ウェスタンガール さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
絆とナチズム
3.11以降、“絆”と言う言葉が氾濫した。
誰もが、自由と孤独がワンセットであること、家族、地域社会とのつながり、その“たいせつさ”に気付いたのである。
しかし、口を開けば“きずな”、チャンネルをひねれば“絆”の文字が、あるいは街中に溢れ、サブリミナル効果のごとく意識下に組み込まれ、次の瞬間には、社会を緊縛し、引き回してゆくトリガーとなるのではないか、といった被害妄想に捕らわれた覚えがある。
絆(きずな、きづな)
本来は、犬・馬・鷹などの家畜を、通りがかりの立木につないでおくための綱。しがらみ、呪縛、束縛の意味。
等と考えていたら、すでにドイツの社会心理学者のフロムが、ナチズムの台頭の中で次のように分析しているのである。
中世社会が市民革命と産業革命をへて、教会や階級といった権威的な絆から解放され、自由を得た代償に“安心”を失い孤立化したという。
そんな人々の不安を見事にキャッチし、自らが“神”となって権威に縛り付ける“新たな”絆を作り上げたのがナチズムであるとした。
人間関係の煩わしさ、それでも、家族であり、友人関係であると言った“しがらみ”に守られている自分と言う存在を問い続ける脚本家、岡田磨理らしい作品であることは間違いない。
テンプレなキャラたちに託されたメッセージ。
未成熟で偏りがあるからこそである。
感じ取ろうとするからこそである。
“絆”などに縛られるな!
我々は、“世の中”と言う“柵(しがらみ)”の中で生きているのだから。
身も蓋もない?
良いではないか。