STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
SFとしてはともかく、歴史劇としての面白さ
以下は「銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅」に書いたレビューを土台に加筆修正したものに
なっています。
原作は既読。
一時は原作に相当はまったクチで、過去作のOVAや劇場公開作品も視聴済み。
そのためにどうしても過去作との比較という観点で観てしまった部分はある。
キャラクターデザインに関して、ネット上では過去作の方が良かったという意見をよく目に
したが、個人的にはそれはそれ、これはこれという感じ。
デザインだけでなく、性格を始めとする人物像の捉え方も若干の差異が感じられたが、新旧
スタッフの解釈の違いがむしろ面白かった。
メカデザインに関しては本作の方が好きかなあ。加えて艦隊戦の作画などは技術の進歩か、
本作の方が迫力を感じた。ただ会戦そのものの戦術的描写は判りづらくなっていたような。
ストーリーに関しては基本的に原作準拠といった感じだったけど、全体的に説明不足な感じが
した。
最初は話数が少ないためかなと思ったが、話数に対してのストーリーの進行位置はOVAと
そう大差なく、原作からの取捨選択があまり良くなかったのかなと。
この説明不足感のもう一つの要因はナレーションが減ったことも大きいように思えた。
OVAでのそれは状況説明にかなり役立っていた感があったので。
ジャンル的には宇宙SF、あるいはスペースオペラなんだろうけど、本質的にやりたいのは
歴史劇、政治劇で、宇宙うんぬんはそのための舞台装置といった感じ。他の田中 芳樹氏のSF、
ファンタジーもそんな印象だけど。
正直SFとしてはツッコミどころ多々なのだが、その辺はご愛敬といったところ。
昔はラインハルト・フォン・ローエングラムやヤン・ウェンリーの優秀さに素直に
惹かれたが、歳をとって擦れてしまったのか、本作視聴時はラインハルトやヤンの優秀さを描くために、彼ら対峙するキャラがお馬鹿になっているのが結構、気になってしまった。
あるキャラを持ち上げるために敵役などを下げるやり方は他作品でも大なり小なり見られるものだが、ラノベや少年漫画原作作品に多いヒーロー譚や勧善懲悪時代劇なんかだとそれほど気にならなくても、本作のような架空史記・戦記的内容の群像劇などで多用されると、「ちょっと」という感じ。
そのせいかラインハルトにしろ、ヤンにしろ、むしろウィークポイントのような部分が生々しさが感じられて好きだったりする。
ラインハルトの場合は姉のアンネローゼやジークフリード・キルヒアイスといった親しい者に対する情の深さがそれで、彼らに関することになるといわゆるキレものではなく、年相応の若者だなという感じ。
一方のヤンはまず本人が軍人としての出世欲がないことw。
そして、民主主義の信奉者であるため、あくまで政軍分離の姿勢を崩そうとしない点など。
政治的信条としてはともかく、純粋な軍事行動だけを見ると、自由惑星同盟の政治的事情が相当足枷になっている感じ。
あとヤン自身の権力欲とは別に、イゼルローン要塞攻略後の政局予想(講和路線)などを見るに、政治的部分の見方が弱いのかなという感が。
逆に若い頃は単に嫌なやつと印象だったのに、本作の視聴でその生き方や行動が興味深かったのが、銀河帝国側だとパウル・フォン・オーベルシュタイン、自由惑星同盟側だとヨブ・トリューニヒト。
オーベルシュタインに関してはゴールデンバウム王朝憎しというごく私的な理由が行動の原点でありながら、権力、地位、名誉、財力といったものに欲を持たない無私な行動が面白いところ。
一方のトリューニヒトは主戦論者でありながら、状況に応じて反対側に回るなど、政治家としての本分の能力はともかく、その「機を見るに敏」な部分が興味深い。
本作のハイライトはやはりキルヒアイスの死かなあ。
原作小説の人気絶頂時はその死を悼む声が多かったのが思い出される。
そういったキャラ人気とは別にメタ的な役回りとしてもちょっと勿体無い印象。
本作より先の部分なので明確には書かないが、終盤のある主要キャラの役回りなどは個人的には取ってつけた感があったが、あれをキルヒアイスがやっていたら、結構インパクトがあったんじゃないかと思ったり。実際、キルヒアイスの死を前にラインハルトと意見の相違が現れていたし。
2021/02/23