「Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-ヴィヴィ フローライトアイズソング(TVアニメ動画)」

総合得点
85.8
感想・評価
778
棚に入れた
2565
ランキング
225
★★★★☆ 4.0 (778)
物語
3.9
作画
4.2
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.9

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ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

機械は正確に間違う。人間は漠然と正解できる。

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
AIの進化による、人類との対立。

様々な媒体で、飽きるほど作品化されてきたテーマですので、既視感は当然あります。

しかし、魅せ方や設定の工夫によっては、まだまだ楽しめる作品になることを証明しました。とにかくハイクオリティでしたね。

私は基本的にシナリオ重視でアニメ作品を観ますが、本作に関してはシナリオは中の上ながら、作画と演出が特上で、トータル、素晴らしい作品だと思います。アニオリ作品には常に頑張ってほしいので、こういう作品が生まれるのは嬉しい限りです♪

レビューでは、以下の3点について、久々に(笑)、真面目に考察します。

①人とAIの違い(レビュタイ)。
②最終話、ラストシーンの意味と是非。
③心とは何だろう、という問いに対して本作が出した答えへの賛否。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
例えば、仕事でミスって、取引先に迷惑をかけた後輩に対し、

「明日、取引先の牛に行って、謝罪するから、手土産買っといて」

とメールを送ったとする。

勿論、「うち」を「うし」と打ち、誤変換したものに気づいていない、こちらの落ち度だ。が、もしこれに後輩が、

「取引先に牛なんていないですよ。牧場にでも行くんですか?」

なんて返してきた日には、ぶっ飛ばしたくなる。「状況的に牛じゃなくて、家だろ! そのくらい分かれよ! バカか!」と。

しかしこれが、もし機械なら「牛」と認識して、手土産に牧草なんかを発注しても仕方がない。なぜなら、機械はプログラムに対して忠実だから。

と、これがレビュタイに込めた、「機械は正確に間違う。人は漠然と正解できる」の意味だ。

実際に仕事でPC使ってて上手くいかない時、「故障かな?」と思うけど、大抵は自分が何かのミスをしていて、PCは、人間の間違った操作を正確に表現しているだけだったりする。

本作のように、AIが人類と敵対するのは、いつも合理的な理由からだ。

本作の場合、最初は「人間のサポートをするのがAI」だったはずが、いつの間にか、「人類がAIに依存する」ようになり、「だったらAIの方が上じゃね?」と思った(演算した)アーカイブが、人類を滅ぼすという決断をしたということ。

多くの作品で、「人類が地球に対して害悪だから」みたいな、フワッとした理由でAIが反乱するのに対し、本作は結構AI側の筋が通っている。論理的だ。

そして、自らの意思で作曲(創作)できたVivyを、アーカイブは自らより上位のAIであると判断し、その選択なら自分よりもさらに正確だろうからVivyの選択を尊重するというのも、実に合理的な判断。

ラストはちょっと分かりにくい展開。マツモトのプログラムによりアーカイブに接続していた全AIが停止するなら、Vivyの歌必要なくないか? とも思ったが、マツモトがやったのはあくまで応急処置であり、結局いつかは再びAIの暴走が起きてしまうかもしれないところを、Vivyの歌により、「人類を信じる」という哲学を全AIに伝え、未来の方向性を示したということなのかな?

んで、エンドロールからのCパートで、「なるほど」と思ったのは、このラストはハッピーエンドに見せかけて、視聴者への問題提起、謎解きを要求するラストのわけだ。

エンドロールでAIを蹴りつける青年がいたけど、あれは当然の行為であって、AIによって大切な人の命を理不尽に奪われた人は物凄い数いるわけで。人類全体に、AIへの憎しみや恐怖が埋め込まれる。けれど、肝心のAIはもう99%近くが停止しているわけで、危険はない。それを再起動するかどうかは、人間の手に委ねられている。

世論は当然、AI排斥の方向に動くだろう。しかし、AIがなければ、特に都市部においては以前のような豊かな生活は望めない。まして、多くの労働者を失った現状である。

普通に考えれば、生活レベルをぐーんと19世紀くらいまで下げれば、問題なく人類は復興できるし、じゃあ19世紀(AIがない時代)の人が不幸せだったかと言えば、そんなわけない。多少の不便さはあっても、きちんと幸せな一生を送ることは可能だ。

しかし、一度便利さを味わった人類は、その便利さを、甘い蜜を完全に忘れ去ることは出来ない。

結局、あの事件の何年後か、あるいは何十年後かは分からないけれど、人類は再びAI(Vivyやマツモトを再起動させる)と共に暮らす未来を選択する。

それが、やはりAIに依存した人類が再びAIに頼りたくなった故の選択なら、いずれまた、AIは理論的に人類を滅ぼすことを選択するだろう。

つまりそれは、「人類は成長できなかった」というバッドエンドになる。

でも、確かにあの戦争を始めたのはAI(アーカイブ)だけれども、止めたのもAI(Vivy)。その事実や、Vivyの歌のお陰でアーカイブが人の未来を信じるように書き換えられている事実を、トァクの穏健派、ユイは知っているわけで。彼女らの「人類とAIは共に歩ける」という訴えのもと、正史とは何らかの違い(対策)を持たせた上で、AIとの共存を選んだのかもしれない(例えば、AIに人類が支えられるだけでなく、AIを人類が支えるような、相互依存関係を組み込むとか)。

