R さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ナチュラルなラブストーリー
若干のストーリー言及あり。見ても問題がない程度に抑えているので、見てもらいたい。
個人的恋愛アニメランキング、トップスリーに入った。感極まり、長い長いレビューを書くことにした深夜4時30分
「私にとってそれは…まるで月明かり」
川越の中学校に通う安曇小太郎と、水野茜の恋愛模様を描く、青春学園ラブストーリー。
中学三年のクラス替えから物語は始まる。
全く接点のなかった二人が、徐々に近づき、惹かれあい、物語は進んでいく。
ありがちな、恋仲に向かって進んでいく作品ではなく、恋仲になった二人の様子が主体で描かれていく内容。
監督は岸誠司。
言わずもがな、今なお根強い人気作品、Angel beatsの監督である。まあもうこの時点で既に名作決定です。
挿入歌を入れるタイミングが毎度素晴らしい…
そして作画は俺ガイルのfeel.
豊富な人材、丁寧な作画、最新鋭のCG技術的に定評がある、今最も勢いのある制作会社だ。
脚本は柿原優子。
色づく世界の明日から、昭和元禄落語心中〜助六再び編〜の脚本家である。盛り上がりに持っていく組立が上手く、一番好きな脚本家。
そんな三名が集結したアニメオリジナル作品。駄作になる訳がなかったのだ。
惹かれた点として3点ほど。
まず一つは、丁寧で没入できる作画である点。
プレスコ(音声前撮り)で制作されているので、作画が声、音楽に合わせていくことができる。
色づく世界の明日からや、京アニの作品のような、圧倒的な作画というわけではないのに、所作や表情の一つ一つが作り込まれており、強く没入することができた。
二つ目は、極めてピュアなラブストーリーである点。
当初、舞台が中学校だったので、正直嫌〜な気がしてならなかった。(すぐ払拭された)見終わり、己の早とちりを恥じた。
高校を舞台にした作品は、必ずと言って良いほどエロティックな要素が介入してしまう。
舞台を中学校にし、エロスを排除すると、ここまでナチュラルな空気感が生み出せるのか。
そして中学生なので、今後の進路や…ゴホン、ネタバレダメ絶対。
急展開があったり、衝撃の〜が!的な内容ではないのに、引き込まれていく、それも優しく。ナチュラルなラブストーリー、この感覚は独特だった。
三つ目は、挿入歌として流れる数々の名ラブソングが流れる点。oped、挿入歌、全て神声優東山奈央である。これが本当にマッチしている。
君の名は。でわかる通り、アニメ作品に没入させるため、必要不可欠な要素が音楽である。
合わないBGMであれば冷めてしまうし、過剰なBGMは疲れてしまう。
良い塩梅に、良いBGMを。これがなかなか難しい。この作品は、BGMの使い方が上手いので、尚のこと没入することができた。
おまけで四つ目。タイトルが全て純文学作品のタイトルである点。
小太郎は小説家を目指しており、作中でも度々、太宰の言葉や漱石の言葉が引用される。そしてエンドクレジットで流れるタイトルは全て名純文学作品。
これがまた、その作品と該当回の内容が合っている。純文学嫌悪感がある筆者だが、今は凄くそれらが読みたくなっている。
書いても書いても書ききれないくらい、素晴らしい作品だった。
一貫して伝えたい信念があり、だからこそ音声先取りで、そこに作画を肉付けするという手法をとっている。それは他作品と内容の重さが違うわけだ。
度々川越祭りのお囃子が出てきたり、川越名産品が出てきたり、聖地要素もたっぷり。
何故話題にならなかったのか(なってたのか?)、疑問が浮かぶほど、素晴らしい作品。
今恋をしている人、恋仲がいる人、恋をしたい人、恋に踏み出したい人、恋に恋する人。
自分の中学時代に投影しながら、是非一度は視聴してもらいたい"名作"であった
P.S.
EDで流れるLINEの画面、必ず覚えておくように。伏線である。