「ソラとウミのアイダ(TVアニメ動画)」

総合得点
58.5
感想・評価
164
棚に入れた
506
ランキング
6607
★★★☆☆ 2.9 (164)
物語
2.5
作画
3.1
声優
2.8
音楽
3.2
キャラ
2.8

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.9
物語 : 1.0 作画 : 3.5 声優 : 1.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:途中で断念した

よーく考えよう、王道は大事だよ

紛うことなき駄作。SFも漁業も舐めてるとしか思えず、メインキャラクター同士の関係性も最悪だ。
私は作品のレビューには良いところ悪いところ両方入れるように心がけているつもりだが、この作品に良いところなんてあっただろうか。
半クールを観て断念してしまった理由を是非、このレビューで知ってほしい。

【ココがひどい:もうあらすじからしてヤバい】
①理由もなく魚が絶滅している
②魚を食べたいから宇宙に生け簀を作った
③宇宙漁は日本広島県尾道市が主導
④男女雇用機会均等法の強化!
と、ツッコミどころが満載だ。ナレーションで「原因がわからず10年~」とあったので一応何かしら生態調査をした過去も設けてあるようだが、それでも魚の絶滅に理由無しは強引過ぎる舞台設定だ。せめて乱獲とか海洋汚染などの理由は挙げられなかったのだろうか。まあ地球内じゃなくて宇宙に生け簀を作るくらいだからきっと後者だろう。主人公らよく海水浴してたけど……(汗
③はご当地アニメとして、④は美少女アニメとして違和感の出なくなる設定だが別に必要ない。逆に「なぜ尾道で宇宙事業を?」とか「男女雇用機会均等法って聞いたことあるけどどんな法律だっけ?」など余計な疑問を与えかねない。これらこそ理由無しでしれっと尾道市を舞台に女性キャラ中心の物語を描けばいい。

【ココがひどい:ツンと鼻につくポリコレ臭】
上記の④番からして嫌な予感をした人は察しがいい。この作品は「女が漁なんてできやしない」という男たちからのレッテルを剥がそうと奮起する女性を描くポリコレ意識の強い物語である。
ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)というのは本来ネガティブな意味では使わない。性差別や人種差別などあらゆる差別や偏見を無くすために中立・中性的な表現を使いましょう、という素晴らしい考えだ。しかしこれを強く意識して逆にポリコレ精神に反してしまった作品に、侮蔑の意味をこめて“ポリコレ作品”と呼ぶのがコンテンツ業界の現実でもある。
とくに本作は最初っから「女が漁なんて百万年早い」とか「やっぱ女はダメだな」なんてド直球な性差別発言が出てきて男漁師と女候補生の実力差とすり替えてくるので質が悪い。性差別発言を男のキャラクターだけにしか言わせないのならそれはもう真の意味でのポリコレではない。
普通に実力不足や立場を理由に本番の漁に出せないことも言っているのに、鍵谷というキャラクターのせいで典型的な男尊女卑が持ち込まれ、女子たちの「一人前の漁師になる」という目標に「男どもを見返してやる」というフェミニズムがねじこまれている。
然り気無くポリコレを匂わせる程度なら自分は鈍いので気にもしないが、ことあるごとに入る男と女が性差でいがみ合うシーンは正にポリコレの刺激臭と言えるだろう。

【ココもひどい:守護神と神アプリが漁の秘訣だ!】
そもそも本作で扱っている宇宙漁は別に男がやるべき力仕事ではない。
宇宙にある生け簀の独特な環境からか、そこにいる魚は巨大な怪物と化してるものばかりで外から網を投げて捕獲できない。なのでわざわざ生け簀の中に入って戦闘を行いポケモンみたいに弱らせる行程を踏む。そのためにトビウオというメカに搭乗する……ここまでは理解できるだろう。
しかし機内で“神アプリ”とやらを起動して“守護神”を選択するのはどうだろうか。 ジャンル的には『SF』に属するこの作品内で唐突にファンタジー要素が出てくるので混乱した。AIかなにかの比喩かなとも思ったが、どうも本物の八百万神社にアクセスして守護神の力を借りるらしい。
神の力で武装して、必殺技『神撃スプラッシュ』で巨大なカニを渦の中に閉じ込める。これが男漁師曰く「本物の漁」なのだから開いた口が塞がらない。全て題材とするソーシャルゲームから持ってきた設定であることはわかりきってるが、映像化してみた結果はダサいと評するしかない。