つまりそれは、「人類は成長できた」というハッピーエンドになる。

最終話Cパートだけでは、このどちらなのかは判断できず、そこは、視聴者への宿題ということなのかな。

という具合に、少し肩透かしに終わったラストを真面目に考察してみると、そう悪いラストでもないのかな、とは思う。

とはいえ、この作品で一番盛り上がったのは、4~6話のシリーズで、特に6話は神作画だった。緊迫した展開にマツモトの軽妙な語り口が良い感じにマッチし、悲劇的なラストを盛り上げる。当然、視聴者は「最終回にはあれ以上のアクションシーンがあるよね!?」と期待している。

だから、あんなに捻ったラストにしなくても、めっちゃ格好良いアクションアニメにして、分かりやすい極上のエンターテイメントにしてくれた方が、多くの視聴者は満足したのだと思う。

それこそ、人類が得意な「漫然とした正解」である。人間にとって、「正しいか」というのは実はどうでもよくて、「自分が納得する(心地好い)か」が大事なんだよね。美味しい不正解に飛び付いちゃうのが、人の性ですから。

他にも、あれだけ引っ張った「心とは何?」に対する答えが、「思い出や記憶」というのもありきたりすぎるし、矛盾も生まれる。だって、他のAIだって記憶はあるだろうし、何より、「Vivyとしての記憶を失っていたディーバが、心を込めて歌えていた事実」との矛盾が生じる。

個人的には、「Vivyが歌えない」ことが、既に心の証明だと思っていた。つまり、「心」とは「使命の先にあるもの=自由意思」と「非合理的なものを漠然と信じられること(夢や希望)」であり、「心があるから、演算(理屈)上正しいと分かっていても悩むし、苦しむ。でも、その悩みや苦しみの後にしか、創造(歌)は生まれない」とかってした方が作品にはハマる(この際、我々の現実世界での哲学的な正解とかはどうでもよい)。

すると、ディーバが心を込めて歌えていた理由も説明できて、序盤の、歌うことを使命と感じていたのVivyの記憶を無くしたことで、「歌いたい」という意思だけが残ったからということになる。Vivyが歌えなくなった理由も、霧島モモカやディーバなど「歌ってあげたい」と思った相手を消失したから(皆を幸せにするという漠然とした使命では歌えない)。だから、最期に松本博士の、ある意味分身であるマツモトの為に歌いたいという自由意思を持ち、歌うことができた。

とかの方が、綺麗じゃないかと思うんですよね(私、本作で一番好きなキャラはマツモトなんで、最後にマツモトが主役に躍り出てほしい気持ちもあるし、結局、松本博士はVivyの歌を聴けないまま死んじゃったから、Vivyが松本博士やマツモトの為に歌うのは胸熱な気がするんだけど)。

各話評価にある通り、中盤までは☆5をつける流れだったのですが、最終話にて以上2点の不満を感じたので、ギリギリ☆4に落としました。でも、トータルで、今期の覇権でもおかしくない、素晴らしいアニメだとは思いますよ。
{/netabare}

【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目 ☆3
残酷な世界。AIが人間に敵対する話ね。AIを滅ぼすためにAIが働く。

2話目 ☆4
相手も、サポートにはAI使うから足元掬われる。なるほど、非合理が、演算できないことが、未来を救うか。使命に対して純粋に。いつまで生きるかではなく、どう生きるか。モモカの死。それがドラマにどう影響を与えるか。

3話目 ☆4
15年後。コロニー落とし阻止。会社は家族、、、吉本かな?(笑) 次話への引きが上手いな~。

4話目 ☆4
機械は、正確に間違う。AIは使命に生きる。悔しいという感情。

5話目 ☆4


6話目 ☆5
映像クオリティは、かなり凄いよな。ほぼ、デンドロビウムやん(笑) これ、劇場版の最終シーンだよね?(笑) 島そのものを解体しないと、再起動されるのでは? めちゃくちゃ悲しいラストだな。

7話目 ☆4
初期化? AIの自殺か。

8話目 ☆4
やはりのアントニオ。だろうなと。

9話目 ☆4
バトルシーンえげつないな。

10話目 ☆5
歌えないことが、すでに心なんだよな~。どん詰まりに猪突猛進(笑) 20年くらいか。まさかの松本で、鳥肌たったわ。

11話目 ☆4
結局、この未来にたどり着いたか。ラスボスはアーカイブ。

12話目 ☆5
シナリオとか言わず、見せ方だよな。ViViが歌えれば、人類を救える。再びタイムリープ。ラストチャンス。熱い。

13話目☆3
タイムリープを繰り返し、少しずつ事態が好転するのは良くあるけど、わりと理屈は通っているな。心を込めるの解は、思い出、記憶ね。そして、人類の自立か。ラストは、かなり先の未来か?
{/netabare}

投稿 : 2021/06/20
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サンキュー:

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