそうで、二期以降も楽しみです。
https://ddnavi.com/interview/726713/