フリ-クス さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.5
作画 : 5.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.5
キャラ : 1.0
状態:観終わった
史上稀にみる『映像美の無駄遣い』作品
{netabare}
あくまでも僕にとっては、という但し書き付きなのだけれど、
全話見終わった後の虚脱感がハンパないです。
これって……昭和名作のリメイクじゃないんですよね?
最初は、たぶん誰もが「すげぇ、かっけぇ」と思うはず。
鉄砲と刀と蒸気機関が混在する大正世界の描写も、
ゾンビ(カバネ)のおどろおどろしさも、
ヒロインの一味違ったアクションシーンも、
どれもが「すごい作品が始まった」と期待させるに十分なレベルです。
OP主題歌だって、フルで聴かなきゃすごくかっこいい。
つまりTV尺では全く問題なし。
ヒロインも、この段階ではミステリアスでいい感じ。
唯一、主人公だけは登場段階から
「これ、メガネアムロじゃね? ちょっとヤバくね?」
「一人だけ髪色が違うってキャラデ、世界観としてどうよ?」
と思わせるけれど、最初はギリでお目こぼし可の範囲。
そしてそこから物語が進むにつれて、
全ての映像美を押し流すかのように
昭和的な感性が津波のごとく押し寄せてきます。
まず、主人公のキャラ設定が圧倒的に昭和。
暑苦しくて独りよがりで、浮き沈みが病気みたいに激しい。
で、とりあえず、いちいち叫ぶ。
黙って身体動かすことができんのかおまえは。
言ってることもいちいち痛いし、
勝手にヒロインと妹を重ね合わせて兄貴ぶるところも、
正直、かなり気持ち悪いです。
で、これに相対するヒロインは、ほとんど精神分裂症。
仲間の自害をク-ルに見送ったかと思えば、
カバネになった妊婦を殺したことにオドオド。
自我や自尊心が強いくせに、依存症。
戦闘なれしてるくせに、いきなり意味もなく独断専行。
つまるところ、言動どころか精神性や精神年齢まで不一致なんです。
制作者に言わせてみれば
苛烈な環境で無理やり『大人』になることを強いられた『子供』の
多様性や揺れ動くさまをメリハリつけて描きたかった、
みたいなところなのだろうけれど、
多様性やメリハリと『バラバラ』は違うんじゃないでしょうか?
演じてる千本木さんも、めっちゃやりづらそうだし。
まあ要するに、主人公もヒロインも『ガキ』なわけで、
この作品は苛烈な環境に巻き込まれた『ガキ』が、
懸命にあがきながら生きていこうとする様を描いているわけです。
……てか、それってまんまファ-ストガンダムじゃんっ!
しかも、その『ガキ』の精神性や浮き沈みの描き方が、
ガンダムよろしく昭和感性そのもの。
最新の映像美との違和感、ハンパないです。
人間が『弱さ』や『稚拙さ』『矛盾』を内に秘めているのは、
今も昔も同じことだし、かなり語り尽くされています。
だからこそ、
それを「どうえぐるか」「どう語るか」「どう見せるか」が、
クリエイターの腕の見せどころになってくるわけです。
ものっすごく上から目線の言い方で恐縮ですが、
この作品には、その部分に尽力した形跡を見つけられません。
たぶんこの作品って、昭和に発表していたら、
映像が格段に劣ったとしても、
名作と呼ばれるようになっていたのかなあと思います。
でも、いまはムリ。
少なくとも僕は、ぜんぜんムリ。
とは言え、アニメの楽しみ方は人それぞれだし、
とにかく映像やアクションが素晴らしいので、
そっちをメインに楽しみたい人は、わくわくできると思います。
いわゆる『激振り演出』が嫌いじゃない・むしろ好きな人も、
楽しめるんじゃないかしら。
いまのアニメってどう進化してるの、
なんか「これだっ」というのがあったら教えてよ、
という人には……正直、教えたくないですねえ。
{/netabare}