「ゆるキャン△(TVアニメ動画)」

総合得点
94.3
感想・評価
1843
棚に入れた
7335
ランキング
6
★★★★☆ 4.0 (1843)
物語
3.9
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.1

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フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

冬キャンプのリンカク、友だちのカガミ

アニメーション制作:C-Station、
監督:京極義昭、シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:佐々木睦美、
音楽:立山秋航、原作:あfろ

超インドア派だったが、
キャンプにはよく出かけていた。
幼い頃には両親や親戚と、大人になってからは
仕事関係で行くことが多かった。
それでもいつも、行く直前まで
面倒な気持ちが占めていて、
出発日が近づくにつれ、行きたくなくなった。
準備に手間がかかるし、早起きしなければいけないし、
車酔いすることはあるし。
子供のころは行きの車中で、
「家で漫画を読んでいたかった」などと
考えていたこともよくあった。
そもそも自然の景観を見ていて、
何が楽しいのだろうかと思っていた。

ところが、いざ現地に着くと初めて体験することが
たくさんあって、今でもそのときのことは鮮明に記憶に残っている。
浜辺に大きなテントを張って、魚や貝を取って食べた。
夜空に煌めく幾千もの星と流れ星を眺めた。
眼前にある大自然の恐ろしさを知った。

日常を離れ、非日常の世界で過ごす。
ひとりではなく、仲間と一緒に長時間ふれあう。
自分の生きている場所の手触りのある本物の一端を知る。
それが人生において、とても大切なことだと気付いたのは、
かなり後になってからのことだった。

大人になってからは河口湖ICを下りて、
キャンプ場まで行くことが多かった。
山梨県が舞台のゆるキャン△に登場するキャンプ場とは、
それほど遠くないこともあり、
アニメを観ていると当時を思い出した。

とはいえ、冬にキャンプをすることは絶対になかった。
夏でも8月後半の時期になれば、
昼と夜の寒暖差が激しくなって
防寒をしっかり用意するのは常識だし、
荷物が相対的に多くなる。
冬ともなればもちろんそれ以上の準備が必要で、
冬キャンプ自体が、ある意味タブー視されていた。
当然、冬になると閉鎖されるキャンプ場もたくさんある。
私がよくやっていた頃は、
冬キャンプは、ほんのひと握りの
ベテランキャンパーだけが楽しむものだった。
それに冬はスキーやスノボをやる季節だった。

だから、ゆるキャン△が始まったとき、
こんなアニメを放映して大丈夫か、
という心配が先に立った。
今までキャンプをしたことがない人たちが
こぞって冬キャンプに出かけて、
事故に遭わなければいいけど…という不安さえ感じた。

ところが、アニメを観ていると心配というより、
魅力が少しずつ伝わってくる。
ベテランキャンパーだけが知る
「冬キャンプの特別感」だ。
それを素人目線に落とし込んで、上手く表現している。

風景の空気感の表現がいい。
キャンプでは行ったことがないが、
冬の河口湖や富士山周辺は何度も訪れたことがあって、
見える景色は夏とは違い、輪郭がはっきりしている。
それは湿度や空気感の違いからくる見え方の差だ。
冬は空気が乾燥することと、寒気団に覆われ大気が
安定することで、より自然が美しく見える。
いわば、焦点がピタリと合ったものとそうでない写真を
比較するような大きな違いがある。
また、人が少ないこともあり、
自分たちだけの景観に感じ、得をした気分にもなる。

アニメでは、キャンプ初心者の各務原(かがみはら)なでしこと
玄人志向キャンパーの志摩リンが出会うことで
物語が始まる。そこに野クルメンバーが加わり、
女子高生たちのゆるやかな関係性が綴られていく。

なでしことリンの友だちになっていく描き方もいい。
大勢の人と行動することが苦手な
ソロキャンパーのリンに対して、
なでしこは、持ち前の明るさと、相手への心遣いを忘れない。
素直に自分の好意を相手に伝えるが、無理強いはしない。
適度な距離を保ちつつ、少しずつ近づき、
相手が心を開いてくれるのを辛抱強く待っている。
その行為が自然体だから、相手は警戒心を解いていく。

リンは過去に友だちに合わせたことで
窮屈な思いをした経験があるのだろう。
だから、なるべく人と近くなりすぎない適度な距離感で
いつも接している。自分の好きなもので
人と無理に合わせたくない。
そういう性格は祖父に似ている。

全く違う性格のふたりが偶然に出会って、
それぞれの性質を理解しながら関係を深めていく。
リンはソロキャンに出かけても、
LINEのやり取りで、楽しみを友だちとも共有する。
そんな「生き方」も現代の人々の心に響いた理由だろう。

道具の運搬、テントの設営、キャンプ飯の調理。
準備や現地の作業など手間がかかることはあるが、
簡単に楽しめるように解説しているのも好感。
そもそも最近はテントひとつとっても
昔に比べると圧倒的に設営に手間がかからない。
たまたま登山に行く機会がつい最近何度かあり、
キャンプ道具も便利になっていて驚いた。
キャンパーの間では有名な低燃費の湯沸かし器である
ジェットボイルという道具を見て、
あまりの速さと便利さに進化を実感した。

アニメを観て、実際にキャンプを始めた人も
多いのではないだろうか。
それだけアニメに楽しさが詰まっている。

2期も放映され、人気の高さがうかがえる。
観ていると癒される空気感が、
絶妙なバランスで醸成されている。
(2021年4月4日初投稿)

投稿 : 2021/04/04
閲覧 : 417
サンキュー:

65

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