【ココもひどい:可能性が見えない主人公・空町春】
一応、こんなに特殊な宇宙漁。知識・経験が無ければマトモな漁は行えない。それはわかるが主人公は序盤からもう少し活躍しなければ主人公なりえないと思う。
尾道に着いたばかりの空町春は宇宙漁の訓練を受けていない。ところが波乃との会話のすれ違いで強引に宇宙漁へ飛び立ってしまう。
この展開なら宇宙漁というものが例え失敗に終わっても、今後に期待できる何らかの才能を見せてくれる筈だと誰もが期待するだろう。
しかし春は漁の真っ最中で「これは何?こんなことできるんだ、すごーい!」と初心な反応を見せるだけで何もしない、完全な見学者気分。選んだ守護神も役立たず。挙げ句の果てにトビウオメカを壊してしまって女子部の監督から大目玉を喰らってしまう。
なんと書けばいいのか、「素人なんだから当たり前だよなぁ」と納得せねばならない使命感を主人公への期待と引き換えに持たされた、ゲンナリな第1話だ。
やらかした本人がそんなに落ち込んでおらず「何イライラしてるんですか?これから仲間になるんですから仲良くやりましょうよ」とヘラヘラしてるのも良くない。このような失敗と自省の無さは今後も度々、描写される。
仲間思いで天真爛漫な性格は主人公らしい人物像だが、失敗の負い目など抱え込むものも見せなければ只の能天気な性格と取れてしまう。

【ココもひどい:ギスギス要員・村上波乃】
そんな春を勘違いとはいえ強引に初宇宙漁のメンバーに引き入れたのが村上波乃だ。しかも女子部の釣果ゼロという大失敗を春1人に責任転嫁しようとする(春はいい意味でも悪い意味でも何もしていない)。ゼロということは自分も1匹すらとれていないということなのに漁に連れてけと直談判までした自信が折れないとはどれだけタカビーなキャラクターだろうか。
反省しないという共通点を持つ二人だが、能天気な春とは対極で波乃は非常に神経質な性格。春との衝突は頻繁に描かれており、加えてルビーや真、舞湖など他の候補生にも噛み付く。ご機嫌取りに皆が“甘くない”パンケーキを探すエピソードがあるなど、かなりめんどくさい女子だ。
この娘が何でもないこと(話題に東京を持ち出す、刺身が苦手etc.)にすら突っかかって声を荒げるので漁に出ない日常としての空気もかなり悪い。春の能天気さも問題が多いが、そんな彼女がムードメーカーとして役に立ちそうな所でも波乃の一声で台無しになってしまうので鬱陶しいことこの上ない。いなければいいのに、とすら思う。

【他キャラ評】
薪真紀子
あだ名はマキマキ。女子候補生の最年長で春と波乃のケンカなど収拾がつかないものに「まあまあ」と諌める役割を担う…… {netabare}ように見えたが、春が訓練プールの使用条件を安請け合いしたときは皆と一緒に責めていた。仕事してくれ頼む {/netabare}

ルビー・安曇(あずみ)
メイン回では日本という郷に従えない身勝手さがフィーチャーされていたが、波乃の性格の悪さに比べたら可愛いもので、この娘だけはメインキャラクターの中で唯一、好感が持てていた。初出がアレだが……笑
{netabare}訓練用のマグロ2匹を捕って女子部の面目を保った救世主である筈が、どうやら選んだ守護神が良かっただけらしく、その後の訓練で描写もなく波乃にボコボコにされていた……扱いが雑い {/netabare}
美剣真
この作品からポリコレ臭が漂うのは女性ではこのキャラの所為。フェミニスト鍵谷と言い争えば出る言葉は「古い考え」だの「女だって宇宙漁師になれる」だのばかり。そう言った性差別で言い争うシーン自体が好まれていないことがまるでわかってない証拠だ。
{netabare}「女だって男の仕事ができる」という考えが先行して、絶対継ぐつもりだった実家の刀鍛冶を継げないとわかれば即将来の夢を宇宙漁師に切り替えている。その気概が同じポリコレ精神を持つ仲間たちから称賛を受けるが、素人の私たちからすれば「家から出て新しく刀鍛冶始めればいいんでない?」と思ってしまう。
水への恐怖を乗り越える1話にするよりかは宇宙漁師の誇りを持って不純な動機を正す1話にした方が彼女の魅力がより増した筈だ。 {/netabare}

