レオン博士 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
愛のカタチを探しに
日本アニメ史に残る最高のアニメの一つ。
これほど素晴らしい最高の傑作を世に送り出してくれた京アニ、ありがとう。
シナリオ、神作画、声優の演技、魅力的なキャラクター
そして心の揺れ動きを美しく彩る絶妙な音楽、すべてをフル動員して全力で視聴者を泣かしにくる。
日本アニメ業界の至宝である京アニが全身全霊を込めて心に訴えかけてくる。
「これが心だ」「これが愛だ」って。
ヴァイオレットの表情の移り変わり、その描写のあり得ないくらいの緻密さ。
あれだけ無表情だったヴァイオレットに心が宿った瞬間を、絵と音で完璧に表現しきったその表現力の高さ。
作品に命を吹き込むというのはこういうことを言うのかな。
「愛」を表現するということについてこの作品はアニメの一つの到達点に達した。
表現力の高さだけを見て最高って言ってるわけじゃなくてそこに至る過程がまた美しく、繊細でした。
ネタバレあり感想は以下に。
{netabare}
人の感情を持たず殺戮兵器として生きてきた人形が少佐と出会い、まず名前をもらいます。
その瞬間、兵器から人間としての生を与えられました。
でも、この子の心は空っぽでした。
少佐はそんな生まれたばかりの子どもに「愛してる」と告げ、最後に「生きろ」と言いました。
その言葉の意味を知るために仕事をこなすけど、最初は人の気持ちがわからないのでうまくいきません。
でも9話までで彼女に少しずつ心が宿っていくのを丁寧に見せて来て
空っぽだった傷だらけの器に少しずつ注がれてきた気持ち、それらが満たされた瞬間。それが第10話でした。
殺りく兵器として生まれ無機質な人形だったヴァイオレットが愛と出会い、
その傷ついて壊れそうな心に愛が満ちる瞬間を、
その一秒一刹那をも逃すまいとすごい作画で鮮明に心の変化を描いていて、
ヴァイオレットの瞳に「愛」が宿った瞬間、
まるで私の心とヴァイオレットの心が重なったかのように自然と私の心にも感情が溢れてくる。
それは、人形が女の子に生まれ変わった瞬間でした。
それまでヴァイオレットを物語の登場人物としか見ていなかったけれど
この瞬間からヴァイオレットの気持ちに重なって感情移入するようになりました。
彼女が傷つけば自然と心が痛み、彼女が悲しくなれば自然と彼女と一緒に泣いた。
でも感情を理解し、人の心を理解していくということは、
かつて自分がたくさんの人々の命を奪ってきたことの意味を理解して苦しむことになります。
そう、自分が殺してきた人々にも、手紙が届くのを待っている人、愛する人がいるのだと。
命の重み、それを奪うということの意味。
その重さに押しつぶされて彼女の心は悲鳴を上げていました。
こんなことなら心なんてなければよかった? 愛の意味なんて知らなきゃ良かった?
心を持たない人形のままだったら、傷つかなくて済んだのに。
そこに、ヴァイオレット自身を気遣う同僚達から手紙をもらって、
「自分が戦場でしてきたことは消えない、でも自動式手記人形として生きた自分も消えない」
ってホッジンズから教えられて、彼女は前に進むことを決意した。
そして「愛しているの意味が少しわかる」って少佐に手紙を書く。
生まれて初めて書く手紙。決して届かない手紙。
届かない手紙を書くということ、彼女の器に確かに愛が満ち溢れた証だと思う。
この作品を見ると、家族や恋人や友達や周りの人達を大事にしよう、もっと優しい人になろうかなって思う。
素敵な少女に成長したヴァイオレットを見て、ちょっとだけ私の心も成長したような気がします。
{/netabare}
大事な人に届ける一通の手紙。
それは広い世界に2つとない、ただ一つの愛の形。