まつはや さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ひんやりとした日常に熱く滾るロボットがやって来た
【6話時点での所感】
悩みを抱えた4人の少年少女が自称「怪獣使い」のガウマと共に怪獣と闘うスーパーロボットアクション。
SSSS.GRIDMANからスタッフとSSSSの文字は受け継いでいるものの、キャラクターや物語は一新されているため、今回は敢えて前作を引き合いに出さず独立した1作品としてレビューしていきます。
本作に登場するキャラクターはスーパーロボットの単語から連想する熱さや素直さとは無縁の所謂「現代っ子」ばかり。
こんなんじゃだめだ!と慟哭するような深刻さは無いけれどどこか影がある彼らの日常。それがある日怪獣と巨大ロボットという非日常に侵された瞬間、物語の幕が上がります。
本作の魅力はこの日常と非日常のコントラストにあります。
制服の着こなし、鞄や小物のデザイン、ローテーションで実写を彷彿とさせる台詞とその喋り方......実写的な画面作りで描かれる蓬たちの日常生活は、画面の向こうの出来事だと割り切れない生々しさを視聴者に与えます。この生々しさが本作の特徴であり、視聴者により好みが別れる部分でもあるのでしょう。
しかしそれに対して怪獣と闘う戦闘シーンは真逆も真逆。合体や攻撃時に名前を叫ぶお決まりに始まり、ガシャンガシャンとSEが鳴り響く変身バンクや勝利の瞬間流れ出すテーマソング等々、フィクション的な嘘がたっぷり盛られたダイナゼノンの暴れっぷりはケレン味そのもの。
この対局な2つの要素がそれぞれ浮くことなく、むしろ良さを引き出している点が非常にうまい。
言うなれば、視聴者の受け取り方如何で、日常シーンの湿っぽさを戦闘シーンの気持ちよさで相殺しているとも見れますし、戦闘シーンの暑苦しさを日常シーンの低温さで相殺しているとも見れる訳です。
由緒正しい激しいロボットと怪獣のアクションを楽しみたい層にも、今風なキャラクターが繰り広げる人間ドラマを楽しみたい層にもコミットした、令和のロボットアニメがSSSS.DYNAZENONなのです。
物語に視点を移すと、前半はひたすら怪獣が出てくる→倒すのお決まりパターンを楽しむ、ちょっと荒っぽい日常アニメといったところでしたが、6話にして物語が動き始めました。
合体スーパーロボットという機構を「搭乗者全員の息を合わせないと本来の力を発揮しない」という設定に絡めたのは見事。良い意味でも悪い意味でも安定した展開を飛び出してここから何を見せてくれるのか、楽しみです。
【総括】
非常に気持ちのよい作品でした。
作品の魅力の大半を占める巨大合体ロボットの戦闘シーンが真っ当に高品質なので、評価もそれに準じて跳ね上がると言うものです。
ただ人間ドラマ部分、敵側の思想や敵対するに至った経緯などはもう少し掘り下げが欲しいところでした。元々台詞も少なく淡白な作風であるが故、キャラクターの心変わりや話の展開がぶつ切りになっている部分があったように思います。12話を通しての伏線もあるのはあるのですがどうにも1話1話で話が途切れているように感じるのは元ネタである特撮を意識しているが故なのかもしれません。
それでも、細かいことはいいんだよ言わんばかりの力強いロボットシーンの出来栄えに視聴後の満足感は高かったです。特に最終回の戦闘シーンはキャラクターのテンションもアニメーションも「これぞtrigger」といった暑苦しさに満ち満ちており、このアニメの評価を良い方向に固めるに足る仕上がりでした。
ロボットが出てくるちょっと荒っぽい日常ものとして見ればかなり楽しめるのではないかと思います。