櫻舞湖
ハッキリ書いて、自分の観た範囲ではいる意味がわからないキャラクターだ。能力に劣る前にそもそもやる気があるのか疑わしい。
{netabare}勿論、幼少の出来事で素肌を晒すことにトラウマがあることには同情したが、それで大部分の訓練を見学で押し通すのはマトモではないし「スク水がダメならウエットスーツを着ればいいじゃない」で1分かからず解決してしまった些細な問題だ。中盤まで引き延ばす悩みではない、只のサボりの口実にしか思えなかった。 {/netabare}
6話でズバリ自分の存在の是非について悩む主役回が宛がわれている。眼鏡キャラらしく「体力に劣る分は知識でカバーする」という答えで解決となるが、頭の良さが発揮された部分も前半無かったのではないかな……。訓練マグロで春・波乃・マキマキを推薦した件も、泳げない真と彼女自身を除くだけで同じ回答が素人の視聴者にも出せるし
{netabare}大体、兄貴が宇宙漁の事故で文字通り“帰らぬ人”となってるのなら、その妹が宇宙漁師候補生に選ばれるのだろうか。実際そうなって女子部にいるキャラだから書いても仕方がないのだが、ぶっちゃけキャラ設定からしてガバガバだしメインキャラは6人より5人の方がスッキリする。 {/netabare}
もしかしたら後半に重要な活躍をするのかもしれないが、だったらルビーより遅く中盤に合流するようなシナリオでも良かったんじゃないかな、と思う。

【総評:よーく考えよう、王道は大事だよ】
ただただ『意外性を出したい』だけで話を作り、細かな調整は放棄した強引な作品だ。確かに数多のアニメ作品を観た人が予想しやすい前振りから、今まで観たことのないようなオチがつくのには驚いたが、それは「思いついてもやらねーよ」という呆れも込みで、だ。
{netabare}第3話でそれが顕著に現れているだろう。チームワークを培って無理難題をクリアするのが王道展開だが、それが嫌でルビー安曇という新キャラで無双・解決してしまっている。それが斬新で面白いと思った製作陣なのだろう。だが結果、宇宙漁で大事なものが『努力とチームワーク』ではなく『才能や守護神の力』と受け取らずを得ないメッセージに変質してしまっている。ギャグ漫画の「ボボボーボ・ボーボボ」で主人公が拝金主義の四天王を倒したときに「大事な物は金だーーー!!」と言ってしまったのに似ている。確かにソラウミもこの辺りからギャグとして見た方が色々と考えなくて良かったのかも知れないが、お仕事青春アニメとして見たらかなり致命的なオチだ。 {/netabare}
ストーリーがガバガバなだけならいざしらず、 キャラクターの行動や言動の数々は不快のまま6話時点では挽回の兆しがない。もしかしたら7話以降に春と波乃が和解して仲良しになったり、春がフラグだった天日鷲命の力を借りて主人公らしい活躍をしているのかも知れないが、それはそれで“溜めすぎ”という奴だ。3話切りという風潮もある中、和解や成長を後半クールに集中させて、その間は全キャラの軋轢や無能感で視聴者にストレス負荷をかけてくるような構成は愚策としか言えない。ちょっとやそっとの日常描写で中和しているつもりか見どころを作っている気になってるのだとしたら、某水軍の末裔のお嬢様のせいでその目論見は頓挫している。
作画だけはまあまあ良かったと思う。舞台や題材上、美少女キャラの水着やパイロットスーツ等が多く拝めて眼福だったと言えなくもない。ただ、本当にそれだけだ。見所あるシーンは皆無だし、肝心の声優は無名の下手くそばかり。特にマキマキ役の棒読みと熊本弁の併せ業は聞くだけで吹き出すほど。面白いと言えば面白いがそれを作品の+評価には出来ないだろう。
「宇宙漁」という設定自体は有りそうでなかった斬新な素材で面白い。だが宇宙漁が存在する理由付けや世界観設定の甘さに加えてポリコレ要素や守護神等も混ざって目を瞑れない程のちぐはぐ感が出てしまっている。さらに演技力の低い声優と外しまくったストーリー展開……ここまで負の要素が煮つまった作品も中々ないだろう。
地上波で4話切り、アニコレを切欠に6話まで観たものの、これ以降の話を観る気にはなれない。
良い子の諸君!よく頭のおかしいライターやクリエイター気取りのバカが「誰もやらなかった事に挑戦する」とほざくが、大抵それは『先人が思いついたけどあえてやらなかったこと』だ。王道が何故面白いか理解できない人間に面白い話は作れないぞ!

投稿 : 2021/11/20
閲覧 : 575
サンキュー:

9

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