かがみ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「差異」の肯定
一大社会現象を巻き起こした前作は、その第1期においてはいわゆるゼロ年代的想像力の到達点としての「つながり」の可能性と限界性を描き出し、続く第2期においてはゼロ年代的「つながり」に回収されない2010年代的「個」の確立を描き出した。こうした前作の中で胚胎した想像力は、本作において「輝き」という概念により深化される事になる。
本作の主人公、高海千歌は今や伝説のスクールアイドルとなったμ'sの「輝き」に漠然と憧れて、普通の日常に埋没する「普通怪獣」としての自身から脱却すべくスクールアイドルを目指し「Aqours」を結成。そして千歌は「廃校」というまさしくμ's的な危機に好機到来とばかりに嬉々として飛び込んでいく。
しかし、東京でのスクールアイドルイベントや入学説明会参加希望者数において突きつけられたのは「ゼロ」という数字であった。こうした試練を経て千歌は「輝き」の本質とは「ゼロを1にする」ということに気づく。そして、音の木坂学院を訪れた千歌はμ'sは後の世代に何も残していかなかった事を知り「輝き」の源泉とはμ'sの見た景色に囚われることのない「自分だけの景色」にあることに気づく。
こうした千歌と好対照を成しているのが、Aqoursの中でも一際強烈な言動で異彩を放つ厨二病少女、津島善子である。善子は幼い頃からの劣等コンプレックスを拗らせて自分を「神が嫉妬した特別な存在」と思い込み「堕天使」を名乗る。高校でも周囲と上手くいかず「堕天使」との決別しようとする善子だったが、千歌たちから「堕天使を好きなら隠さず表現していい」と諭され、Aqoursに加入。その後は堕天使ヨハネを隠さず肯定していく。
こうしてみると本作が強調するのは「差異」の肯定と言える。0を1にする新たなる価値創造の源泉には人それぞれが皆持っているその人だけの「差異」の運動があるということである。こうした意味で本作はラブライブという「みんなで叶える物語」を「つながり」のオルタナティヴとしての「輝き=差異の物語」として明確に定義した作品と言える。