まつはや さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
問1.「鎧塚みぞれ」と「傘木希美」の気持ちを記述しなさい。(配点 50)
Amazonprimeで視聴。
本作は鎧塚みぞれと傘木希美、二人の関係性を描くことに終始しています。
大会へ向けて切磋琢磨するわけでも、大きな事件が起きるわけでもありません。ただひたすらに二人の心の変化を追うだけの作品です。
にも関わらず背景美術や声優の演技、様々な意味を示唆する演出が積み重なり心を動かされるという、稀有な作品なのです。
本作は視聴にあたり画面に提示された情報を噛み砕くという作業が必須となります。正直一度目は話の流れを追うので精一杯でした。
一つ一つの演出にこれはどう言う意味なのだ?!と思案する様は国語のテストを解いている感覚に通じるものがあります。
しかし全体的な話の流れを理解してから再度視聴すると、一度目では気付くことができなかった演出の妙や細かな部分を理解することができるのです。
個人的には二度目以降の視聴でで本作の評価が大幅に上がりました。噛めば噛むほど味が出るスルメのような作品なのです。
のぞみが出会った時のことを覚えてないと言った後に回想が流れ、嘘を付いていたのだと分かるシーンは個人的な白眉でした。のぞみはなぜ嘘をついたのでしょうか?様々な解釈があることと思いますが、リズであるのぞみは青い鳥であるみぞれが羽ばたけるよう自ら手を離したのだということは確かだと思いたい。
みぞれがのぞみに向ける気持ちに意識がいきがちですが、のぞみもみぞれに愛情を抱いていたということでしょう。
最後のぞみは図書室で、みぞれは音楽室で真逆の方向へ曲がり別々の進路を歩み始めます。
コンクールの結果は?二人は結局別々の大学に進むのか?その結末は描かれていません。
初見時は若干ぶつ切りに思えたラストですが、物語の結末が視聴者に委ねられるということはある意味救いでもあります。
もしかしたら、のぞみは結局音大を受けるかもしれない。みぞれに、みぞれのオーボエ、ではなくみぞれが好きだよと返すかもしれない。
そんなハッピーエンドを想像できる余白が残されているのです。
やはり物語はハッピーエンドがいいよなと、音大のキャンパスで並び歩く二人の姿を思い描きながら、エンドロールを眺めていたのでした。