「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.8
感想・評価
700
棚に入れた
3106
ランキング
350
★★★★★ 4.2 (700)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

この悶える苦しさは、明日も続くのか

こうの史代さんのマンガを原作にした劇場版アニメ。
昭和18年12月、広島市から呉に嫁いだ「北條すず(旧姓:浦野)」が主役です。
日付からピンときた方はご明察の通り、太平洋戦争末期、原爆投下直前の広島が舞台です。
原爆投下直前の広島が舞台というと、終戦記念日に見せられる、人がドロドロ溶ける安物のホラー映画みたいなアレを思い浮かべる諸氏もいると思いますが、そういう描写はほとんどなく、日本の広島県の呉の、のどかなあるお家で、世界の情勢に揺れ動かされながらただ過ごしていた、ありふれた一家の物語となっています。

「浦野すず」は、ぼんやりしたところがあるが絵が達者で想像力が豊かな少女でした。
戦争が日々激化する中、家族と日常を過ごしてきたすずでしたが、18歳になったある日、呉から縁談の話が来ます。
流されるまま見知らぬ青年「北條周作」と祝言をあげたすずは、北條に入って、呉で新しい生活を始める、という展開です。
すず役の声優は役者ののんさんです。
本職の声優ではないですが声に違和感はなく、とてもあっていたと思います。
また、すず役以外は基本的に声優が演じていて、話題集め目的で徒に芸能人を起用しなかったのも個人的には良かったと思いました。

時代考証がしっかりしていて、その頃の人々の暮らしや想いが、のんびりとしたすずの行動を通して伝わってきます。
以前は普通に買うことができたチョコレートやキャラメルが、贅沢品として入手困難になり、兄も夫も戦争に取られ、配給も乏しくなり生活が困窮していく中で夜中も空襲警報に起こされ、爆弾に怯えながらもなんとか耐えて生きていこうとする人々の力を感じました。
ただ、語られるのは悲しみの連続で、すずは 「こまったのう」 なんてのんきなことを言っているのですが、本当に悲惨だということが感じられました。
描かれているのは、大本営や作戦行動中の兵隊ではない、非戦闘員からみた戦争の姿です。
正直、思想的なものは感じますが、本作で描かれた人間の姿も多くの人を巻き込んだ戦争の物語の一つとして起こりうる内容と思いました。

呉というと、もちろん鎮守府なわけで、そういうわけで戦艦もたくさん出てきます。
周作の姉の娘が戦艦好きという設定で、帰還した艦隊の名前を教えてくれる場面があり、そのあたりは、少年心くすぐられました。
戦争は悲惨だけど、軍艦がかっこいいのは別問題ですね。
特に呉で整備を受け、呉に編入した、重巡洋艦・青葉のシーンが多く、印象的です。
鎮守府内部については描かれませんが、歴史戦争アニメとして見てもおもしろいと思います。

素晴らしい作品でした。
実は、2回観ましたが、不思議と2回めの方が泣けました。
展開を知っていて、また回避できないことも知っているからなのかもしれないです。
同じように、爆弾が落とされる前の、明日を信じて疑わない人々の生活を見せられても、悲しむことしかできないのだろうなと思います。
今を生きる我々は、過去に学び未来を考えないといけないのだろうなと、そういう気持ちにさせてくれる作品でした。

投稿 : 2021/03/07
閲覧 : 233
サンキュー:

17

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